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全滅は「玉砕」、退却は「転進」…美辞が隠した地獄 (朝日新聞デジタル)
全滅は「玉砕」、退却は「転進」…美辞が隠した地獄
岩崎生之助
朝日新聞 2017年8月11日05時02分 http://www.asahi.com/articles/ASK876HHPK87ULZU011.html
戦時中、全滅を意味する「玉砕」という言葉が使われた。人命を宝石にたとえた表現は、戦死のむごさから国民の目をそらし、泥沼化を招く一因にもなった。不都合な事実をごまかす美辞に、元兵士や遺族は厳しい目を向ける。(岩崎生之助)
サイパン島で米軍と戦った岡崎輝城(てるき)さん(95)=香川県坂出市=は今年6月も現地を訪れた。40回を超える慰霊の旅。悪夢のような記憶がよみがえる。
1944年6月、岡崎さんは地面を掘った陣地の中にいた。猛烈な艦砲射撃に身をこわばらせた。
隣にいた戦友が肩にもたれかかってきた。「暑いから寄るな」。目をやると、頭を吹き飛ばされていた。あふれる血が岡崎さんの軍服を染めた。
約300人いた部隊は30人ほどに減り、強力な重砲も破壊された。それでも上官らは降参を口にしなかった。「生きて虜囚(りょしゅう)の辱めを受けず」という戦陣訓により、死ぬまで戦うよう徹底されていた。
サイパンには日本の民間人もいた。銃を構える岡崎さんの前に幼い女の子を連れた女性が倒れこみ、「兵隊さん、後は頼みます」と言って息絶えた。「おかあちゃん、おきて!」。絶叫は今も耳から離れない。
やがて岡崎さんは迫撃砲弾の破…
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