るるの日記

なんでも書きます

古事記・須佐之男命の大蛇退治・出雲国肥河鳥上に降る

2020-12-01 15:18:55 | 日記
故、【避追(やら)はえて】、
出雲国の【肥(ひ)の河上】、
名は【鳥髪(とりかみ)】といふ地に降(くだ)りましき

この時、【箸其の河より流れ下りき】。須佐之男命、人其の河上に有りとおもほして、尋ねまぎ上りゆきたまへば、老夫(おきな)と老女(おみな)と二人在りて、童女(おとめ)を中に置きて泣けり

★避追(やら)はえて
追放

★肥の河上
肥河→今の斐伊川
船通山に源を発し宍道湖に注ぐ。かつては神西湖に注いでいた
出雲最大の「母なる川」

★鳥髪
仁多郡横田町大呂付近
古来から砂鉄の産地
須佐之男命がここに天降りしたのは、鉄の文化との関係を示す

★箸其の河より流れ下りき
流れた箸によって上流に人里があるのを知るのは、隠里神話の一類型


■須佐之男命は高天原から追放されて、出雲国の肥河の上流、鳥上という所にお降りになった

この時、その川を箸が流れ下ってきた。それを見た須佐之男命は、その上流に人が住んでいると思い、尋ね求めて上って行くと、おきなとおうな二人がいて、少女を中に置いて泣いていた



古事記 須佐之男命の追放と五穀の起源

2020-12-01 14:45:43 | 日記
是こに八百万の神、共に議(はか)りて、須佐之男命に【千位(ちくら)の置戸(おきど)】を負(おほ)せ、亦【髭を切り手足の爪をも抜かしめて】、神やらひやらひき

又【食物(をしもの)】を【大気都比売神(おほけつひめのかみ)】に乞ひたまひき。ここに大気都比売、鼻・口また尻より種々(くさぐさ)の【味物(ためつもの)】を取り出(いだ)して、種々作り具へて進(たてまつ)る時、須佐之男命、其の態(わざ)を立ち伺ひて、穢汗為(けがし)て奉進(たてまつ)ると、其の大宣津比売神(おほげつひめのかみ)を殺したまひき

故、殺さえし神の身に生れる物は、頭に蚕生り、二つの目に稲種生り、二つの耳に粟生り、鼻に小豆生り、陰に麦生り、尻に大豆生りき

故、是に【神産巣日(かむむすひ)の御祖命(みおやのみこと)】
これを取らしめて種と成したまひき


★千位(ちくら)の置戸(おきど)
くら→載せる台
おきど→置く品物
多くの台に置き並べるほどの、たくさんの贖物

★髭を切り手足の爪をも抜かしめて
髭を切り、爪を抜いたのは罪穢をあがなう体刑。祓いの一種

★食物(をしもの)
おし→食うの尊敬語

★大気都比売神
(おほけつひめのかみ)
け→食物
食物を司る女神

★味物(ためつもの)
旨い物

★神産巣日の御祖命
須佐之男命を始祖とする出雲系の神話には、神産巣日神(かむむすひ)が祖神として現れる

これは天照大御神を始祖とする天孫系神話に高御産巣日神(たかみむすひのかみ)を最高の司令神とするのと対をなす




■そこで数多の神々は共に相談して、須佐之男命にその犯した罪を償わせるため、たくさんの贖物(あがないもの)を科し、その罪を祓うため、髭を切り手足の爪をも抜かせて、高天原から追放してしまった

話は変わって、須佐之男命は食物を大宣津比売神に所望された。
そして大宣津比売が、鼻や口や尻からいろんなご馳走を取り出して、様々に料理し整え、須佐之男命に差し上げる時に、須佐之男命は、その仕業を覗き見して、食物を汚くして、自分に差し出すのだと思って即座にその大宣津比売神を殺してしまった

こうして殺された神の身体から生れた物は、頭には蚕が生まれ
二つの目には稲種が生まれ
二つの耳には粟が生まれ
鼻には小豆が生まれ
陰部には麦が生まれ
尻には大豆が生まれ
こうしたことがあり、神産巣日の母神は、これらの穀物を取って種となされた



古事記 天の岩屋戸こもり 冬至に衰えた天子の魂を復活させるための鎮魂の呪儀

2020-12-01 13:30:56 | 日記
是れに天照大御神、怪しと以為(おも)ほして、天の岩屋戸を細めに開きて内より告(の)りたまはく。
「吾が隠(こも)り坐(ま)すに因(よ)りて天の原自ら開く、亦葦原中国も皆聞からむとおもふを、何のゆえにか天宇受賣命は【楽(あそび)】をし、亦八百万の神も諸咲へる」とのりたまひき

