自民党は9日午前、石破茂首相(自民党総裁)らによる選対本部会議を党本部で開き、派閥の政治資金パーティー裏金事件に関係した議員ら12人を次期衆院選(15日公示、27日投開票)で公認しないと決めた。既に非公認方針を固めていた6人に加え、安倍派の6人を対象にした。衆院は9日午後に解散され、与野党は事実上の選挙戦に突入する。
追加で非公認になったのは、菅家一郎氏(福島3区)▽中根一幸氏(埼玉6区)▽小田原潔氏(東京21区)▽細田健一氏(新潟2区)▽越智隆雄氏(東京6区)▽今村洋史氏(東京9区)――で、今村氏は党支部長、他の5人は現職。
4月の党内処分で菅家、中根、小田原の3氏は党役職停止6カ月、細田氏は戒告を、越智、今村両氏は処分とは別枠の幹事長注意を受けていた。越智氏は7日、衆院選不出馬を表明している。
6人を非公認の対象に加えたことについて、森山裕幹事長は「ルールに基づいて、また総裁が今まで発言をしてこられたことに基づいて決めた」と記者団に説明した。党幹部は「党で情勢を調査して当選可能性を判断した。当選第一主義だ」と語った。
選対会議では併せて衆院選の第1次公認候補として、小選挙区265人、比例代表14人の計279人の擁立を決めた。政治資金収支報告書への不記載があった議員ら約40人についても比例代表との重複立候補を認めない方針を確認。代わりに女性や若者を積極的に比例候補に起用する。
不記載議員のうち比例単独での出馬が検討されていた杉田水脈氏(比例中国)、尾身朝子氏(比例北関東)、上杉謙太郎氏(比例東北)の3人の扱いについては、後日改めて協議するという。
自民は非公認の12人の小選挙区に対立候補は擁立しない方針。公明党は自民が公認を見送る現職には推薦を出さない。
首相は6日、公認判断にあたっての考え方を表明。①「選挙における非公認」より重い処分を4月に受けた者②非公認より軽い処分でも、処分が継続し、国会の政治倫理審査会に出席して説明していない者③処分を受け、説明責任が十分に果たされず、地元での理解が十分に進んでいないと判断される者――は非公認とするとした。
これにより、萩生田光一元政調会長(東京24区、安倍派)▽下村博文元文部科学相(東京11区、安倍派)▽西村康稔元経済産業相(兵庫9区、安倍派)▽高木毅元国対委員長(福井2区、安倍派)▽三ツ林裕巳元副内閣相(埼玉13区、安倍派)▽平沢勝栄元復興相(東京17区、二階派)――の6人が①と②に該当し、非公認が固まっていた。首相の方針表明後、党執行部が③に該当する議員がいるかどうかを検討していた。
首相は選対会議に出席後、首相官邸で記者団に対し「今の政権を信任いただくためにも、正々堂々、誠心誠意、選挙に臨んでいきたい」と語った。
立憲民主党の小川淳也幹事長は9日午前、国会内で記者団に「裏金に蓋(ふた)をして逃げ切り、幕引きを図る。とても許されることではない。しっかり国民の受け皿になるべく、全力を尽くしたい」と語った。
衆院は9日午後の本会議で解散された。政府は臨時閣議で衆院選日程を「15日公示、27日投開票」と決定する。これに先立ち、石破茂首相(自民党総裁)は派閥裏金事件に絡み、政治資金収支報告書に不記載があった議員ら12人を非公認にすると決めた。
1日の首相就任から8日後の衆院解散は戦後最短。解散から18日後に投開票を迎える短期決戦となる。裏金事件を受けた政治改革の在り方や物価高対応が争点となる。
衆院選は岸田政権が発足した直後の2021年10月31日以来。小選挙区定数「10増10減」などを受けた新区割りで初めて実施され、小選挙区289、比例代表176の計465議席を争う。
自民は選挙戦で、地方の成長を底上げする地方創生を訴える意向だ。公明党も生活支援へ電気・ガス、ガソリン代の支援継続を主張する。
立民、日本維新の会は政治改革で企業・団体献金の禁止を提唱。共産党は年金支給額引き上げ、国民民主党は減税や社会保険料軽減を打ち出す。
首相と全閣僚は9日午前の臨時閣議で衆院解散の閣議決定書に署名した
公明、自民非公認の2人を推薦 処分受けた西村、三ツ林氏
公明党は9日、衆院選に立候補する自民党候補174人と、裏金事件に関係し非公認となった無所属2人の推薦を決めた。2人は4月の自民党処分で党員資格停止1年となった西村康稔氏と、党役職停止1年の三ツ林裕巳氏。石井啓一代表は記者会見で「地元の意向を尊重した」と語った。
石井氏は7日、自民党で非公認となった候補からは推薦要請はないだろうとして推薦は見送る考えを示していた。だがその後、西村、三ツ林両氏から推薦依頼が来たという。
西田実仁幹事長も会見で両氏に関し「地元の公明党員・支持者に、問題発覚直後から謝罪、説明していた」と述べ、推薦に当たって党の基準を満たしたと強調した。
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