伊耶那岐命、はかせる十拳剣(とつかつるぎ)を抜きて、其の子迦具土神(かぐつちのかみ)の頚を斬りたまひき
★手俣(たなまた)より漏き出て
其の御刀(みはかし)の前(さき)につける血、ゆつ石村(いはむら)に走りつきて、成れる神は
石析神(いはさくのかみ)
根析神(ねさくのかみ)
石筒之男神(いはつつのをのかみ・三神)
御刀の本につける血も亦、ゆつ石村に走りつきて、成れる神の名は
甕速日神(みかはやひのかみ)
樋速日神(ひはやひのかみ)
建御雷之男神(たけみかづちのをのかみ)
亦の名は建布都神(たけふつのかみ)亦の名は豊布都神(とよふつのかみ・三神)
御刀の手上(たがみ)に集まれる血、手俣(たなまた)より漏(く)き出でて、成れる神の名は
闇淤加美神(くらおかみのかみ)
闇御津羽神(くらみつはのかみ)
あわせて八神(やはしちのかみ)は、御刀に因りて生まれる神なり
【伊耶那岐命は、妻を死なせたことを怒り、腰につけていた長剣を抜いて、子の火之迦具土神(ひのかぐつちのかみ)の首をはねた
すると、その剣の先についた血は聖なる岩の群れにほとばしりついて、そこに生まれた神の名は、岩根をも裂くほどの威力をもった剣の神
石析神(いわさくのかみ)
根析神(ねさくのかみ)
石筒之男神(いわつつのおのかみ・三神)
である
次は御剣の鍔(つば)についた血もまた聖なる岩の群れにほとばしりついて、そこに生まれた神の名は、勢い猛く迅速な雷の神
甕速日神(みかはやひのかみ)
樋速日神(ひはやひのかみ)
建御雷之男神(たけみかずちのおがみ)で、またの名は剣のよく切れるという意味の建布都神(たけふつのかみ)もう一つの別名は豊布都神(とよふつのかみ)
次に御剣の柄(つか)に流れ集まった血が指の間から漏れて、そこに生まれた神の名は、谷に住む水神の
闇淤加美神(くらおかみのかみ)
闇御津羽神(くらみつはのかみ)
以上八神は御剣によって生まれた神である】
★十拳剣(とつかつるぎ)
ツカはものを手で握ったときの幅
長剣
★ゆつ石村
ユツは神聖
イハムラは岩群
★石析神(いはさくのかみ)根析神(ねさくのかみ)
※両神は「岩根」の岩と根を分けてつけた神名
※岩を裂くほどの威力ある剣神。同時に雷神の性能を持つ
※雷は刀剣の霊
★石筒之男神(いはつつのをのかみ・三神)
剣の性能と関係をもつ神らしいが、名義未詳
★甕速日神(みかはやひのかみ)
樋速日神(ひはやひのかみ)
※ミカは厳
※ハヤは勢い敏速
※ヒは霊
※厳めしく、敏速な威霊をもつ神
※雷神
※樋は火の当て字
★建御雷之男神(たけみかづちのをのかみ)
別名・建布都神(たけふつのかみ)
別名・豊布都神(とよふつのかみ)
※勇猛な雷の男神
※大国主神の国譲りや、神武東征のてきにも現れる刀剣の神
※茨城県鹿島郡鹿島町の鹿島神宮は、この神を祀る
※別名フツは剣でものを切る音で、切れ味のよさを示す
※千葉県佐原市の、香取神宮は経津主命(ふつぬしのみこと)を祀るが、本質的には同じ神
下図は鹿島神宮の神宝
ふつの御霊の剣
総長270、5センチの直刀
★手俣(たなまた)より漏き出て
血が指の間から漏れるというのは、次に水神が生まれることの前兆
★闇淤加美神(くらおかみのかみ)
クラは谷
オカミは雨雪を司る水神
神体は龍蛇
★闇御津羽神(くらみつはのかみ)
ミツハは水霊
雷神、剣神と同じ霊能を持つ神
須佐之男命が退治した大蛇はその好例
★八神(やはしらのかみ)
八は聖数