天宇受賣命(あめのうずめのみこと)、白言(まお)さく、「汝が命に益(ま)して、貴(たふと)き神坐すが故に、歓喜(よろこ)び咲ひ楽(あそ)ぶ」とまをしき

かく言(まお)す間に、天児屋命(あめのこやねのみこと)・布刀玉命(ふとたまのみこと)、其の鏡をさし出(いだ)して、天照大御神に示(み)せ奉(まつ)る時、天照大御神【いよいよ奇(あや)し】と思ほして【稍戸】(ややと)より出でて臨み坐す時、其の隠り立てりし天手力男神(あめのたぢからをのかみ)、其の御手を取りて引き出しまつりき。即ち布刀玉命、【尻くめ縄】を其の御後方(みしりへ)に控(ひ)き度(わた)して白言(まお)さく「これより内にな還り入りましそ」とまをしき。故、天照大御神出で坐しし時、高天原も葦原中国も自ら照り明りき

★楽び
歌舞
あそぶ→祭儀、葬儀における音楽、舞踊

★いよいよ奇(あや)しき
※鏡に天照大御神自身の姿が映ったからである
※鏡は太陽の象徴で、別に日神がいるのかと不審に思ったとする説もある

★稍戸(ややと)
徐々に、そろそろと

★尻くめ縄
注連縄(しめなわ)
みだりに入ったり出たりしないように、神域に張った縄

■これを聞いて天照大御神は不思議に思い、天の岩屋戸を細目に開けて、その内から
「私がここにこもっているので、天上界は自然に暗く、また下界の葦原中国もすべて暗いだろうと思うのに、どうして天宇受賣命は歌舞をし、また多数の神々もみな笑うのだろうか」と言われた

天宇受賣命が
「あなたさまよりも立派な神がいらっしゃいますので、喜び笑って歌舞をしているのです」と言われた

こう申し上げている間に、天児屋命と布刀玉命が、榊につけた八咫鏡を差し出して、天照大御神にお見せすると、天照大御神はいよいよ不思議に思い、少しずつ戸から身をのりだして鏡に映った姿を覗き見られるその時、脇に隠れていた天手力男神が、その手をとって外へ引き出した

すぐに布刀玉命が注連縄を天照大御神の後ろに引き渡して「これから内へは戻らないでください」と言った

こうして天照大御神が天の岩屋戸からお出ましになった時、高天原も葦原中国も自然に日が照り明るくなった



古事記 天の岩屋戸こもり 祭式はじまる

2020-12-01 12:34:49 | 日記
天の香山の【五百津真賢木(いほつまさかき)】を【根こじにこじて】、上枝(ほつえ)に八尺の勾玉の五百津の御すまるの玉を取りつけ、中枝に(なかつえ)に【八尺鏡(やあたのかがみ)】を取りかけ、下枝(しもつえ)には【白丹寸手(しらにきて)・青丹寸手(あおにきて)】を取り垂(し)でて、この種々(くさぐさ)の物は、布刀玉命【ふと御幣(みてぐら)】を取り持ちて、天児屋命【ふと詔戸言(のりとこと)】はき白(まお)して、【天手力男神(あめのたぢからをのかみ)】戸のわきに隠りて立ちて、【天宇受賣命(あめのうずめのみこと)】、天の香山の天の【日影】を手次(たすき)にかけて、天の【真析(まさき)をかづら】として、天の香山の小竹葉(ささば)を【手草(たぐさ)】に結ひて、天の岩屋戸に【うけ】を伏せて踏み【とどろこし】、【神懸(かむかか)り】て、胸乳をかき出で、裳ひもを【ほと】におし垂れき。高天原、動(とよ)みて八百万の神共に咲(わら)ひき

★五百津真賢木
(いほつまさかき)
枝葉の多く繁った榊
榊は神霊の依りつく霊代の常緑樹

★根こじにこじて
根こそぎ掘り取る

★八尺鏡(やあたのかがみ)
八咫鏡
八→聖数
あた→八寸(12センチ)
八は聖数で単に大きな鏡か

★白丹寸手(しらにきて)・
青丹寸手(あおにきて)
楮(こうぞ)製の白い幣と
麻製の青い幣

★ふと御幣(みてぐら)
ふと→太で、立派さを表す美称
みてぐら→幣

★ふと詔戸言(のりとごと)
のりとごと→祝詞
祭儀で神前に奏ずる言葉
内容は天照大御神の出現を祈願したもの

★天手力男神
(あめのたぢからをのかみ)
手の力の強い男神

★天宇受賣命
(あめのうずめのみこと)
名義未詳
おすめ→強く猛き女
大嘗祭、鎮魂祭に奉仕した猿女君の祖神

【日影】
ひかげのかづら
日陰蔓
山地に自生

★真析をかづらとして
※まさきのかずら
※定家葛(ていかかずら)、蔓正木(つるまさき)の古名
※蔓の一種

★手草(たぐさ)
歌舞する時、手に持つもの

★うけ

★とどろこし
大きな音を立てさせる
とどろく

★神懸り
神霊が人に乗り移る
この忘我の状態で神託を述べるのである

★ほと
女陰の露出は邪気を祓う呪力がある


■天の香具山のよく繁った榊を根こそぎ掘り取ってきて、その上方の枝に多くの勾玉を長い緒に通した玉飾りをつけ、中程の枝に八咫鏡をかけ、下方の枝には楮の白い幣と、麻の青い幣をさげた

