川口穣 によるストーリー • 2 時間 AERA
自民党派閥の裏金事件は、現職国会議員の逮捕にまで発展し、政界を揺るがせている。26日召集の通常国会を前に、岸田文雄首相は「政治刷新本部」を発足させたが課題は多い。地に落ちた信頼を取り戻せるのか。元自民党政調会長・亀井静香さんに聞いた。AERA 2024年1月29日号より。
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俺が派閥の会長だったときも、議員たちに配っていたよ。派閥の金じゃなく、自分の政治団体の金でね。それが何でいかんの? 親分が子分どもに食い扶持を渡すのは当たり前じゃろう。ただ、政治資金収支報告書の記載は現在より甘くて、1円から領収書を保管しろって法律ではなかったけどね。
今回の件も、収支報告書にそっくり書いておけばなんの問題もなかったんだ。安倍派だけでなく、俺のつくった志帥会(現・二階派)でも2億円の不記載があったという。なんで書かなかったのかね。きれいに集めてきれいに使えばいいのに、わからない。バカじゃんな。
検察は安倍派幹部の立件を見送る方向のようだが、これでは終わらんと思うよ。検察審査会に行くだろうし、起訴すべきだって結論が出るかもしれんね。
■「派閥は必然だね」
昔は派閥の役割は明確だったよ。大臣にする、ポストを与える。それから総裁選の土台になる。派閥が総理をつくってたんだよ。今は派閥が弱くなったね。派閥にいれば大臣になれるわけでもない。それでも、完全に派閥がなくなれば党としては都合が悪いだろうね。派閥があれば、集団の親分と話をすれば意見を集約できる。それに、派閥はなくならないよ。派閥をなくすって、ずっと言われていたことだ。でも、なくならん。人が3人集まるところには必ず派閥ができる。派閥が正しいというよりも、必然だね。
亀井静香氏「自民党はおしまいだよ」 裏金問題が落ち着いても「未来はない」理由© AERA dot. 提供
ただ、このままでは自民党はおしまいだよ。党として日本国をどうするかという基本的な考え方を持たなくなっている。アメリカも中国もエゴをむき出しにしているなかで、日本だけがポチをやってる。国家としてのエゴがあって然るべきなんだよ。地方にももっと目を向けないといかん。東京一極集中の時代はもう終わったんだ。地方では自民党が強くて、あって当たり前の空気みたいな存在になっているが、今に見放されるよ。それから、強者が支配する弱肉強食の新自由主義が強まっている。これだけ株価が上がっても社員には還元されていない。強者がさらに強くなっているだけの話だ。
俺がやってきたこととは正反対だ。俺は郵政民営化に反対して自民党を飛び出して、中小企業の債務返済を猶予させるモラトリアム法(中小企業金融円滑化法)をつくった。強者の政治的な利益を代表しているのが今の自民党だから、自民党に未来はないと思うな。歴史が許さないんだよ。いつの時代も支配者、強者は倒されていくんだよ。今、選挙やってみなさいよ、自民党は負けるよ。
自民党派閥パーティー券問題、裏金の使い道は? 安倍派が「最大派閥」を維持できた構図© AERA dot. 提供
自民党派閥パーティー券問題、裏金の使い道は? 安倍派が「最大派閥」を維持できた構図© AERA dot. 提供
■「岸田は持たないね」
今回の裏金問題が落ち着いても岸田は持たないね。内閣改造したって支持率は上がらんし、手の打ちようがない。岸田では選挙に勝てないってみんなが思ってるから、次は上川陽子(外務大臣)あたりが出てくるんじゃないか。高市早苗(経済安全保障担当大臣)もいいんだけど、ちょっとトゲがあるわな。
野党も弱すぎるね。結集しないとどうしようもない。小選挙区制なんだから。立憲民主も維新も国民民主も、ちょっとくらい違いがあったって政権交代する気なら結集せざるを得ないんだ。昔の社会党みたいに野党が心地よくて、野党第1党を目指そうってんならダメだろうけどね。野党では福島伸享(のぶゆき)らの有志の会に期待している。今は衆院4人の小勢力。迫力が足らないから、もっと突っ張らんといけんけどね、野党の接着剤になれるかもしれない。
岸田の次の政権は、日本がアメリカのものにも中国のものにもならない自主独立を目指しながら、地球全体の人間の幸せを考えて行動する必要があるね。ちっちゃい島国であってもさ。
「裏金問題」安倍派の解体、岸田政権の崩壊にとどまらない 自民党政治が存亡の危機© AERA dot. 提供
「裏金問題」安倍派の解体、岸田政権の崩壊にとどまらない 自民党政治が存亡の危機© AERA dot. 提供
●ono hiroshi@hiroshimilano
建設業者から政治家への上納(キックバック)システムが語られている記事は珍しいと思うので、この話を頭に入れた上でバンパクやオリンピックを考えると、なんでバンパクがあの土地に執着するのか、誰がキックバックを受けるのか思い浮かんで、あっ、となります。
「谷川氏の権勢は完全に地に落ちており、地元からも告発の声が相次いでいる。
会費が裏金に
「谷川氏が長崎県に創業した谷川建設は諫早湾干拓をはじめ、あらゆる公共工事を受注してきた。谷川氏はその谷川建設を使って、裏金作りを行っていたのです」
そう声を潜めて語るのは谷川建設の関係者だ。
「谷川建設の下請け業者で作る『谷建会』という業界団体があります。その数は長崎を中心に九州全体で実に500社ほどに上ります。ここからが問題なのですが、谷川建設は谷建会の業者に下請けの仕事を発注する際、数%を“会費”と称して発注額から中抜きする。そしてその資金は裏金として会の口座にプールされ、長年にわたり、谷川氏の選挙費用などに使われてきたといわれています」
この点、現在、長崎谷建会に所属している、さる下請け企業も、
「自分の場合は受注額の1%を谷建会に納めています。長崎谷建会だけで毎年、数百万円の会費が集まっているはず。みんな、そうした会費が谷川先生の裏金になっていると薄々は分かっていたのでは」
と“上納システム”について証言。別の業者は、
「谷建会に会費として毎月3千円ほど納めていました。また、それとは別に数%を受注額から中抜きされていました」
「谷川建設から仕事を1回受注するたびに、自民党に寄付する名目で、1万円を谷川建設の関連会社に手渡しで届ける決まりもありました。領収書は出る時と出ない時がありましたが、寄付をしない業者は仕事を干されていました」」