平成28年4月12日(火)晴後曇
起床後、晴天なので食事までの間『皆生海浜公園』付近を散歩する。昨日の冷たい風が若干残っているようで、大分冷え込んでいる。
公園沿いの道を海岸まで行ってみると、期待の弓ケ浜は遥か北、米子飛行場の近くと分かる。
*

*
この付近の海岸沿いにはホテルが立ち並び、松林が途切れ途切れにしか見られない。日本海の皆生湾にはカモメなど海鳥の姿は見当たらない。
公園にはカワラヒワが多く見られ、その他イソヒヨドリ、ツグミ、トビ、シジュウカラ、キクイタダキ、ムクドリなどを観て旅館へ戻る。
*
朝食は一階の『日本海』で。和食の銘々膳が用意されており、生野菜がバイキングスタイルとなっている。
イカの刺身、干しカレイ、しじみの味噌汁などが美味しく戴けた。
*
今日の目的地『足立美術館』へは、旅館にほど近い『米子市観光センター』から出る無料シャトルバスを利用する。
*

*
バスは米子市内から安来市内へ入り、次第に高度を上げて長閑な田園地帯にある、広大な敷地の足立美術館に40分ほどで到着する。
駐車場には既に多くの観光バスや自家用車が駐車しており、館内の混雑が予想される。
*

*
足立美術館
島根県安来市出身の実業家足立全康が収集した美術品をもとに、1970年11月に開館。
横山大観をはじめとする近代日本画コレクションで知られ、とくに大観の作品は120点におよび質量ともに最も充実。
また米国の庭園専門誌 J O J G が日本一に選んだ日本庭園も併せもち、四季折々の風情が来館者の眼を楽しませています。
*
「名園と横山大観コレクション」すなわち日本庭園と日本画の調和は、当館創設以来の基本方針であります。
それは、日本人なら誰でも分かる日本庭園を通して、四季の美に触れていただき、その感動をもって横山大観という、日本人なら誰でも知っている画家の作品に接することで、日本画の魅力を理解していただきたい。
そして、まず大観を知ることによってその他の画家や作品に興味を持っていただき、ひいては日本画の美、すなわち「美の感動」に接していただきたいという創設者 足立全康の強く深い願いがあってのことなのです。 【足立美術館パンフより】
*
音声ガイドを借り、館内に入ると先ず先ず目に入るのは、「庭園もまた一幅の絵画である」とされた美術館の創設者・足立全康の思いと、庭造りへの情熱を生き生きと伝える五万坪の日本庭園だ。
窓がそのまま “ 生の額縁 ” となり、そこから望む庭園はまるで琳派の屏風絵を想わせるように、四季の移ろい、光の陰影とともに趣を変える一枚の絵画だこの庭園部分は撮影自由なので、それぞれの思いの場所でシャッターを切る。
*
入口からスロープを降りたところに『枯山水庭』の一部が横位置から眺められる。直角に曲がる廊下を歩きながら所々でシャツターを切る。
*

*
工芸品が並ぶ廊下を過ぎ、右手に曲がると『苔庭』が見える。
苔を主体とした京風の雅びな庭園で、ゆるやかな曲線を描いた苔の緑と、白砂の白との対比が美しく、秋には紅葉の赤が一段と彩りを添えると云う。
*

*
苔庭の反対側には『茶室 寿立庵』があり、その周囲の樹々もまた趣のある庭の一部となっている。
廊下を右に直角に曲がると、右腕を挙げ次を案内するような足立全康翁の立像がある。
*

*
足立全康は明治32年(1899)2月8日、能義郡飯梨村字古川(現、安来市古川町:美術館所在地)に生まれました。
小学校卒業後すぐに、生家の農業を手伝いますが、身を粉にして働いても報われない両親を見るにつけ、商売の道に進もうと決意します。
14歳の時、今の美術館より、3kmほど奥の広瀬町から安来の港までの15kmを大八車で木炭を運搬する仕事につきました。
運搬をしながら思いついたのが炭の小売りで、余分に仕入れた炭を安来まで運ぶ途中、近在の家々に売り歩き、運賃かせぎの倍の収入を得たことがいわば最初に手掛けた商いといえます。
その後紆余曲折、様々の事業を興し、戦後は大阪で繊維問屋、不動産関係などの事業のかたわら、幼少の頃より興味を持っていた日本画を蒐集して、いつしか美術品のコレクターとして知られるようになっていました。
また若い頃から何よりも好きであったという庭造りへの関心も次第に大きくなっていったのです。そしてついに昭和45年、71歳の時郷土への恩返しと島根県の文化発展の一助になればという思いで、財団法人足立美術館を創設しました。 【足立美術館HPより】
*
その先の広いロビーに出ると『枯山水庭』が前面に広がって見える。自然との調和が美しい足立美術館の主庭です
中央の立石は、険しい山をイメージし、そこから流れる滝水がやがて大河となる、雄大な趣を表わしているという
ここにはじっくり観賞するようにと長椅子が数台用意されており、しばし時を忘れてこの庭を眺めていました。
*

