オリコンが定期的に実施している「顧客満足度ランキング」。このうち、ハウスメーカーの注文住宅を対象にしたもので、11年連続の総合1位を獲得しているのが「スウェーデンハウス」だ。本稿では、なぜスウェーデンハウスの顧客満足度が高いのかを考察していきたい。
●全ての調査項目で1位の圧倒的評価
直近の2025年ランキングでは、サービスを実際に利用した1万7567人が対象。スウェーデンハウスは、建築構造や基本性能のほか、住居部分の機密性、耐震性、免震性など、住居性能で高い満足度を得ている。
スウェーデンハウスの総合得点は81.0点。2位は住友林業とヘーベルハウスでともに78.7点。スウェーデンハウスが唯一80点台をマークしている。また、全ての調査項目で1位を獲得。圧倒的な結果となった。
なぜ、スウェーデンハウスは高評価を頻発できるのだろうか。次のような理由が考えられる。
(1)断熱性が高いこと
(2)防音性も高いこと
(3)高い耐久性
(4)担当者の対応の良さ
●「100年住み継げる家」を標ぼう、さまざまな機能性が
スウェーデンハウスは1984年に北海道で設立。創業者は、住宅や運輸などを事業とするトーモクの手取貞夫会長(当時)だった。
初年度から業績がよく、翌年に関東へ進出する。建物を長持ちさせて快適な住み心地も維持し「世代を越えて住み継ぐ家」「100年住み継ぐ高気密・高断熱、家族を守る強い家」「引き渡しから始まるオーナーとの長い付き合い」などをブランドコンセプトに掲げている。
同社の担当者によると、得意なエリアは北海道と関東だという。北海道では、寒冷地に強い仕様のため人気がある。関東は富裕層が多く、建築需要も多いためだ。
他社との差別化として意識していることについては、「『スウェーデン』という会社名の通り、北欧を意識している。北欧は明るい夏と暗い冬が特徴で、昼くらいまで暗く、夕方には日没してしまうような場所だ。住まいに関する感度が高いため、暖かい家の中で健康的なだけでなく、精神的にも豊かに過ごしたいと考える人が多い。このような考え方に基づき、断熱性や気密性などを訴求している」と回答した。
断熱性が高いのは、同社が採用している木製サッシの3層ガラス窓が大きく貢献していると考えられる。外気の影響を大きく受ける窓の性能によって、室内の気温や快適性などは大きく変わる。スウェーデンハウスによれば、高断熱で気密性も高い家であれば、体感温度が安定するという。体感温度と室温の差が少なくなり、快適性が向上するわけだ。継ぎ目にも断熱材を挟み、隙間をなくすことによって気密性を高めている。
スウェーデンハウスは室内の空気にも気を配っている。独自に導入している24時間熱交換型換気システムでは、住居に設置した給気口から空気を取り込み、別に設置している換気システムで汚れた空気を取り込んでいる。近頃問題になっているPM2.5にも対応しており、換気システムにフィルターを装備。微粒子を室内に入れない工夫も面白い。
2024年1月に発生した能登半島地震や、発生の可能性が高まっている南海トラフ巨大地震など、地震大国に当たるわが国では、住宅に耐震性を求めるオーナーも多いはずだ。この点、スウェーデンハウスは耐震性にも優れている。震度6以上の揺れを実物の家で揺らす実験をしたが、補修をする必要がなく構造上の損傷を受けることもなかったという。
その理由には、構造の工夫がある。一般的な住宅と比べて構造そのものが堅く、揺れない構造となっている。具体的には、木でできた壁を一体化させて、地震からの衝撃を壁単位で受け止めるとともに分散させている。揺れが少なければ地震で受ける損傷が少なくなることから、補修の手間もあまりかからない。オーナーにとってはさらなる負担がかからない、というわけだ。
オリコンランキングの口コミでも、断熱性や快適性の高さなどに関して好意的なコメントがあった。オーナーからの税金やライフプランなどに関する相談、50年間にわたって家の定期検診を無料で受けることができるシステムを用意している点も評価が高い。
このように、同社がブランドコンセプトで掲げていることが利用者にそのまま届いていることが、顧客満足度の高い大きな要因だろう。
●売り上げは大幅減、今後が課題
筆者は北海道生まれ、在住だが、スウェーデンハウスという名前は小さいころからよく聞いていた覚えがある。本稿でも触れてきた通り、断熱性が高い印象で、2008年に破産した旧「木の城たいせつ」と双璧をなすイメージであった。札幌近郊にある当別町には、スウェーデンハウスが立ち並ぶ「スウェーデンヒルズ」なるものがあり、スタッフも常駐している。
正社員のスタッフだけでなく、除雪などをする期間従業員もいる。創業時点では別の開発会社を設立してヒルズを運営していた。現在は、トーモクの関連会社としてスウェーデンハウスが開発会社を運営している。ヒルズの住民は50代後半が多いが、同社の担当者は「子育て世帯からリタイアした世代まで幅広く住んでいる。年収は中流階級から上位層が多い」と説明する。筆者も一度見に行ったことがあるが、異様な場所だったことをよく覚えている。
スウェーデンハウスは前述したトーモクの連結子会社である。トーモクの2024年3月期決算説明資料によると、住宅事業の売上高は540億円。前年同期の626億円と比べ、86億円減少している。これからもさらに少子高齢化が進むと考えると、今後の売上高がどのようになるのかは不透明になってくるはず。
建設資材の高騰で再開発や建物の規模を縮小する事例も相次いでおり、影響が住宅メーカーに及ぶ可能性もある。今後、スウェーデンハウスはどのように事業を続けていくのだろうか。
小林英介
1996年北海道滝川市生まれ、札幌市在住。ライター・記者。北海道を中心として、社会問題や企業・団体等の不祥事、交通問題、ビジネスなどについて取材。阪神タイガースをこよなく愛しており、体は酒でできている。「酒はライフラインだ」を合言葉に、道内や東京などで居酒屋めぐりをするのがライフワーク。