教(おしえ)の随(まにま)に少し行でますに、つぶさに其の言の如くなりしかば、即ち其の香木に登りて坐(いま)しき。ここに海の神の女・【豊玉毘売】の【従婢(まかたち)】、【玉器(たまもひ)】を持ちて水を酌まむとする時、井に【光(かげ)有り】。仰ぎ見れば【麗しき】壮夫(おとこ)有り。甚異奇(いとあや)しとおもひき
★豊玉毘売(とよたまひめ)
とよ→美称
たま→魂
神霊の依りつく姫
★従婢(まかたち)
貴人に仕える女
★玉器(たまもひ)
たま→美称
もひ→飲料水を入れる器
★光(かげ)有り
水などに映った姿
日の神の子孫としての光輝く姿が泉に映った
★麗(うるは)しき
整った美しさ
気高く立派な美しさ
■教えに従い少し行くと、何から何までその言葉の通りだったので、すぐにその桂の木に登って待っていた。すると海の神の娘の豊玉毘売の侍女が立派な器を持って現れ、水を汲もうとすると、泉に光輝く人の姿が映っている。驚いて上を見ると、美しい男がいるので、たいへん不思議に思った