*
童画が展示されている廊下を過ぎると『生の額絵』、館内の窓がそのまま額縁に、まるで琳派の絵を見ているかのように、大小の木や石がバランス良く配置され、芝生の稜線が美しい。自然による絵画だ。
『亀鶴の滝』はガラス窓越しではなく、建物の外から自然の姿を見られる。昭和53年に開館8周年を記念して開瀑した高さ 15mの人工の滝。滝口からは勢いよく流れ落ちる水が、庭園に動きと緊張感を与えているようだ。
*

*
『池庭』は周囲との調和を考え、新しい感覚と伝統的手法を用いて造られた庭園とのことだ。優雅に群泳する鯉は、見る人の心に安らぎを与えてくれるようだ。
庭園の最後は『白砂青松庭』、横山大観の名作『白砂青松』をイメージして造られたと云う庭園。ここも建物の外から自然の姿を観賞できる。
白砂の丘陵には右に黒松、左に赤松を配置し、対照的な調和美を生み出しているという。
*

*
なお『生の掛軸』は、床の間の壁を刳り貫いて、あたかも一幅の山水画が掛かっているように見える、自然による絵画と云う場所だったが、何と迂闊にも通り過ぎてしまった。
*
二階へ上がり『春の特別展示 横山大観コレクション選』の特別展示室へ。
いよいよ横山大観の約120点あるコレクションの中から30点ほどが制作年代順に展示されている作品を観ることになるのだ
*
観賞した作品の中から主な作品を挙げてみると、1928年の『白梅』、1933年の『桐之冬』、二羽のスズメが可愛らしい。
*
*
乱雲の中で激しい動きをみせる一頭の龍の姿を描いた1937年の『龍興而到雲』、同じ年の『夜深し』。
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緑鮮やかな松の樹々と、おおらかな鶴の群れを描いた『瑞祥』の1943年、鶴の文字絵で世間を驚かした『壽』1950年。
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月の光が齎した変化を描いた『月出咬合』1953年、「米寿大観ここにあり」という気概を感じる『霊峰夏不二』1955年。
などを観たが、何か目玉の展示作品が少ないような感じで若干物足りなかった。
*

*
次いで「没後45年 榊原紫峰 知られざる花鳥画家の生涯 国展の仲間たちとともに」というタイトルの大展示室へ。
この展示室ではパンフによると、足立美術館の 90点に及ぶ紫峰コレクションの中から、初期から晩年までの名品を厳選し、さらに土田麦僊、村上華岳ら、国画創作協会の仲間たちの作品を加えた 40点を展示して、 知られざる花鳥画家の生涯に迫ります、とありました。
*
榊原紫峰 明治20年(1887)~ 昭和46年(1971)
京都に生まれる。京都市立美術工芸学校などで、竹内栖鳳ら京都画壇の重鎮から薫陶を受け、文展などで若くして頭角を現す。
大正7年には土田麦僊らとともに、自由な個性の発露を目的とした国画創作協会を創設し、意欲作を発表した。
晩年は画壇から離れ高度な精神性を示した墨画を数多く遺す。生涯にわたり花鳥画を描いた。
*
絵の中に野鳥や昆虫などが描かれている作品が多く、それを探すのもまた一つの楽しみでもありました。
1939年の『梅花.群禽』はメジロが数羽描かれおり、1926年の『白鷺図』は優雅に飛翔する姿が描かれていますが、西洋絵画の写実性を取り入れた本作は、紫峰の代表作の一つと云われています。
*
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その他、紫峰の初期から晩年に至るまでの多くの花鳥画の作品を観ることができました。
下図左の『青梅』1918年は、第一回国展に出品された紫峰 31歳の代表作で、左面にカケス、右面にスズメが描かれており、右の『鶏頭花』1967年は紫峰80歳の作で、鶏頭の花にバッタが止まり、静かな秋の光景が墨一色で描き出されています
晩年の紫峰は水墨画に新境地を拓いたとのことです。
*

