るるの日記

なんでも書きます

古事記 沼河比売の艶ある歌

2020-12-04 16:07:55 | 日記
ここに其の沼河日売未だ戸を開かずて、内より歌ひて日はく

八千矛の神の命、【萎草(ぬえくさ)】の女(め)にしあれば我が心
【浦渚(うらす)の鳥】ぞ今こそは
【我鳥(わどり)】にあらめ
後に【汝鳥】にあらむを
命は、【な殺せたまひそ】 いしたふや
海人馳使事の 語言も 是をば

青山に
日が隠らば
【ぬばたまの】
夜は出でなむ
朝日の笑み栄え来て
【栲綱(たくづの)】の
白き腕(ただむき)沫雪の
若やる胸を
【そだたき】
【たたきまながり】
真玉手
玉手さし枕き
【股長】に
寝(い)は寝(な)さむを
【あやに】
な恋ひ【聞こし】
八千矛の神の命
事の 語言も是をば

とうたひき。故、其の夜は合はずて、明日(くるつひ)の夜
御合為(みあひし)たまひき

★萎草(ぬえくさ)
なよなよした草

★浦渚(うらす)の鳥
入り江の州にいる鳥

★我鳥(わどり)
自分の思うままに、自由に振る舞う鳥★汝鳥(などり)
あなたの思いのままになる鳥
自分の身の上を鳥にたとえた

★な殺(し)せたまひそ
死なす、殺す

★ぬばたまの
夜の枕詞
アヤメ科檜扇の種子
黒色

★栲綱(たくづの)
白の枕詞
たく→こうぞの樹皮から取った繊維
白くさらしてある
づの→網

★腕(ただむき)
肘から手首までの部分
2つ向き合っていることから命名
沼河比売の腕

★そだたき
抱く

★たたきまながり
抱いた手を背中まで回す

★股長
のびのびと足を伸ばす

★あやに
むしょうに、むやみに
驚嘆を表す

★聞こし
、、、してくださる

■沼河比売は、それでも戸をあけないで家の中から

八千矛の神様よ、萎草(ぬえくさ)の女ですから、私の心は浦須の鳥のように、いつも相手の方を求めております。今は気ままにふるまっておりますが、後にはあなたの心のままになるでしょうから、この鳥をぶち殺しなどしないでください
海人の使い走りよ。語言として、このことを申し上げます

緑濃い山に日が隠れたなら、夜に入らしてください。その時あなたは、朝日のように満面ににこやかな笑みをたたえておいでになり、白い私の腕を、若々しく柔らかな胸を抱いて、その手を背中まで回し、また私の玉のように美しい手、その手を枕にして、脚をのびのびと伸ばして、おやすみになってください。むやみに恋に焦がれなさいますな。八千矛の神様よ
語言として、このことを申し上げます

と歌った
それでその夜は結婚しないで
翌日の夜に結婚された





古事記 大国主神 求婚 の歌

2020-12-04 15:12:03 | 日記
八千矛の、神の命は、
【八島国】【妻枕(つまま)】きかねて、遠遠し高志国に賢(さか)し女(め)を有りと聞かして、
【麗(くは)し女】を有りと聞こして、【さ婚(よば)ひ】に
あり立たし、婚(よば)ひに、あり通(かよ)はせ、大刀が緒も、未(いま)だ解かずて
【襲(おすひ)】をも未だ解かね、嬢子(おとめ)の、寝(な)すや
板戸を【押そぶらひ】、【我が】立たせれば、引こづらひ】我が立たせれば青山に鵺(ぬえ)】なきぬさ野つ鳥】、【雉(きぎし)】はとよむ、【庭つ鳥】、【鶏(かけ)】は鳴く、【心痛(うれた)く】も鳴くなる鳥か、この鳥も、打ち止(や)めこせね、いしたふや、
【海人馳使(あまはさづかひ)】【事の語言(かたりごと)も是をば】

とうたひたまひき。

★八島国
多くの島がある国、日本国のこと

★妻枕(つまま)き
まき→枕にする
妻として抱く

★麗(くは)し女(め)
細やかにうるわしい女

★さ婚(よば)ひに
さ→接続語
よばひ→求婚

★襲(おすひ)
衣服の上に、さらに頭からかぶる衣服。男女共用

★押そぶらひ
幾度も押して揺する

★我が
ここから一人称に転換

★引こづらひ
強く引く

★鵺(ぬえ)
虎鶫(とらつぐみ)の異名
気味の悪い、哀調をおびた声で鳴く

★さ野つ鳥
野にいる鳥

★雉(きぎし)
キジの古名

★庭つ鳥
庭にいる鳥

★鶏(かけ)
鶏(にわとり)の古名

★心痛く(うれた)く
いまいましい、腹立たしい

★海人馳使(あまはせづかひ)
海人部(あまべ)出身の走り使いをする者。八千矛神の従者

★事の~
はやしことば

■八千矛の神様は広い日本の中に、一人の妻をも手に入れることができなくて、遠い遠い越国にしっかりした賢い女がいると聞いて、細やかで美しい女がいると聞いて求婚に出かけて、求婚を通い続け

太刀の緒もまだ解かないで、襲(おすい)もまだ脱がないでいるのに、乙女の寝ている家の板戸を何度も押し揺さぶって私が立っていると、何度も引っ張って私が立っていると、緑濃い山ではもう鵺が鳴いてしまった。野の鳥雉も鳴き、鶏の鳥鶏も夜明けを告げて鳴いている。

