故(かれ)、反(かへ)り降りて、更に天の御柱を先の如く往き廻りき、是に伊耶那岐命、先に「あなにやしえ、をとめを」と言ひ、後に妹伊耶那美命「あなにやしえ、をとこを」と言ひき
如此(かく)言ひおへて、御合(みあひ)して生める子は
■淡道之穂之狭別(あはぢのほのさわけのしま)
■伊予之二名島(いよのふたなしま)を生みき。この島は身一つにして面(おもて)四つあり。面毎に名あり
※伊予国を愛比売(えひめ)といい
※讃岐国を飯依比古(いひよりひこ)といい、
※粟国を大宣都比売(おほげつひめ)といい、
※土佐国を建依別(タケヨリワケ)という
【両神は帰り、また天の御柱を巡られた。今度は伊耶那岐命の方から先に「何とまあ、美しい娘だろう」と唱え、その後で妹の伊耶那美命が「何とまあ、素晴らしい男性でしょう」と唱えた。
このように唱え終わって結婚され、生れた最初の子は
淡道之穂之狭別島(淡路島)
次に淡路島伊予之二島(四国)を生んだ。この島は身体が一つだが、顔は四つあり、それぞれの顔に名前がついていた
■伊予国を姉姫の意で
愛比売(えひめ)
■讃岐国を食物の霊の依りつく意の飯依比古
■淡路国を穀物をつかさどるという意で大宣都比売といい
■土佐国を強健な霊の依りつくという意、建依別という】
★淡道之穂之狭別島
(あはぢのほのさわけのしま)
※阿波(徳島)に行く道にある島の義
※「別」は5~6世紀に朝廷が与えた高貴な姓
※国生みの最初にこの島をあげて重視したのは、地理上、交通上重要な位地にあることと、海産物を貢納していたこと等による
※兵庫県津名郡(淡路島)一宮町多賀には伊弉諾神宮ある
★伊予之二名島(いよのふたなのしま)
※四国のこと
※伊予を冠したのは、四国で最も重要な国であったから
※二名は各国それぞれ二つの名があるからか、男女の国が並んでいるからか?
★この島は身一つにして面四つ
島を人化している
人間も国土も根源的には動態、同質であるという思想
★伊予国を愛比売(えひめ)といい
愛媛県
※エ(兄)は年長の意。最初にうまれたので名づけた
※伊予郡松前町神埼
彦狭島命・愛比売女を祀る伊予神社がある
★讃岐国を飯依比古(いひよりひこ)
香川県
飯依(いひ)は米飯
依(より)は霊の依代
愛比売と男女一組をなす
丸亀市飯野町山根に飯依比古を祀る飯神社がある
★粟国を大宣都比売(おほげつひめ)
徳島県
粟は粟を産する国
げは食物、穀物をつかさどる女神
徳島市一宮町に大宣都比売命を祀る一宮神社がある
★土佐国を建依別(たけよりわけ)
高知県
建依別は強健な霊の依りつく男神
大宣都比売と男女一組をなす国
この神を祀る神社は県下に見当たらない