1月28日に亡くなった経済アナリストの森永卓郎さん(享年67)。2023年11月にすい臓がんのステージIVと診断(その後、原発不明がんと診断)され、「余命4か月」を告げられてからも亡くなる直前まで執筆活動や番組出演をはじめ数多くの仕事をこなしてきた。週刊ポスト1月27日発売号では、森永さんの独占手記を6ページにわたって掲載している。父の資産整理で苦労した経験がある森永さん自身がどう資産を整理していたのかについて、以下のように明かしてくれていた。
「一刻も早く資産整理をしなければならない」
闘病は一進一退だが、その均衡は崩れつつある。1月10日に血液検査を受けると、正常値の上限が36ほどの腫瘍マーカー「CA19-9」の数値が4100を超えて、担当医から「本格的に転移が始まった可能性が高い」と告げられた。
その数日後、無理して駅の階段を走ったことが祟ったのか、体調が急変した。お腹や背中の中心部周辺に激痛が走り、CT検査を受けると腹部に播種という、がんの飛び火のようなものが広がっていた。あまりの激痛に眠ることもできなかったが、今は医療用麻薬で何とか痛みを抑えている状態だ。
2023年11月に糖尿病の主治医から人間ドックを勧められ、受診するとステージIVのすい臓がんと診断され「このままだと来年の桜は見られない」と告げられた。抗がん剤治療を始めたが体に合わず、2023年の年末には死の淵を彷徨い三途の川がくっきりと見えた。
すぐに治療法を変えたことが功を奏して一命を取り留めたが、私の頭に浮かんだのは「一刻も早く資産整理をしなければならない」ということだった。2011年に父を亡くした際、あちこちに散らばった銀行口座や証券口座の特定に手間取り、相続税の申告期限である10か月にわたって地獄のような苦しみを体験したため、資産整理の重要性が身に染みていたのだ。
父の資産整理を終えるとすぐ、自分の預金口座と証券口座のリストを作り、パソコンに保存した。そして、がんが発覚してからは預金口座を一本化した。ただし昔と違って現在の銀行は多額の預金を下ろそうとすると事前の予約が求められ、予約を取れるのは1~2週間先ということがある。
しかも預金を下ろすには通帳と印鑑、キャッシュカードの3点セットが欠かせない。預金先の銀行が10行ほど、印鑑も10本以上あったが、どの通帳にどの印鑑を使ったかわからなくなり、窓口で確認するのに膨大な手間と時間を要した。どうしてもわからなければ、銀行に通帳の再発行や印鑑の改印を依頼することになる。これも最長で3週間ほどの無用な時間がかかる。
生前に資産整理する際、リストには金融機関名と資産内容だけでなく、通帳の保管場所、口座開設に使った印鑑や暗証番号などをセットで記入することが大切だと実感した。また、通帳の一本化には想像以上の時間がかかることを覚悟し、できるだけ早い段階から動き始めることをお勧めしたい。
■【独占手記・全文公開】森永卓郎氏、がんステージIV「余命4か月」宣告でも精力的に生きられる秘訣 お金、健康、人間関係の整理…常識に囚われない心得を明かす
※週刊ポスト2025年2月7日号