いまいましくも鳴く鳥め。こんな鳥は、打ち殺して鳴くのをやめさせてくれ。海人(あま)の走り使いよ。語り言としてこのことを申しあげます











古事記 大国主神 沼河比売に求婚するために越の国へ行く

2020-12-04 14:02:26 | 日記
此の八千矛神(やちほこのかみ)
【高志国(こしのくに)】の
【沼河比売(ぬなかはひめ)】を
婚(よば)むとして
幸行でましし時、
其の沼河比売の家に到りて
歌日(うた)ひたまはく

★高志国(こしのくに)
越国
北陸地方の総称

★沼河比売(ぬなかはひめ)
※新潟県糸魚川市田伏の奴奈川神社の祭神は奴奈川姫命
※ぬ→玉、玉を産する川
※糸魚川に近い青梅町で縄文期の翡翠の工房跡が発見されており、沼河比売は翡翠の玉作集団と関係があろう

■八千矛神(大国主神)が越国の沼河比売に求婚しようと思ってお出かけになり、沼河比売の家に到着し歌をうたった




古事記 正妻・須世理毘売を恐れた八上比売

2020-12-04 10:40:17 | 日記
其の大刀・弓を持ちて其の八十神を追ひ避(さ)りし時、坂の御尾毎に追ひ伏せ、河の瀬毎に追ひはらひて、【国を作り始めたまひき】

故、其の八上比売(やがみひめ)は先の期(ちぎり)の【如(ごと)みとあたはしつ】。故、其の八上比売をば率て来ましつれども、其の適妻(むかひめ)須世理比売を畏みて、其の生める子をば木の俣に刺し挟みて返りき。故、其の子を名づけて【木俣神(きのまたのかみ)】と云ひ、亦の名を【御井神(みいのかみ)】と謂ふ

★国を作り始めたまひき
土地を開拓し農耕生活を豊かにすることが国作りの主な内容

★如(ごと)みあたはしつ
と→門、入口
あたはしつ→与ふ
陰部

★木俣神(きのまたのかみ)
木の股に対する信仰神

★御井神(みいのかみ)
井泉の神
井泉と木の関係は深い

■大穴牟遅神はその大刀と弓で兄弟の神々を追いしりぞけた時、坂の裾ごとに追い伏せ、川の瀬ごとに追い払って、国作りを始めた

さて例の八上比売は、前の約束どおりに大国主神と結婚した。それで大国主神はその八上比売を因幡から出雲へ連れて来たが、八上比売はその正妻の須世理毘売を恐れて、生んだ子を木の股に挟んで因幡へ帰って行った。その子を名づけて木俣神(きのまたのかみ)といい、またの名を御井神(みいのかみ)という


古事記 大国主神への須佐之男命の愛

2020-12-04 10:05:50 | 日記
寝ねませる大神聞き驚きて、其の室を引きたふしたまひき。しかれども橡に結ひし髪を解かす間に、遠く逃げたまひき。

故ここに【黄泉比良坂(よもつひらさか)】に追ひ至りて遥(はろばろ)に【望(みさ)け】呼びて、大穴牟遅神に謂(の)りて日(い)ひたまはく
「其の汝が持てる生大刀・生弓矢をもちて、汝が【庶兄弟(ままあにおと)】をば【坂の御尾】に追ひ伏せ、亦河の瀬に追ひはらひて、おれ大国主神となり、亦宇都志国玉神(うつしくにたまのかみ)になりて、其の我が女(むすめ)須世理毘売を【適妻(むかひめ)】として、【宇迦の山】の山本に、【底つ石根(いはね)に宮柱ふとしり】、高天原に氷橡(ひぎ)たかしりて居(お)れ。この【奴(やっこ)】よ」とのりたまひき

★黄泉比良坂(よもつひらさか)
現し国から黄泉国に通じる坂

★望(みさ)け
遠くを見やる
み→見
さけ→放つ

★庶兄弟(ままあにおと)
異母兄弟

★坂の御尾
坂の裾の長く延びた所

★適妻(むかひめ)
正妻
適は嫡と同種

★宇迦の山
出雲大社の東北にある御崎山の別名
うか→食物・稲穀
大国主神に穀神の面があることを示す

★「底つ石根(いはね)に宮柱(みやばしら)ふとしり、高天原に氷橡(ひぎ)たかしりて居れ」
立派な社殿を造ることをいう
ふとしり→太く立てる
ひぎ→千木、社殿の屋根の両端にあり、交差して上に向けて立つ木材

★奴(やっこ)
人を卑しみののしってという語であるが、この場合は大国主神とまで成長した婿に対して慈愛と叱咤をこめる

■寝ていた須佐之男命は、驚いて目をさまし、その勢いで室屋を引き倒してしまった。しかし大神が垂木に結びつけられた髪を解く間に、大穴牟遅神は遠くに逃げた

大神は後を追って黄泉比良坂まで行ってはるか遠くを逃げていく二神を望み見て、大声をあげて大穴牟遅神に

「おまえが持っているその生大刀、生弓矢で、おまえの腹違いの兄弟を坂の裾に追い伏せ、川の瀬に追い払って、きさまは大国主神となり、また宇都志国玉神となって、わたしの娘の須世理毘売を正妻として、宇迦山の麓の地底の岩盤に宮柱を太く立て、高天原に高く千木をそびえさせる壮大な宮廷を造って住め。こいつめ」と言った