三浦俊彦@goo@anthropicworld

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2007/7/17

2000-01-06 00:40:25 | こんにちの文化
 ■ローザス ファーズ・ザ・フィルム
     ROSAS FASE THE FILM

ベルギーのダンス集団、ローザスによる「アート・ドキュメンタリー」フィルム。

2002年 ベルギー
監督:ティエリー・ドゥ・メイ Thierry De Mey
振付、ダンス:アンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケル Anne Teresa De Keesmaeker
ダンス:ミシェル・アンヌ・ドゥ・メイ Michele Anee De Mey(監督の妹)
音楽:スティーブ・ライヒ Steve Reich

Piano Phase (1967) 2台のピアノ
Come Out (1966)  テープ音楽(ニューヨーク・マンハッタンのハーレムにおける暴動で殴られた黒人青年が警官に向けて発した声 "I had to, like, open the bruise up and let some of the bruise blood come out to show them" の最後の部分"come out to show them"が繰り返され、無機的な波になってゆく)
Violin Phase (1967)   2台のバイオリン
Clapping Music  (1972)   2人による拍手

 音楽の構造(反復とズレ)をそのまま(かどうか)形に表わした、肉体と影のシンクロナイズドパフォーマンス。
 舞台公演とは別個の作品を現出する、視点(カメラ位置)の絶妙な移動。

 重なる影 → 黒田パートへ
 イントロ的な(予兆的な)音楽がいつ終わるともしれず続く恐怖 → 中村パートへ

2007/7/10

2000-01-05 01:27:28 | こんにちの文化
スリー・テイルズ 1998-2002
Three Tales

音楽 スティーブ・ライヒ Steve Reich
映像 ベリル・コロット Beryl Korot

第1部 Hindenburg  1937年5月6日、ドイツの硬式飛行船・ヒンデンブルク号が大西洋横断後、アメリカニュージャージー州レイクハーストで着陸時に突如爆発、炎上した事件をテーマに。実写フィルムとラジオ放送などで構成。1998年作。
第2部 Bikini 1946年から52年にかけてマーシャル諸島のビキニ環礁で行なわれた一連の原爆実験をテーマに。記録フィルムと交信記録を再構成。2001年作。
第3部 Dolly 1996年に生まれた(発表は1997年)クローン羊ドリーと、生命科学・ロボット工学をテーマに。進化生物学者、コンピュータ科学者、ロボット研究者ら多くの科学者へのインタビューで構成。2002年作。

 科学技術に対する何らかのメッセージを伝えていることはわかるが、具体的にはわからないようになっている。政治的宣伝や宗教の説法とは違って、芸術表現とはそういうものである。芸術でしかできない作用を観賞者にもたらすのが目的だからだ。
 ただ、飛行船炎上の無残な映像や、居住地を追われる西太平洋の島民たちや、神の名の連呼、「マシーン」を連呼する(よう編集された)科学者の表情などを見て、科学技術の進歩に批判的なメッセージだろうと感じた人もいるだろう。しかし、科学技術無しではもはや現代社会は立ち行かないことは確かなので、単なる「批判」「警告」のような姿勢を読み取るだけでは十分ではない。反復を基調とするライヒの音楽に合わせて、繰り返し繰り返しじっくり考える、というスタンスが重要だろう。

 なお、一人、「ヒンデンブルク」の科学技術の失敗から、「ビキニ」の成功を経て、「ドリー」の未知(あるいは自己管理の試練)へ繋がっているのではないか、と書いた人がいますが、鋭い鑑賞眼だと思います。たしかに、そのような構成になっていましたね。科学技術も、高度なものになればなるほど、人類の自己管理能力、責任能力を試す力を持つことになるでしょう。

ここも参照↓
http://green.ap.teacup.com/miurat/1184.html

2007/7/3

1999-01-03 02:55:01 | こんにちの文化
Steve Reich 1936~

『エイト・ラインズ』Eight Lines (1983) ……『八重奏曲』Octet (1979) のアレンジ
 ジョナサン・ノット指揮 Jonathan Nott
 アンサンブル・アンテルコンタンポラン Ensemble Intercontemporain
 2000年 パリ シャトレ座でのライブ映像
 
『大アンサンブルのための音楽』 Music for a Large Ensemble(1978)
string instruments, flutes, clarinets, saxophones, trumpets, pianos, marimbas, vibraphones, xylophones and two female voices.

 ミニマルミュージックの創始者の一人、スティーブ・ライヒのアンサンブル曲をまず聴いて、次回のビデオ作品『スリーテイルズ』の導入としました。

 ミニマルミュージックは、6/19に聴いたイーノの環境音楽のモデルとなった潮流であり、無機的な反復が延々と続いて唐突に終わる「無構造な」作りは、一見、メッセージを含んでいないように聞こえる。
 メッセージ     ←→  スタイル
(構造、情報、意味)   (文体、雰囲気)
 
 デザイン      ←→  パフォーマンス
(設計、知的構成)     (実演、身体的表出)

このペアにおける右の項のみ突出させる「無構造的」な響きの中に、高次のメッセージ(メタ・メッセージ、つまりメッセージについてのメッセージ)が宿っている。「メッセージ中心、デザイン本位の作品ばかりでいいのですか?」と。
 メッセージを隠してスタイルの遊び部分で勝負していた『ひなぎく』(前回鑑賞)と通ずるものがある。

2007/6/26

1999-01-02 02:56:23 | こんにちの文化
■ひなぎく Sedmikrasky 1966年 チェコスロバキア
 監督: Vera Chytilov ヴェラ・ヒティロヴァ 1929~

 場面や音が唐突に変化したり、ことさらにスタイリッシュな映像処理がなされたり、モノクロとカラーのシーンが入り乱れたりと、シンボリックなコラージュ表現に終始することで、間接的メッセージが含まれていることを半ば直接的に露呈している。いわゆる確信犯的な映画である。冷たい政治機構を象徴する歯車や、冒頭と末尾の戦闘シーンが、政治的メッセージの存在を念押し的駄目押し的に強調して、ストーリーも有意味な会話もない映画そのものとの表面的矛盾を際立たせている。

 二人の援交少女のメチャクチャな破壊的行動は、エネルギーのみありあまって目標を見失った当時の東欧の自由化運動を風刺しているようにも感じられる。体制批判というより、反体制的運動の無定見に女性監督ヴェラ・ヒティロヴァは苛立っているかのようだ。

 『ひなぎく』以降、「ダメ女二人組」を主人公にした映画がいくつか作られており(『テルマ&ルイーズ』『ゴーストワールド』など)、その系統の原型とも言える。中でも、ピーター・ジャクソン監督の『乙女の祈り』(1994年,ニュージーランド)は実話にもとづいたリアリズムが『ひなぎく』とは対照的だが、夢と現実が交差するような表現法は相通じるものがあり、社会派女の子映画として比較鑑賞の価値はあろう。

 参考までに、他の文脈でのこの映画の解説は
 http://green.ap.teacup.com/miurat/479.html
 授業・研究等とは関係のない暫定的個人的メモは
 http://green.ap.teacup.com/miurat/541.html