この様々な品は、布刀玉命が神に献上する尊い幣として捧げ持ち、その捧げ持った榊の前で天児屋命が尊い祝詞を申し上げた

天手力男神(あめのたじからおのかみ)が、天の岩屋戸の脇に隠れ立ち、天宇受賣命は天の香具山の聖なる日陰蔓をたすきにかけ、
聖なるまさきの葛を髪飾りにして、
天の香具山の笹の葉を束ねて手に持ち、
天の岩屋戸の前に桶を伏せて踏み鳴らし、
神憑りして乳を露出させ、
裳の紐を陰部までおし垂らした

すると高天原が鳴り響くほどに数多の神々がどっと笑った










古事記 天の岩屋戸こもり 八百万の神々の会議の中心は思金神

2020-12-01 10:54:22 | 日記
是をもちて八百万の神、天の安の河原に神集ひて、

【高御産巣日神 たかみむすひのかみ】の子、
【思金神 おもひかねのかみ】に思はしめて、

【常世】の【長鳴鳥】を集めて鳴かしめて、天の安河の河上の天の【堅石(かたしは)】を取り、

天の【金山】の鉄(まがね)を取りて、【鍛人天津麻羅(かぬちあまつまら)】を求(ま)ぎて、

【伊斯許理度売命 いしこりどめのみこと】に【科(おほ)せて】鏡を作らしめ、

【玉祖命 たまのやのみこと】に科せて八尺(やさか)の勾玉(まがたま)の五百津(いほつ)の御すまるの珠を作らしめて、

【天児屋命 あめのこやねのみこと】
【布刀玉命 ふとたまのみこと】
を召して、【天の香山】の【真男(まお)鹿の肩】を【内抜き】に抜きて、天の香山の天の(ははか)を取りて、占合(うらな)ひ、まかなはしめて】、

★高御産巣日神
(たかみむすひのかみ)
高天原の至上神

★思金神
(おもひかねのかみ)
多くの思慮を兼ね備えた神

★常世
永遠の国
現世に幸福をもたらす理想郷
後には海の彼方にある異郷とした

★長鳴鳥
声を長くひいて鳴く鳥
鳴き声は陽光を招き邪気を祓う

★堅石(かたしは)
堅い岩石
鉄を鍛えるための鉄敷に用いた

★金山
鉱山から採鉱して鉄器を作ったのは弥生中期以後

★鍛人天津麻羅
(かぬちあまつまら)
かぬち→鍛冶職、かなうち
まら→鍛冶職の通称

★伊斯許理度売命
(いしこりどめのみこと)
こり→凝結
どめ→老女
石型に溶鉄を流し固まらせて鏡をつくる老女

★科(おほ)せて
言いつけるの尊敬語

★玉祖命
(たまのやのみこと)
玉造部の祖神

★天児屋命
(あめのこやねのみこと)
名義未詳
中臣氏の祖神

★布刀玉命
(ふとたまのみこと)
ふとたま→祭祀用の勾玉類
斎部氏の祖神

★天の香山
大和三山の一つ
神祭の行われた聖山
これが天上界に投影された

★真男鹿の肩
雄鹿の肩の骨

★内抜(うつぬ)き
丸抜きにする
うつ→全く

★ははか
朱桜(かにわざくら)の古名
この木の皮で、鹿の肩の骨を焼き、そのひび割れで吉凶を占う

★まかなはしめて
まかな→準備をする
あらかじめ整える


■この有様を見て数多(あまた)の神々は、天の安河の河原に集まって、高御産巣日神(たかみむすひのかみ)の子の思金神(おもいかねのかみ)に以下のような善後策を考えさせた

まず常世国の長鳴鳥を集めて鳴かせ
天の安河の川上にある堅い石を取り
鉱山の鉄を取り
鍛冶の天津麻羅を捜し出し
伊斯許理度売命に仰せつけて
この二人に鏡を作らせた

玉祖命(たまのやのみこと)に仰せつけて
多くの勾玉を長い緒に貫き通した玉飾りを作らせた

天児屋命(あめのこやねのみこと)と布刀玉命(ふとたまのみこと)を呼んで
天の香久山の雄鹿の肩の骨を、そっくり抜き取って、天の香久山の朱桜(かにわざくら)を取って、それで鹿の肩の骨を焼いて占わせ、それによって次の祭式を準備させた