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また、国画創作協会で互いに研鑽を積んだ仲間たちの作品も数は少ないながら展示されていました。
下左は土田麦僊(1887~1936)の『黄蜀葵』1932年、右は入江波光(1887~1948)の『獅子上尊』1939年の作。
その他、村上華岳(1888~1939)『秋景』、小野竹喬(1889~1979)『海』などがありました。
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ここで昼時となり、一階の喫茶室その名も『大観』で昼食を採ることにしました。
この喫茶室は、大きなガラス窓を通して『池庭』が眺められると云う絶好のロケーションにあり、その窓際の席に座って、水面に映える陽光など景色を賞でながら喫茶室の名物『笹巻きおこわ』を注文しました。
小ぶりの笹巻三つには、島根和牛、うなぎ、赤貝が載せられており、それぞれを美味しく戴きました。
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午後からは『新館』へ。2010年に開館四十周年を機にオープン。“ 足立美術館賞受賞作品 ” を中心に、次代を担う日本画家の優秀作をおよそ 200点を収蔵。
毎年秋には『再興院展』を開催し、宮廻正晴ら日本美術院同人の新作や院展入選作を展示しています。
*
那波多目 功一『爛漫』
*
『現代日本画名品選』 では、平山郁夫の『祇園精舎』1981年や、松村公嗣の『熊野古道』2009年などを観ることができました。
『 足立美術館賞』作品としては、第21回の藁谷実「永遠の彩り」2015年(下図左)、第10回の西田俊英「観」2014年(下図右)がありました。
*

