昨日の夜は、中島らもの小説『ガダラの豚』を読み返していました。
アフリカの呪術医の研究が専門の民族学学者・大生部多一郎はTVに引っ張りだこの人気教授。
しかし、8年前に東アフリカで長女が気球から落ちて死んでから酒に溺れていた。
妻の逸美は奇跡体験を見せる新興宗教にのめり込みはまってしまって家族はバラバラ。
大生部はマジシャンの男と共に宗教団体から逸美の奪還を企てるのだが…。
日本推理作家協会賞受賞作。
エンターテイメントです。
まず、神秘体験や奇跡の絡繰りを提示する。
真に不思議な事は滅多に起こらない。頻繁に起こるのなら絡繰りがある。と物語の中で読者に提示する。
勿論、中島らものネタフリ。
神秘や奇跡を科学的な考察で否定する。が、ちらちらと摩訶不思議なものが見え隠れする。
次に、社会的なシステムとしての呪いを提示する。
超常現象としての呪いではなく社会のシステムの中で成立する呪い。それはアフリカの地だけではなく全ての地域で存在する呪いや祝いの類。それを物語の中で読者に提示する。
勿論、中島らものネタフリ。
神秘や奇跡や超常現象を徹底的に否定してひっくり返す。
前半や中盤で否定していた事柄が終盤に入って主人公たちに襲いかかる。
これぞエンターテイメント!
読者を摩訶不思議な事柄を否定に導きながら「でも、もしや?」と思わせ翻弄する。
時に飄々と時に暗黒面を深く突く筆致。
精緻に組み上げられた日常世界が終盤で一気に崩壊する。
面白いです!
私の中では中島らもの最高傑作!
お勧めです。