日本人としてのアレ。

通りすがりで会ったなら、その出会いを大切にしたい

『寂しさが、いつか愛に変わる』

2012-03-02 | その他
僕が毎日の様に行くコンビニ、サンクス。

顔は、確実に覚えられているだろう。

無論、僕も店員の顔を覚えている。

そんなコンビニで、僕はジャンボフランクを買った。

袋に詰めてもらわず、そのまま。

自分の車の中が肉臭くなるのが厭なので、外で食べる。

食欲をそそる赤と黄色の色彩を、ジャンボフランクに乗せた。

そして、僕はジャンボフランクと一体化していく。

ジャンボフランクを食べて、もうワンランク高みの存在へと昇天していくのだ。

最後の一口を、頷く様に飲み込んだ。

一人残された串を眺める。

今まで、「肉」と言う、普遍的に愛される者に包まれていた、串。

その串が一人になると、僕は、ゴミ箱に捨ててあげないとな、と言う気分になった。

確か右足からだったと思う、ゴミ箱に向かったのは。

ゴミ箱に向かって、左足でしっかりと地面を掴んだ瞬間

思いがけない光景を目にした。

なんとゴミ箱の前に、別の串が一人寂しく、横たわっていたのだ。

どうやら、その串は僕が持っている串と同類で、全盛期は肉に包まれたジャンボフランクの一員だったのだと思う。

僕はここで、とんでもない事に気付いてしまった。

たとえ僕が、しっかりと僕の串を弔ってゴミ箱に見送ったとしても、店員からしたら、この一人寂しく横たわっている串こそが、僕のジャンボフランクの串だという疑いをかけるかも知れない。

それは僕には耐えられない。

かと言って、誰が食べたか分らない串を拾い上げる気にもなれない。

今にも、店内に戻って、ここに捨てられているのは僕のじゃありません、と言ってしまいそうだ。

しかし、それこそ妖しい。

迷った挙句、僕はとんでもない行動に出たのだ。

天まで登るほど右足を後ろに振り、地面を滑らせるようにして、その串にトーキックを浴びせたのだ。

その串は、僕に蹴られ、驚きながら、そのサンクスの敷地内から、弾き出された。

これで安心、僕は善良なお客様だ、と思っていたのも束の間。

自分の過ちにすぐ気付いた。

なんの解決にもなっていない事に。

僕は、自分が人から良く思われたいと言うエゴの為に、「串の被害」を拡大させた。

何の罪もない、道路に。

あの時、見覚えのない串が飛んできた道路は、どう思っただろう。

道路は何も思わなかったのだろうか?

そこに飛ばされた串は、何を思っていただろうか?

串は何も思わなかったのだろうか?

道路や、串、今パソコンの周りにある物や、あなたが眺めている携帯電話、世の中の森羅万象の「想い」を決めるのは自分。

知っているのに、知らないふりをした僕。

それなのに僕が蹴飛ばしたあの串は、誰からも愛されることなく、肉と一緒に過ごした時間を胸に抱いて、東京と言う街を許してくれた。
コメント
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