とおいひのうた いまというひのうた

自分が感じてきたことを、順不同で、ああでもない、こうでもないと、かきつらねていきたいと思っている。

「古い墓石」アンデルセン

2006年09月17日 08時07分43秒 | 児童文学(絵本もふくむ)
これは、岩波文庫完訳の3におさめられている短いお話。

要約:とある小さな田舎町で、あるひとの家屋敷で庭においてある、古い大きな石のことが話題になった。外は美しい月が照っていました。その石は子どもたちの遊び場所になっていたのですが、実は古い墓石だったのです。この家の主人は全てを知っていました。それは大恋愛の末にむすばれた夫婦の墓石だったのです。
「二人は、どんなに長く暮らしてきたとか、こういうことは全部忘れてしまうのじゃ。光陰矢のごとし。万物は流転する、じゃー」

ところが、その話を聞いた少年にとっては、今までただの大きな石だとだけ思っていた墓石が、急に歴史の本の大きな一ページとなってそこに横たわっていました。

「忘れるのじゃ!―なにもかも」という声が部屋のなかから聞こえてきました。

その時、目に見えない天使が、少年の胸とひたいにキスして、そっとささやきました。「おまえに与えられたこの一粒の麦をたいせつにするのですよ。それが熟するまで!―少年よ、おまえの力で、すりへった碑文も、砕かれた墓石も、光り輝く金文字をきざまれて後の世の人びとに伝えられるのですよ!
そして、あの老人夫婦はふたたび腕を組んで古い往来を歩いていくでしょう。そして、元気のいい赤いほほをして、ほほえみかけるでしょう。

今ここにまかれた一粒の種も、年月のたつにつれてだんだん成長して、やがては美しい花を咲かせることになるのです。善と美とは、けっして忘れられはしません。それは言い伝えと歌のうちに、いつまでも生きつづけるのです。」

★アンデルセンの感性や考えがわかる作品は、たくさんあり驚いていますが、好きな話の一つです。
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