とおいひのうた いまというひのうた

自分が感じてきたことを、順不同で、ああでもない、こうでもないと、かきつらねていきたいと思っている。

実践論 3

2006年12月10日 07時09分34秒 | 宗教・哲学・イズム
[実践論]
 以上のような教理を知るのが実践の目標たる悟り(菩提 (ぼだい)) である。したがって悟りは,四諦を現観する,諸法無我の理を知る,縁起・空性をみる,唯識たることに入るなど,教理に応じて種々に表現されるが,一言で言えば,真実をみる,あるいは,如実に知見するということである。この知る働きを智あるいは慧と呼び, 般若と称する。これは通常の分別的認識とは異なり,無分別な直観である。この般若を身につけるにはその前段階として,修行が要求される。修行の基本は八正道で,そのあり方は中道と称されたが,具体的にはほかにも種々の徳目が挙げられ,それらを合わせて,三十七覚支 (かくし),すなわち 37 種の菩提を得るための手段と呼ぶこともある。
 またそれらをまとめると,戒・定・慧の三学におさまる。戒の基本は〈諸悪莫作,諸善奉行,自浄其意,是諸仏教〉 (諸悪をなすな,諸善をなせ,自ら心をきよめよ,これは諸仏の教えである) と示されるとおりで, 戒を守ることは入門の条件,修行の前提である。 定 (じよう)には四禅 (しぜん),四無色定 (しむしきじよう),滅尽定 (めつじんじよう) と呼ばれる種々の段階 (九次第定 (くしだいじよう) )があり,そのほかにも各種の三昧(さんまい) が説かれる。さらに,禅定中に慧のはたらきによって憶念し,観察する念,観と呼ばれる修行法もある。総じて,禅定は修行そのものと言ってもよく,それには常に慧が伴っている。定と慧を合わせて止観 (しかん)ということもある。大乗では実践を六波羅蜜 (ろくはらみつ)にまとめる。 波羅蜜とは完成されたあり方,もしくは理想世界 (彼岸) にわたることと解釈される。布施,持戒,忍辱 (にんにく),精進,禅定,般若の 6 種の行で,そのすべてが般若 (慧) に裏づけられているとき,波羅蜜と呼ばれる。三学に比して,布施という利他行が加わっているのが特色で,これは六波羅蜜が元来,仏の前身 (成道以前) たる菩醍の行で,衆生済度が目的であるのによる。
 修行にはまた修行者の機根 (能力,性質) 等に応じて,難易や段階の別がある。一般に禅定の修行により悟るのは難行であるので,機根の劣るものは信によることを勧めるが,大乗では仏の慈悲力で,信のみでも救済されると教える。修行者は修行の段階に応じて,凡夫 (ぼんぶ)と聖人 (しようにん)に分けられる。聖人は準備的修行 (加行 (けぎよう)) を終えて四諦の理を観じて見道に達したもの以上で,その後究極的完成まで修行を続けることが要請される。この段階を修道 (しゆどう)という。修行の完成者は阿羅漢 (羅漢) と呼ばれる。阿羅漢は元来,仏の異称で,供養をうけるに値する者の意であるが,伝統的部派仏教では弟子たちの完成位の名として,仏とは区別した。そこでは,仏になる菩醍の道と,独学で悟る独覚の道と阿羅漢になる弟子の道が,三乗の名で区別される。これに対し大乗仏教では,仏になる菩醍の道を万人に可能とし,大乗 (大きな乗り物の意) であることを自認した。誰でも仏と同じ悟り (阿耨多羅三藐三菩提 (あのくたらさんみやくさんぼだい)二無上菩提) に向けて発心すれば菩醍である。菩醍にもまた凡聖が区別されるが,完成された学説では十地 (十種の菩醍の階梯) の初地以上のものが聖人とされる。
[教団の組織と規則]
 教団を意味するサンガ(僧伽,僧) は共同体の意で,成員の和合を旨とする。サンガは宗教団体のほか,職人のギルド,共和政体をも指して用いられる用語で,成員が自分たちで規則をつくる,成員相互が平等の権利をもつなどのことが予想される。 仏教では出家した修行者は出身の家柄や階級 (バルナ) を問わず (四姓平等),等しく沙門釈子 (しやもんしやくし) と称するものとして,諸川が大海に入って一味となるのになぞらえている。教団の成員は広義には比丘(びく) (男性修行者), 比丘尼(びくに) (女性修行者),優婆塞 (うばそく) (男性在家信者),優婆夷 (うばい) (女性在家信者) の四衆より成るが,在家の信者に対しては入信に際し,仏法僧の三宝への帰依と五戒の遵守を誓わせる以外,特に取決めはない。これに対し,修行者は入門に際し,具足戒を受けて以後,団体生活を営むについて種々規制をうけ,また犯戒すれば罰則をうける。このような教団の規制を律 (戒律) と呼ぶ。律は,戒本とそれの違反に対する罰則を決める部門と,教団運営に伴う諸規則を挙げる部門とより成る。前者は 250 戒を罰則の軽重によって 5 種あるいは 8 種に分けるが,そのうち最も重い罪は波羅夷 (はらい) 罪で,殺生,偸盗,婬,大妄語 (悟っていないのに悟ったといううそ) を犯したものに対して課せられ,犯戒者は教団から追放される。その他は軽重はあってもすべて,懺悔 (さんげ)によって許される。戒の条項は比丘で 250,比丘尼では 348 とされる (部派により異なる) が,元来は随犯規制といって,その行為が問題として取り上げられるたびにしだいに増加したとされる (初犯は規定以前なので罰せられない)。後者,教団運営の規則類には,会議運営のやり方とか,出家受戒作法その他,布醍(一定の日に日頃の行為を懺悔する), 安居(あんご) (毎年雨季に全員集まって修行する) などの行事の規定,修行者の生活資具としての四依 (衣は糞掃衣 (ふんぞうえ),食事用の鉢,住居は樹下石上,薬は陳棄薬による) の規定などがある。会議の運営は全員一致を旨とし,そのため会議の種類に応じて人数を決め,そのつどサンガの人員を確認した (たとえば,入門のための受戒の儀式には 10 人以上の成人修行者の出席を必要とするなど)。この,事に応じたサンガの構成を現前僧伽 (げんぜんそうぎや)という。これに対し,全仏教徒 (修行者) の教団を四方僧伽という (四方僧伽にあたるサンスクリットのチャートゥルディシャを音写した招提 (しようだい)の語は,唐招提寺の名に残っている)。律は部派ごとに,内容上に若干の差異がある。なお,大乗には戒があっても律はない。これは大乗が元来在家信者の集団から起こったことにも関連しよう。
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