毎日新聞 によるストーリー
• 36 分新型コロナ感染症の世界的流行下で、マスメディアなどで情報発信する専門家の半数が誹謗(ひぼう)中傷などの攻撃を受けていた――。早稲田大学の田中幹人教授(科学技術社会論)らの研究グループが専門家へのアンケート調査を実施し、明らかにした。人工知能学会誌(2024年5月号)で発表した。
新型コロナに関連し、科学的な情報を発信する専門家への攻撃について、国内の実態が判明するのは初めてとみられる。
田中教授らの研究グループは、20年2月~21年3月、新型コロナについてテレビや新聞でコメントした国内の専門家を抽出。121人にアンケートを送り、42人から回答(回答率34・7%)を得た。
フェイスブックやツイッター(現X)などのソーシャルメディアも含め情報発信したあとの自身や家族らへの悪影響について、「なかった」と答えたのは12人(29%)。悪影響があった29人のうち8割が「感情的、心理的な苦痛があった」とした。深刻な被害として、3人が「殺害予告があった」、2人が「身体的・性的暴力に関する脅迫を受けた」と答えた。
海外では同様の実態が既に明らかになっている。英国や米国、台湾など7カ国・地域の専門家を対象にした調査では、マスメディアなどで発信した専門家321人のうち15%にあたる47人が殺害予告を受け、72人(22%)が身体的・性的暴力の脅迫を受けていた。
田中教授は「身体的・心理的脅迫は、社会の健全な議論の妨げにしかならない。科学についても議論を表立って引き受けてくれる人々を組織的にサポートしたり、保護したりする仕組みが必要だ」と指摘した。【金秀蓮】