“統一教会”会見で違法性否定 「信者の献金は宗教行為」 解散命令請求に「非常に残念」
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【ミヤネ屋Pが全部聞く】異議あり!解散命令請求後初の“統一教会”会見を鈴木エイト氏が最速分析!『海外宣教援助費』とは?出席者選定のウラ側は?主導したのは誰?教団の今後は…
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【鈴木エイト×紀藤正樹】「韓国では分裂状態」解散命令請求で追い詰められた旧統一教会、懸念される信者の先鋭化
10月13日、解散命令請求を受けた旧統一教会(世界平和統一家庭連合)。その存続の瀬戸際で、最前線で追及してきた人物への訴訟を乱発している。当事者であるジャーナリストの鈴木エイト氏と弁護士の紀藤正樹氏が緊急対談した。【前後編の前編。後編を読む】
* * * エイト:いよいよ統一教会に対する解散命令請求が出されることになりました。文化庁が教団に対して初めて質問権を行使したのが昨年11月で、それから7回もやるとは思わなかった。
しかし、文化庁は非常に慎重に不法行為の証拠を集めていました。決して引き延ばしていたわけではなく、最短でこのタイミングになったのかなと。
紀藤:私は当初から「早く出せばいいのに」と考えていましたが、質問と回答を繰り返したことで、解散命令請求の裁判前にほとんどすべての論点、お互いの言い分が出揃った。結果的に解散命令の決定は早まると思います。
エイト:論点の整理ができていますからね。
紀藤:私は1990年代終わりから文化庁に通い、「オウム真理教に出せるなら、統一教会にも出せるでしょ」と言い続けてきたので、感慨深いですね。ただ、今日に至るまでには“空白の30年”があった。その間に育った二世の子供たちの悲劇を考えると、国や政府、社会には責任があるし、文化庁は反省すべきと思います。
エイト:さて、解散命令請求を目前にして、教団側は“訴訟戦術”に出てきました。紀藤さんは昨年、いち早く教団から訴えられています(注:2022年9月29日、テレビ番組内での発言で名誉を傷つけられたとして、旧統一教会は紀藤氏と他2人の弁護士、テレビ局2社に、損害賠償などを求める訴訟を起こした。教団は同年10月にも、ラジオ番組内での発言について、紀藤氏を名誉毀損で訴えている)が、今年8月には北九州市が教団から訴えられ、紀藤さんも含めた全国弁連の弁護士7人も関連団体である世界平和女性連合から訴訟を起こされた。
そして10月4日、私も初めて信者と関連団体の天宙平和連合(UPF)に、過去のツイート内容などについて名誉毀損で訴えられました(注:2023年10月4日、UPFと旧統一教会の信者らは鈴木氏に、損害賠償などを求める訴訟を起こした。UPFは鈴木氏が今年7月1日、X(旧Twitter)に投稿した安倍晋三元首相のビデオ出演に関する発言により、名誉を傷つけられたとしている)。担当弁護士は会見で「急いだ」というニュアンスのことを言っていた。解散命令請求を前に、なりふり構わず圧力をかけにきたようにみえます。
紀藤:エイトさんも「名誉毀損」ですよね? ここで指摘したいのは、今回の解散命令請求の争点でもあるのですが、霊感商法や家族による多額献金被害など“本筋”に関する内容について訴えられたのではない。僕の場合もそうですが、この訴訟は相手を黙らせるためのスラップ(恫喝)なんです。
エイト:実際、紀藤さんも訴訟を起こされて以降、メディアへの登場が減っています。本筋ではない“悪あがき”だとしても、訴訟中だとメディアとしては片方だけ呼んで言い分を聞くわけにはいかなくなる。「面倒臭い団体だ」とメディアに認識させ、解散命令請求について報道させないようにすることが狙いではないでしょうか。
紀藤:そう思います。エイトさんのような情報発信元を訴えることで、社会に情報が流れにくくなる。教団はそれをわかっているのでしょう。
韓国では分裂状態
エイト:教団は近年、追い詰められているというのが現状です。コロナ禍で日本の信者が渡韓できないなかで昨年の安倍元首相銃撃事件が起きたので、お金が集まらない状況が続いた。さらに韓国では今、教団が分裂状態にあります。
教祖・文鮮明の妻で現総裁の「韓鶴子派」は、「三男派」と汝矣島にあるY22という巨大ビルの地上権を争っていましたが、2014年に韓鶴子派が裁判で負けています。1000億円規模の賠償義務が発生し、加えてアメリカにある教団の資産管理団体をめぐる裁判でも三男派に負け、優良な不動産を売り払っている。金欠状態なのに日本からの送金が減り、そこへ解散命令請求が出ようとしていますからね。
紀藤:実際に解散命令が出ると信仰が地下化するといわれていますが、私はかつてオウム真理教が「アレフ」と「上祐(史浩)派」などに分かれたように、分派が進むのではないかと考えています。解散命令が出るのは教団に対してで、そうなるとお金を中央に貯めずに各地域にあるブロックに分散させ、ブロックごとに新たに団体を作れという指示が出るのではないか。
エイト:支部やブロック、関連団体の資産については、解散命令の手が及ばないのですか?
紀藤:それは清算人が支部やブロック、信徒会やUPFといった関連団体を、どこまで統一教会と一体と見なすかによります。解散後はそこも注目されるべきでしょう。
エイト:解散命令が出ても統一教会が突如地下化することはないと思いますが、一部の信者は我々に対してSNSで個人情報を暴露したりしている。先鋭化した集団も出てくるのではないでしょうか。
紀藤:状況に窮し、先鋭化する分派が出てくる懸念はあります。オウムでも一部リーダーが主導する「ケロヨンクラブ」という分派ができて、常軌を逸した修行を行ない死者が出ている。先鋭化は個々の信者にとってリスクだし、我々にとってもリスクです。
そうした分派を生まないために、出家・在家合わせて10万人程度はいる信者をどう社会で受け入れ、軟着陸させるかを考えておく必要があります。
エイト:解散命令が出て終わりでは決してない。信者やその家族が被害を受けていればその救済も必要で、賠償のために教団の財産保全も必要になります。今度の国会で維新と立憲民主が、宗教法人法の一部改正と特別措置法の法案を出すとのことで、それが成立するかもポイントです。
紀藤:教団に問題があると気づいた元信者は、被害者に変わる。それをどう救済していくかですね。 (後編に続く)
【プロフィール】 鈴木エイト(すずき・えいと)/滋賀県出身。ニュースサイト「やや日刊カルト新聞」で副代表、主筆を歴任。カルト宗教問題を扱う日本脱カルト協会に所属し、長きにわたり旧統一教会問題を取材。著書に『自民党の統一教会汚染 追跡3000日』(小社刊)等。
紀藤正樹(きとう・まさき)/1960年生まれ、山口県出身。1990年に第二東京弁護士会に登録。全国霊感商法対策弁護士連絡会に所属し、2001年にリンク総合法律事務所を開設した。著書に『マインド・コントロール』(アスコム)、『議論の極意』(SB新書)等多数。 ※週刊ポスト2023年10月27日・11月3日号