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その他 50 ~ 200号サイズのもので、100 ~ 150点の作品が展示されていましたが、些か疲れもあって足早に観賞し、帰りの時間も迫ったので『陶芸館』の北大路魯山人や河井寛次郎の作品はパスせざるを得ませんでした。
*
10時過ぎから14時まで、見事な庭園と日本画家の作品を数多く見ることができ、足立全康氏の『日本画の美、すなわち「美の感動』に充分に接することができました。
また、小生を車椅子に乗せて観賞した妻は、さぞかし疲れたことと改めて感謝した次第。
*
帰りのシャトルバスはJRの安来駅へ。駅構内といわず、駅周辺には『安来節』のマスコットや彫像などが多く見られ、思わず笑いを誘われました。
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普通電車に乗り10分で米子駅へ。ここからリムジンバスで米子鬼太郎空港へ。
空港のロビーでは、ガラス張りの壁面にその名の鬼太郎などの絵と、天井から吊り下げられたオブジェに眼を引かれました
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ほぼ満席のフライトは大半が雲の中、気流の状態も悪く、僅かに北アルプス上空で雲が切れた状態でした。
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かくして、いささか慌ただしい米子・安来紀行を無事に終えることができました。
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8.40. 弓ケ浜荘 … 米子市観光センター 9.30.(足立美術館送迎バス)→ 10.10. 足立美術館 … 観賞・昼食 …
14.00.(送迎バス)→ 14.20. 安来駅 14.50.(JR)→ 15.00.米子駅 15.20.(リムジンバス)→
15.55.米子鬼太郎空港 16.30.(ANA1090便)→ 17.50. 羽田空港着
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【参考資料】
・足立美術館 開館35周年記念 『横山大観展』カタログ 平成17年3月23日~4月10日
日本橋三越本店新館7階ギャラリー
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・没後50年『横山大観』- 新たなる伝説へ カタログ 平成20年1月23日~3月3日 新国立美術館
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【観察した野鳥】 38種
カイツブリ カンムリカイツブリ カワウ ダイサギ コサギ
アオサギ マガン コブハクチョウ ツクシガモ マガモ
カルガモ コガモ ヒドリガモ オナガガモ ハシビロガモ
ホシハジロ キンクロハジロ ミコアイサ ト ビ キ ジ
バ ン オオバン イソシギ キジバト ヒバリ
ツバメ ハクセキレイ セグロセキレイ ヒヨドリ イソヒヨドリ
ツグミ キクイタダキ シジュウカラ カワラヒワ スズメ
ムクドリ ハシボソガラス ハシブトガラス
起床後、晴天なので食事までの間『皆生海浜公園』付近を散歩する。昨日の冷たい風が若干残っているようで、大分冷え込んでいる。
公園沿いの道を海岸まで行ってみると、期待の弓ケ浜は遥か北、米子飛行場の近くと分かる。
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この付近の海岸沿いにはホテルが立ち並び、松林が途切れ途切れにしか見られない。日本海の皆生湾にはカモメなど海鳥の姿は見当たらない。
公園にはカワラヒワが多く見られ、その他イソヒヨドリ、ツグミ、トビ、シジュウカラ、キクイタダキ、ムクドリなどを観て旅館へ戻る。
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朝食は一階の『日本海』で。和食の銘々膳が用意されており、生野菜がバイキングスタイルとなっている。
イカの刺身、干しカレイ、しじみの味噌汁などが美味しく戴けた。
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今日の目的地『足立美術館』へは、旅館にほど近い『米子市観光センター』から出る無料シャトルバスを利用する。
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バスは米子市内から安来市内へ入り、次第に高度を上げて長閑な田園地帯にある、広大な敷地の足立美術館に40分ほどで到着する。
駐車場には既に多くの観光バスや自家用車が駐車しており、館内の混雑が予想される。
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足立美術館
島根県安来市出身の実業家足立全康が収集した美術品をもとに、1970年11月に開館。
横山大観をはじめとする近代日本画コレクションで知られ、とくに大観の作品は120点におよび質量ともに最も充実。
また米国の庭園専門誌 J O J G が日本一に選んだ日本庭園も併せもち、四季折々の風情が来館者の眼を楽しませています。
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「名園と横山大観コレクション」すなわち日本庭園と日本画の調和は、当館創設以来の基本方針であります。
それは、日本人なら誰でも分かる日本庭園を通して、四季の美に触れていただき、その感動をもって横山大観という、日本人なら誰でも知っている画家の作品に接することで、日本画の魅力を理解していただきたい。
そして、まず大観を知ることによってその他の画家や作品に興味を持っていただき、ひいては日本画の美、すなわち「美の感動」に接していただきたいという創設者 足立全康の強く深い願いがあってのことなのです。 【足立美術館パンフより】
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音声ガイドを借り、館内に入ると先ず先ず目に入るのは、「庭園もまた一幅の絵画である」とされた美術館の創設者・足立全康の思いと、庭造りへの情熱を生き生きと伝える五万坪の日本庭園だ。
窓がそのまま “ 生の額縁 ” となり、そこから望む庭園はまるで琳派の屏風絵を想わせるように、四季の移ろい、光の陰影とともに趣を変える一枚の絵画だこの庭園部分は撮影自由なので、それぞれの思いの場所でシャッターを切る。
