るるの日記

なんでも書きます

古事記 創世の神々 五柱の別天つ神

2020-11-21 15:33:24 | 日記
天地(あめつち)初めて発(ひら)けし時、高天原に成れる神の名は、天之御中主神(あめのみなかぬしのかみ)、次に高御産巣日神(たかみむすひのかみ)、次に神産巣日神(かむむすひのかみ)。この三柱の神はみな独(ひとり)神と成り坐(ま)して、身を隠したまひき。

次に国稚(わか)く浮べる脂の如くして、くらげなすただよへる時、葦牙(あしかび)の如く萌えあがる物に因(よ)りて成れる神の名は、宇摩志阿斯訶備比古遅神(うましあしかびひこぢのかみ)、次に天之常立神(あめのとこたちのかみ)。この二柱の神もみな独神と成り坐して身を隠したまひき。
上(かみ)の件(くだり)の五柱の神は別(こと)天つ神

【宇宙の初め、混沌としたものの中から、天と地が初めて分かれた時、高い天上の聖なる世界、高天原に成り出でた神の名は

●天地を主宰する
天之御中主神(あめのみなかぬしのかみ)
●万物を生成する霊力を持った
高御産巣日神(たかみむすひのかみ)
●同じ霊力を持った
神産巣日神(かむむすひのかみ)

この三柱の造化神は、みな配偶をもたない単独の神としてお成りになって、お姿を見せることはなかった

次に、国土がまだ形を整えていず、水に浮かんだ脂のようで、くらげのようにふわふわ漂っていた時、春の光さす水辺の葦がすくすくと芽を吹くように、混沌の中から、きざし伸びる生命体によって成った神の名は

●葦牙の生命力を持った
宇摩志阿斯訶備比古遅神(うましあしかびひこちのかみ)

●天上が恒久に存立するようにと予祝をこめた
天之常立神(あめのとこたちのかみ)

この二柱の神もまた、ともに単独神としてお成りになって、お姿を見せることはなかった。

以上の五柱の神は、天つ神の中でも特別に扱われる神である】

★高天原
天つ神の住む天上の世界

★成る
古事記に頻出する重要語
根元の生命から生り出ずる
生成発展

★天之御中主神
あめのみなかぬしのかみ
天の中央にあって天地を主宰する至上神。後続の神々の原点

★高御産巣日神
たかみむすひのかみ
タカミは美称
ムスは「こけむす・みすこ・むすめ」のムス(生)
ヒは神秘な霊力

★神産巣日神
かむむすひのかみ
カムは美称
出雲系の至上神

★宇摩志阿斯訶備比古遅神
うましあしかびひこぢのかみ
ウマシは賛美の意
ヒコは男の意
ヂは男子に対する尊称
生命力を春先の葦の芽に直観した神格
くらげ、葦牙などは海に関係が深い風物なので、海人族の伝承だろう

★天之常立神
あめのとこたちのかみ
後出の国之常立神に対応する神

古事記 元明天皇と古事記の完成 3

2020-11-21 06:21:57 | 日記
しかれども上古の時、言・意並びに朴(すなお)にして、文を敷き句を構ふること、字に於きて即ち難し。已(すで)に訓より述べたるは、詞(ことば)心におよばず、全(また)く音をもちて連ねたるは、事の趣更に長し。是(ここ)をもちて今、或は一句の中に、音訓を交へ用い、或は一事の内に、全く訓をもちて録(しる)す。即ち辞理の見えがたきは、注をもちて明にし、意況の解(さと)り易きは、更に注せず、亦(また]姓に於きて日下(にちげ)をくさかといい、名に於きて帯(たい)の字をたらしといふ、かくの如き類は、本の随に改めず。おほかた記す所は、天地(あめつち)の開けしより始めて、小治田(おはりだ)の御世におはる。故、天御中主神(あめのみなかぬしのかみ)より以下(しも)、日子波限建鵜草葺不合命(ひこなぎさたけうがやふきあへずのみこと)以前を上巻とし、神倭伊波礼毘古天皇(かむやまといはれびこのすめらみこと)より以下、品陀(ほむだ)の御世以前を中巻(なかつまき)とし、大雀皇帝(おほさざきのみかど)より以下、小治田の大宮以前を下巻(しもつまき)とし井せて三巻に録して、謹みてもちて献上す。臣安万侶、誠煌誠恐(せいくわうせいきょう)頓首々々(とんしゅ)

