4月に迫る衆議院補欠選挙を前に、岸田総理が動いた。去る3月5日、二つの選挙区で補選が行われる山口県を訪問したのだ。そのうちの一つ、山口4区といえば、昨年7月に銃弾に倒れ、帰らぬ人となった安倍晋三元総理の地元選挙区。国葬まで執り行った“自民党のレジェンド”の後継者を負けさせるわけにはいかぬと、現地に乗り込んで行ったというわけだ。ところがこの“山口入り”の、ある予定変更をめぐって、党内部から批判の声が上がっている。

墓参りがキャンセル

 政治部デスクが言う。

「岸田総理は、3月5日の午前に羽田空港をたち、山口宇部空港に降り立ちました。そしてまず向かったのは、下関市。故・安倍元総理が当選を重ねてきた、山口4区の中心地区です。安倍氏の後継として出馬する新人候補を応援すべく、訪れたというわけです」

 岸田氏は、応援演説を行う前に、安倍氏の元地元事務所に足を運び、そこに掲げてあった安倍氏の遺影に黙祷を捧げたという。ところが、これ、当初の予定にはなかったものだった。

 地元関係者が言う。

「実は、岸田総理は当初、安倍家のお墓を訪れ、墓前に花を手向けて補選での必勝を誓う、という予定が組まれていました、受け入れる地元もその準備をしていたのですが、直前になって墓参りがキャンセルとなってしまったのです」

 現職総理が、銃撃に倒れた元総理の墓に手を合わせる――。いかにも“絵になるシーン”であり、選挙応援のスタートとしてこれ以上ないものと思われるが、なぜ中止となってしまったのか。

分骨でさえ踏ん切りがつかない

「出発の前になって、党幹部が念の為遺族側に確認したところ、お墓にはまだ安倍氏の遺骨は納められておらず、富ヶ谷の自宅にあるということがわかったのです。納骨前に墓参りをするのは不自然ではないかという判断で、急遽、遺影への黙祷に切り替わったのです」

 一体なぜ、遺骨がお墓に収められていないのかといえば、

「当然ながら、奥様の昭恵さんの判断です。病気や老衰などではなく、突然に、しかも銃撃という、あまりにも衝撃的な形で夫を亡くした悲しみは今も全く癒えておらず、遺骨を自宅に置いていて、朝も夜も問わず、手を合わせ、語りかけているそうです。もちろんいずれは、と昭恵さんも考えているようですが、その時も、分骨して、一部は自宅にと考えているようです。ただ、その分骨さえまだ踏ん切りがつかないで、気持ちの整理がつくのが、いつになるかは、誰にも分からないというのが現状です」

もう少し上手くやってくれ

 このドタキャンには、自民党幹部も呆れる。

「そもそも、なんでそんな重要なことを、岸田さんは直前まで知らなかったのかが問題です。あまりにもお粗末すぎます。墓参りの話はマスコミにも伝わっていましたし、恥ずかしいこと限りない」

 しかも、

「本当に安倍さんに必勝を誓いたいなら、山口入りの前にでも、富ヶ谷の自宅にいって手を合わせるべきだったのに、それもしない。しかも、ご遺族と十分にコミュニケーションを取ってこなかったわけです。つまり、墓参りも遺影の前の黙祷も、全く気持ちのこもっていない、単なる選挙のためのパフォーマンスに過ぎないということが、明らかになってしまった。正直、もう少し上手にやってくれよと思いますね。こんなことでは、彼のやることなすこと、全部パフォーマンスじゃないか、と国民は思ってしまいますよ」

デイリー新潮編集部