答へて白(まお)さく
「僕(あ)は得白さじ
我が子八重言代主神(やへことしろぬしのかみ)、これ白すべし。しかるに【鳥遊(とりのあそび)・取魚為(すなどりす)】とて、【御大(みほ)の前(さき)】にゆきて、未だ還り来ず」とまをしき
故、天鳥船神(あめのとりふねのかみ)を遣はして、八重言代主神をめし来て、問ひ賜ひし時、其の父の大国主神に語りて言はく
「恐(かしこ)し。この国は天つ神の御子に立奉らむ」といひて、その船を踏み傾(かたぶ)けて、【天の逆手(さかて)を青柴垣(あおふしがき)に打ち成して隠りき】
★八重言代主神
(やへことしろぬしのかみ)
託宣の神
やへ→幾重にも栄える
★鳥遊(とりのあそび)・取魚為(すなどうりす)
鳥を弓で射たり、魚釣りをして遊ぶ
★御大(みほ)の前(さき)
島根県八束郡美保関町の岬
★天の逆手を青柴垣(あおふしがき)に打ち成して隠りき
※逆手→逆らう手、呪術のための拍手
※青柴垣→神籬(ひもろぎ)
神を迎える依り所
※隠りき
♦️今まで顕身(うつしみ)であった者が隠身(かくりみ)の神となって、神籬(ひもろぎ)の中に隠れた
※言代主神を祀る美保神社では、毎年四月七日「青柴垣の神事」を行っている
■これに答えて大国主神は、
「私はお答えできません。私の子・八重言代主が答えます。今あいにく、鳥狩りや魚取りをすると言って、美保は岬に行ったまま、まだ帰って来ません」と申した
それで天鳥船神をそこへ遣わし、八重言代主神を呼び寄せて、建御雷神が尋ねたところ、父の大国主神に向かって言代主神は
「恐れ多いことです。この国は天つ神の御子に差し上げましょう」
と言って、すぐさま乗ってきた船を踏み傾け、天の逆手を打って船を青葉の柴垣に変えて、その中に隠れてしまった