出でむ所を知らざる間に、【鼠】来て云わく
【「内はほらほら、外(と)はすぷすぷ」】
といひき。かく言ふ故にそこを踏みしかば、落ち隠り入りましし間に、火は焼け過ぎき。ここに其の鼠、其の鳴鏑(なりかぶら)を咋(く)ひ持ちて、出で来て奉りき。其の矢の羽は、其の鼠の子供皆喫(く)ひたりき
★鼠
根棲
根国と関係が深い
★ほらほら、すぶすぶ
呪語
※ほらほら
ぽっかりと穴になって、うつろな状態
※すぶすぶ
狭まって狭い状態
■出る所がわからないで困っていると、鼠が来て「内はうつろで、外は狭まっている」と言った
こう鼠が言ったので、そこを踏んだところ、空洞に落ちたのでそのまま隠れていると、その間に野火はその上を燃え過ぎていった
するとその鼠が、かの鳴鏑をくわえて出て来て大穴牟遅神に献上した。その矢の羽根は、その鼠の子供がすっかり食べてしまっていた