イギリス南西部コーンウォールで開催中の主要7カ国(G7)首脳会議で各国は12日、 中低所得のインフラ整備を支援する新構想で合意した。中国の広域経済圏構想「一帯一路」に対抗する狙い。
アメリカのジョー・バイデン大統領は、同国が支援する「より良い世界再建」(B3W、Build Back Better World)構想について、中国の一帯一路に代わる、より質の高いものにしたいと述べた。
一帯一路構想(BRI)は多くの国で鉄道や道路、港湾の整備に貢献しているが、一部の国に借金を負わせているとの批判が上がっている。
G7首脳は声明で、「価値観に基づいた、高水準で透明性のある」パートナーシップを提供するとした。
ただ、この構想の資金調達に関する詳細は不明。ドイツのアンゲラ・メルケル首相は、資金調達について公表する段階ではないと述べた。
アメリカは特に、中国の「借金漬け外交」と呼ばれる「一帯一路」を非難してきた。
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世界で最も裕福な民主国家が集まるG7は、将来起こりうる感染症のパンデミックを阻止するための新たな計画についても協議している。
この計画には新型コロナウイルス感染症COVID-19のワクチンや治療法の開発・認可に必要な期間を100日以下に短縮することが含まれる。この内容は13日、G7首脳会議の最終合意文書(コミュニケ)とともに正式に公表される。
ボリス・ジョンソン英首相が主催するG7首脳会議は、コーンウォールの海辺のリゾート地カービス・ベイで3日間の日程で開催されている。
G7のCOVID-19関連計画
G7首脳はCOVID-19がもたらした人的・経済的な荒廃を二度と繰り返さないことを目的とした、「カービス・ベイ宣言」を13日に公表する。
米ジョンズ・ホプキンス大学の集計によると、世界でこれまでに1億7500万人以上が感染し、COVID-19関連の死者は370万人以上に上っている。
G7宣言には以下のような一連の手順が盛り込まれる。
- 将来的な疾病に対するワクチンや治療法、診断法の開発・認可に要する時間を100日以下に短縮すること
- 世界的な監視ネットワークとゲノム解析能力の強化
- 世界保健機関(WHO)の改革・強化への支援
この宣言には産業界、政府、科学機関から集められた国際的な専門家グループによる報告書の提言が盛り込まれる予定。
12日の協議には国連のアントニオ・グテーレス事務総長とWHOのテドロス・アダノム・ゲブレイエスス事務局長も参加した。
テドロス事務局長は「世界は、新たなエピデミック(感染流行)やパンデミックのリスクを見つけるために、より強力な世界的監視システムを必要としている」と強調した。
中国への対抗プラン
米市民は、発展途上国のインフラ支援構想について、世界で台頭する中国の影響力に対抗するためのものだと見ていると、BBCのジョン・ソープル北米編集長は説明する。
中国は一帯一路構想で、発展途上国に何十億ドルもの資金を投入している。米政府高官は、こうした中国の投資にはあまりにも高い代償が伴うと主張している。
一方でバイデン政権は、この世界的なインフラ計画に欧米がどの程度、どれくらいの期間取り組んでいくのかについては明言していない。明らかなのは、再び影響力を増す中国に対抗するためには今すぐ行動を起こす必要があると、西側諸国が決意を新たにしたということだと、ソープル編集長は指摘する。
西側主要国のこれまでの中国への対応
今年初め、アメリカや欧州連合(EU)、イギリス、カナダは協調して対中国制裁を発動した。
これは、中国の少数民族ウイグル族に対する深刻な人権侵害で告発された新疆の高官に対し、渡航禁止や資産凍結などを科すもの。
新疆北西部の収容施設では、ウイグル族などの少数民族が100万人以上拘束されているとみられる。
中国政府はウイグル族の女性に対する強制不妊手術や、子どもたちを家族から引き離しているとして非難を受けている。
BBCは2月、拘束されたウイグル族に対して組織的なレイプや性的虐待、拷問が行われているとする、ウイグル族の直接の証言などを報じた。
これに対して中国は、欧州の政府関係者に独自の制裁を科した。