Sbagliando si impara. (間違うことで人は学ぶ。)

イタリア語の勉強に、nonna ひとりでフィレンツェへ。自分のための記録。

「クララとお日さま」

2021年05月02日 | 読書
発売日(3月15日)から意外に早く図書館で予約(4月4日)出来ました。
ホームページで何回かチェックを入れて待っていました、予約人数は3人。
     
AIのクララと病弱な少女ジョジーを中心にした物語。
クララはRPOビル近くのお店で、子どものAF(artificial friendの略? :人工親友)
として売られています。
B2型の第三世代とか最新のB3型とかまるでモバイルのよう。
AFにはそれぞれに名前がついてます。しかも、どれも独自の個性を持っていて、
その中でもどのAFよりも観察力に優れ、学習意欲があることで、
より精緻な理解力を持つようになったB2型第四世代のクララ

クララは、お日さまを信頼し、神さまのように思っています、いつもお日さまの
光線を求め、ジョジーへの救いを願っています。
また、クララのジョジーへの献身ぶりは「日の名残り」の執事を思い出します。

この作品はAFとHF(human friend;勝手につけました)の友情物語だけでなく、未来を
予測させるミステリー・ストーリーのようでもありました。 
当然、舞台はイギリスと決めつけていましたが、「イギリスでは・・」とか 
「イギリス訛り」とかーーどうも「イギリス」ではないようです 。どこかしら?

「向上処置」とか「置き換え」という謎の言葉もーーー遺伝子操作のこと? 
処置を受けた子と受けない子とでは、その後の人生にも関わってくるようで、
AIのバージョンの格差と同じようだなと。
また、ジョジーが病弱なのは、その「向上処置」による副作用のようです。
彼女の姉もその事で亡くなったようで・・、ジョジーの 母親がクララを買った
本当の目的が小説の後半で見えてきました。そこには「わたしを離さないで」に
通じるものを感じました。

クララの意識に関係なく、時々対象物が幾つかのボックスに分割され、不気味に 
映るときがあり、何なの?故障? と私までパニックに陥りそうでした。
 クララが「混乱と不安」に陥ったときに分割されるようで、
AIでありながら感情をも学習したのでしょう。
また、B2型は臭覚はありませんが、外気や風を肌に感じることが出来るようです。
B3型は改良されて臭覚もあります。驚きです!

第6部ではジョジー家族に必要とされなくなったクララに対して、
私は心が裂けるような切ない思いで読み終えました。

動くことの出来なくなったクララは廃棄物置場の固い地面に座って、
ジョジーたちの記憶を辿って彼女たちが幸せだったかを確認しています。

「クララとお日さま」に助けられたジョジーもAFの彼女を懐かしく思い起こして
いるでしょうか。それとも、クララは製品の一つに過ぎなかったのでしょうか?

*原題は「Klara and the Sun」
マンドリン・アンサンブルの「クラーラ・マンドリーノ(Klara mandolino)」が
浮かんできました。
以前、クラブに入会した当時、「クラーラ」の名前の由来を尋ねたことを
思い出し、その「Klara」と同じではとーーー当時の団長だったMs.ATUKOさん
から、”澄んだきれいな音で奏でること”をモットーに、「エスペラント語
(昔々話題となった世界共通語)」から「澄み切った」という意味の「Klara」
団名に付けたと聞きました。
AIのクララも本当に「優しく澄んだ心を持ったAF」でした。

カズオ・イシグロもエスペラント語から「Klara」と名付けたのでしょうか。