邇邇芸命に詔らしたて、【天の石位(いはくら)】を離れ、【天の八重たな雲】を押し分けて、【いつのちわきちわきて】、【天の浮橋】に【うきじまりそりたたして】、竺紫(つくし)の日向(ひむか)の高千穂の【くじふるたけ】に天降り坐しき
★天のはじ弓
天忍日命(あめのおしひのみこと)【天津久米命(あまつくめみこと)】の二人、【天の石靱(いはゆき)】を取り負ひ、【頭椎(くぶつち)の大刀】を取りはき、【天のはじ弓】を取り持ち、天の真鹿児矢(まかこや)を手挟み、御前に立ちて仕へ奉りき。故、其の天忍日命【(大伴連等の祖)】。天津久米命(久米直等の祖)
是れに詔りたまはく、「ここは【韓国(からくに)に向ひ】、【笠紗の御前】に真来通りて、【朝日の直刺す国】、夕日の日照る国なり。故、ここは甚吉(いとよ)き地(ところ)」と詔りたまいて、底つ石根(いはね)に宮柱ふとしり、高天原のひぎたかしりて坐しき
★天の石位(いはくら)
高天原にある神座
神霊を招き降す座のこと
岩石が多く用いられた
★天の八重たな雲
天上に幾重にもたなびいてる雲
★いつのちわきちわきて
稜威(いつ)の道別(ちわ)きに道別(ちわ)きて
いつ→威力ある
★天の浮橋
天界と下界との間にかけられた橋
★うきじまりそりたたして
うきじまり→浮島あり
そり→身をそらして、胸を張って、威勢よく
★くじふるたけ
※神秘な峰
※宮崎県西白杵郡高千穂にクジフル神社があり邇邇芸命を祀る
★天忍日命
(あめのおしひのみこと)
おし→力を持って制圧する
ひ→霊力
★天津久米命
(あまつくめのみこと)
久米部のこと
久米直は大和朝廷の中核をなす品部
★天の石靱(いはゆき)
岩のような頑丈な矢入具
★頭椎(くぶつち)の大刀
柄の上部が槌のような塊状をしている大刀
★天のはじ弓
櫨(はぜ)の木で作った弓
★大伴連
物部氏とともに、大和朝廷の軍事力をになう有力氏族。久米部、佐伯部らの兵を率いて仕えた
★韓国(からくに)に向ひ
朝鮮との交通を意識している
★笠紗の御前
鹿児島県川辺郡笠沙町の野間半島
★朝日の直刺す国
日継の御子が住むのにふさわしい、明るい表方の国を賛美した言葉
■邇邇芸命は高天原の岩の神座を離れ、天空に幾重にもたなびく雲を押し分け、威風堂々と道を押し分け押し分けして途中、天の浮橋から空に浮いてる島に威勢よくお立ちになって、そこから筑紫の日向の高千穂の霊峰に天降りなさった
その時に天忍日命・天津久米命の二人は頑丈な靱を背負い、頭椎の太刀を腰に下げ、聖なるはじ弓を持ち、聖なる真鹿児矢をたばさんで、天孫の前に立って先導申し上げた
邇邇芸命は「ここは遠くは朝鮮に面し、近くは笠沙の岬に真っ直ぐ通じて、朝日の直にさす国、夕日の照り輝く国である。だからここはまことによい土地だ」
と言われて、地底の岩盤に宮柱を太く立て、高天原に千木を高くそびえさせる壮大な宮殿を作ってお住まいになった