【執筆原稿から抜粋】
儒教は宗教か?
儒教が宗教か否かについては、宗教をどう定義するかに依ります。
死後の世界を論じるのが宗教の本質だとすると、以下の論語で指摘されるように、お化けとか地獄とかの霊界(怪力乱神)について語っていない儒教は宗教ではないとされます。
怪力乱神を語らず。未だ生を知らず。いずくんぞ死を知らん
一方、祖先崇拝をする儒教は死後の世界を扱っているので宗教だという考えもあります。中国史・論語に詳しい加地伸行教授などの主張です。
原始インド仏教に祖先崇拝の考えはなく、今でも、インド仏教の流れを汲み儒教の影響を受けないチベットやブータンでは、お墓すらありません。
日本の仏式葬儀における祖先崇拝は、インド仏教にはない儒教の影響です。
こう考えると、たしかに儒教も宗教のように思われます。
日本ではお墓参りを仏教行事と考え、儒教行事とは考えません。
これは仏教が儒教を吸収しているため、儒教の先祖崇拝という宗教的側面が見えにくいからです。
このように、儒教の宗教的側面が仏教によって隠され、道徳哲学的な部分が目立つので、「儒教は宗教ではない」と思われることが多いのでしょう。