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入口からスロープを降りたところに『枯山水庭』の一部が横位置から眺められる。直角に曲がる廊下を歩きながら所々でシャツターを切る。
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工芸品が並ぶ廊下を過ぎ、右手に曲がると『苔庭』が見える。
苔を主体とした京風の雅びな庭園で、ゆるやかな曲線を描いた苔の緑と、白砂の白との対比が美しく、秋には紅葉の赤が一段と彩りを添えると云う。
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苔庭の反対側には『茶室 寿立庵』があり、その周囲の樹々もまた趣のある庭の一部となっている。
廊下を右に直角に曲がると、右腕を挙げ次を案内するような足立全康翁の立像がある。
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足立全康は明治32年(1899)2月8日、能義郡飯梨村字古川(現、安来市古川町:美術館所在地)に生まれました。
小学校卒業後すぐに、生家の農業を手伝いますが、身を粉にして働いても報われない両親を見るにつけ、商売の道に進もうと決意します。
14歳の時、今の美術館より、3kmほど奥の広瀬町から安来の港までの15kmを大八車で木炭を運搬する仕事につきました。
運搬をしながら思いついたのが炭の小売りで、余分に仕入れた炭を安来まで運ぶ途中、近在の家々に売り歩き、運賃かせぎの倍の収入を得たことがいわば最初に手掛けた商いといえます。
その後紆余曲折、様々の事業を興し、戦後は大阪で繊維問屋、不動産関係などの事業のかたわら、幼少の頃より興味を持っていた日本画を蒐集して、いつしか美術品のコレクターとして知られるようになっていました。
また若い頃から何よりも好きであったという庭造りへの関心も次第に大きくなっていったのです。そしてついに昭和45年、71歳の時郷土への恩返しと島根県の文化発展の一助になればという思いで、財団法人足立美術館を創設しました。 【足立美術館HPより】
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その先の広いロビーに出ると『枯山水庭』が前面に広がって見える。自然との調和が美しい足立美術館の主庭です
中央の立石は、険しい山をイメージし、そこから流れる滝水がやがて大河となる、雄大な趣を表わしているという
ここにはじっくり観賞するようにと長椅子が数台用意されており、しばし時を忘れてこの庭を眺めていました。
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童画が展示されている廊下を過ぎると『生の額絵』、館内の窓がそのまま額縁に、まるで琳派の絵を見ているかのように、大小の木や石がバランス良く配置され、芝生の稜線が美しい。自然による絵画だ。
『亀鶴の滝』はガラス窓越しではなく、建物の外から自然の姿を見られる。昭和53年に開館8周年を記念して開瀑した高さ 15mの人工の滝。滝口からは勢いよく流れ落ちる水が、庭園に動きと緊張感を与えているようだ。
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『池庭』は周囲との調和を考え、新しい感覚と伝統的手法を用いて造られた庭園とのことだ。優雅に群泳する鯉は、見る人の心に安らぎを与えてくれるようだ。
庭園の最後は『白砂青松庭』、横山大観の名作『白砂青松』をイメージして造られたと云う庭園。ここも建物の外から自然の姿を観賞できる。
白砂の丘陵には右に黒松、左に赤松を配置し、対照的な調和美を生み出しているという。
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なお『生の掛軸』は、床の間の壁を刳り貫いて、あたかも一幅の山水画が掛かっているように見える、自然による絵画と云う場所だったが、何と迂闊にも通り過ぎてしまった。
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二階へ上がり『春の特別展示 横山大観コレクション選』の特別展示室へ。
いよいよ横山大観の約120点あるコレクションの中から30点ほどが制作年代順に展示されている作品を観ることになるのだ
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観賞した作品の中から主な作品を挙げてみると、1928年の『白梅』、1933年の『桐之冬』、二羽のスズメが可愛らしい。
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乱雲の中で激しい動きをみせる一頭の龍の姿を描いた1937年の『龍興而到雲』、同じ年の『夜深し』。
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緑鮮やかな松の樹々と、おおらかな鶴の群れを描いた『瑞祥』の1943年、鶴の文字絵で世間を驚かした『壽』1950年。
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月の光が齎した変化を描いた『月出咬合』1953年、「米寿大観ここにあり」という気概を感じる『霊峰夏不二』1955年。
などを観たが、何か目玉の展示作品が少ないような感じで若干物足りなかった。
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次いで「没後45年 榊原紫峰 知られざる花鳥画家の生涯 国展の仲間たちとともに」というタイトルの大展示室へ。
この展示室ではパンフによると、足立美術館の 90点に及ぶ紫峰コレクションの中から、初期から晩年までの名品を厳選し、さらに土田麦僊、村上華岳ら、国画創作協会の仲間たちの作品を加えた 40点を展示して、 知られざる花鳥画家の生涯に迫ります、とありました。
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榊原紫峰 明治20年(1887)~ 昭和46年(1971)
京都に生まれる。京都市立美術工芸学校などで、竹内栖鳳ら京都画壇の重鎮から薫陶を受け、文展などで若くして頭角を現す。
大正7年には土田麦僊らとともに、自由な個性の発露を目的とした国画創作協会を創設し、意欲作を発表した。