【しかしながら上古においては、言葉もその意味も共に飾り気がなくて、文章に書き表しますと、どういう漢字を用いたらよいか困難なことがあります

すべて訓を用いて記述しますと、字の意味と古語の意味とが一致しない場合がありますし、すべての音を用いて記述しますと文章がたいへん長くなります

それゆえここでは、ある場合は一句の中に音と訓とを混じえて用い、ある場合は一つの事柄を記すのに、すべての訓を用いて書くことにしました。言葉の意味がわかりにくいのは注を加えて明かにし、言葉の意趣がわかりやすいのには注はつけませんでした
氏においては日下をクサカとよませ、名で帯の文字をタラシとよませるなど、こうゆう類例は従来の記述に従い改めませんでした

おおむね書き記しました事柄は、天地の始まった時からして、小治田の御世(推古天皇)に終わります

天之御中主神からヒコナギサタケウガヤフキアエズノミコトまでの記事を上巻

神武天皇から応神天皇までの記事を中巻

仁徳天皇から小治田の大宮までの記事を下巻

とし合わせて三巻に著して、謹んで献上致します。臣安万侶
恐れ多くも右のとおり申し上げます
和銅五年正月二十八日】



古事記 元明天皇と古事記の完成 2

2020-11-21 05:26:17 | 日記
ここに旧辞の誤りたがへるを惜しみ、先紀の誤りまじれるを正さむとして、和銅四年九月十八日をもちて、臣安万侶(しんやすまろ)に詔(みことの)りして、稗田阿礼の誦む所の【勅語】の旧辞を撰録して献上せよといへれば、謹みて詔旨(みことのり)の随(まにま)に、子細に採りひりひつ

【ここにおいて今上陛下は、旧辞の誤り違っているのを惜しまれ、帝紀の誤り乱れていることを正そうとされて、和銅四年九月十八日に、臣安万侶に仰せつけられ、稗田阿礼が誦むところの勅命の旧辞を書物に著わして献上せよ、とおっしゃいましたので、謹んで仰せのままに事細かに採録いたしました】

★勅語
天武天皇の勅語

古事記 元明天皇と古事記の完成

2020-11-21 05:04:11 | 日記
伏しておもふに、皇帝陛下、一を得て光宅し、三に通じて亭育したまふ。紫宸(ししん)に御して徳は馬の蹄の極まる所におよび、玄こに坐して化は船の頭のおよぶ所を照したまふ。日浮かびてひかりを重ね、雲散りてけぶりに非(あら)ず。えだを連ね穂を井(あは)す瑞(しるし)史書(ふみひとしる)すことを絶たたず、烽(とぶひ)を列(つら)ね重ねる貢、府空しき月無し。名は文命よりも高く、徳は天乙(てんいつ)にも冠(まさ)りたりといひつべし。

【謹んで思いますに、今上陛下は天子としての徳を備えておられて、その徳光は天下に満ちわたり、三才に通じられて、人民を慈しみなさいます。皇居におられましても、徳は馬の蹄の走りとどまる地の果てまで及び、また船のへさきの漕ぎとどまる海原の果てまで照らしていらっしゃいます。

瑞祥が現れて、日の光は重なるようにして空に輝き、慶雲は空にたなびいていて、煙でも普通の雲のようでもありません。さらに連理の枝や一茎に多くの穂をつけた稲など瑞祥の数々が現れ史官は記録する筆を休める暇もないほどです。

一方貢使いの到着を知らせる烽火が次々にあげられ、幾度か通訳を重ねるほど遠い外国から献上された貢物は、宮廷の倉に溢れて空になる月はありません。お名前の尊さは夏の禹王よりも高く、徳の高いことは殷の湯王より優れておられます】

★皇帝陛下
元明天皇

★一
天子としての徳

★三
天・地・人

★紫辰
北極星の場所
皇居のこと

★徳は~照したまふ
延喜式祝辞によることば

★玄こ
中国の皇帝がいた石室の名
皇居のたとえ

★日浮かびて光を重ね
太陽の輝きが空に重なるように見えることで瑞祥の一。重光
瑞祥はめでたいことの前兆


★雲散りてけぶりに非ず
雲がまるで煙りのようにたなびくことで、瑞祥の一

★枝を連ね穂をあはす瑞(しるし)
別の枝がくっついて一つになったもの。連理の枝
一本の茎に穂がたくさんついた穀物を嘉禾(かか)という

★史(ふみひと)
史官
天子の言行を記録したり公文書を作る役人