閻魔コオロギ

歳を重ねると
私などは　不安の中で
閻魔様の　台帳に
記載されない戒名を考える

ろくでなし
サバン
悪太郎
悪魔君

変な名前と思われれば
閻魔様でさえ
名前を書き落とす

夜陰にコオロギが　枕元に出没し
雄の前翅のもとにある　発音器で
音色を奏でれば
死の前触れという　俗信が昔はあった
秋が深まり
そのコオロギが　自分の事はさておいて
冬の準備が出来ましたか？
私に　そんな言いぐさで鳴いている

コオロギは　もう縄張り鳴き
喧嘩鳴き　口説き鳴きを卒業して
私に対して　明日のことだけを考えなさい
そう警句を告げているような気がする

小さなな幸せ

空腹を満たして幸せ
ネックレスを買って貰って幸せ
優しい言葉をかけて貰い幸せ

幸せというところで
はたっと　私は振り返る

夢や希望がかなうだろうか？
でも空腹を満たしても
時間が来ると又空腹になる

夢や望みは
まるで満腹を知らない鯨みたいに
際限なく私をせき立てます

子供頃描いていた
夢や希望は年齢を重ねる毎に
纏いつくものだろうか

大きい幸せより
小さなしあわせの意味が
この頃わかりかけています