晩年は画壇から離れ高度な精神性を示した墨画を数多く遺す。生涯にわたり花鳥画を描いた。
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絵の中に野鳥や昆虫などが描かれている作品が多く、それを探すのもまた一つの楽しみでもありました。
1939年の『梅花.群禽』はメジロが数羽描かれおり、1926年の『白鷺図』は優雅に飛翔する姿が描かれていますが、西洋絵画の写実性を取り入れた本作は、紫峰の代表作の一つと云われています。
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その他、紫峰の初期から晩年に至るまでの多くの花鳥画の作品を観ることができました。
下図左の『青梅』1918年は、第一回国展に出品された紫峰 31歳の代表作で、左面にカケス、右面にスズメが描かれており、右の『鶏頭花』1967年は紫峰80歳の作で、鶏頭の花にバッタが止まり、静かな秋の光景が墨一色で描き出されています
晩年の紫峰は水墨画に新境地を拓いたとのことです。
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また、国画創作協会で互いに研鑽を積んだ仲間たちの作品も数は少ないながら展示されていました。
下左は土田麦僊(1887~1936)の『黄蜀葵』1932年、右は入江波光(1887~1948)の『獅子上尊』1939年の作。
その他、村上華岳(1888~1939)『秋景』、小野竹喬(1889~1979)『海』などがありました。
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ここで昼時となり、一階の喫茶室その名も『大観』で昼食を採ることにしました。
この喫茶室は、大きなガラス窓を通して『池庭』が眺められると云う絶好のロケーションにあり、その窓際の席に座って、水面に映える陽光など景色を賞でながら喫茶室の名物『笹巻きおこわ』を注文しました。
小ぶりの笹巻三つには、島根和牛、うなぎ、赤貝が載せられており、それぞれを美味しく戴きました。
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午後からは『新館』へ。2010年に開館四十周年を機にオープン。“ 足立美術館賞受賞作品 ” を中心に、次代を担う日本画家の優秀作をおよそ 200点を収蔵。
毎年秋には『再興院展』を開催し、宮廻正晴ら日本美術院同人の新作や院展入選作を展示しています。
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『現代日本画名品選』 では、平山郁夫の『祇園精舎』1981年や、松村公嗣の『熊野古道』2009年などを観ることができました。
『 足立美術館賞』作品としては、第21回の藁谷実「永遠の彩り」2015年(下図左)、第10回の西田俊英「観」2014年(下図右)がありました。
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その他 50 ~ 200号サイズのもので、100 ~ 150点の作品が展示されていましたが、些か疲れもあって足早に観賞し、帰りの時間も迫ったので『陶芸館』の北大路魯山人や河井寛次郎の作品はパスせざるを得ませんでした。
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10時過ぎから14時まで、見事な庭園と日本画家の作品を数多く見ることができ、足立全康氏の『日本画の美、すなわち「美の感動』に充分に接することができました。
また、小生を車椅子に乗せて観賞した妻は、さぞかし疲れたことと改めて感謝した次第。
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帰りのシャトルバスはJRの安来駅へ。駅構内といわず、駅周辺には『安来節』のマスコットや彫像などが多く見られ、思わず笑いを誘われました。
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普通電車に乗り10分で米子駅へ。ここからリムジンバスで米子鬼太郎空港へ。
空港のロビーでは、ガラス張りの壁面にその名の鬼太郎などの絵と、天井から吊り下げられたオブジェに眼を引かれました
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ほぼ満席のフライトは大半が雲の中、気流の状態も悪く、僅かに北アルプス上空で雲が切れた状態でした。
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かくして、いささか慌ただしい米子・安来紀行を無事に終えることができました。
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8.40. 弓ケ浜荘 … 米子市観光センター 9.30.(足立美術館送迎バス)→ 10.10. 足立美術館 … 観賞・昼食 …
14.00.(送迎バス)→ 14.20. 安来駅 14.50.(JR)→ 15.00.米子駅 15.20.(リムジンバス)→
15.55.米子鬼太郎空港 16.30.(ANA1090便)→ 17.50. 羽田空港着
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【参考資料】
・足立美術館 開館35周年記念 『横山大観展』カタログ 平成17年3月23日~4月10日
日本橋三越本店新館7階ギャラリー
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・没後50年『横山大観』- 新たなる伝説へ カタログ 平成20年1月23日~3月3日 新国立美術館
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【観察した野鳥】 38種
カイツブリ カンムリカイツブリ カワウ ダイサギ コサギ
アオサギ マガン コブハクチョウ ツクシガモ マガモ
カルガモ コガモ ヒドリガモ オナガガモ ハシビロガモ
ホシハジロ キンクロハジロ ミコアイサ ト ビ キ ジ
バ ン オオバン イソシギ キジバト ヒバリ
ツバメ ハクセキレイ セグロセキレイ ヒヨドリ イソヒヨドリ
ツグミ キクイタダキ シジュウカラ カワラヒワ スズメ
ムクドリ ハシボソガラス ハシブトガラス