■エイリアン・ビギンズ■ 前半はわりとしっかりしていたような。B級の正道のムード芬々。囚人の脱走場面のお約束ぶりに微妙に白けながらも無人の街に入ったところは「よし」とわくわくモードに切り替えたんだが。閉鎖空間パートになってからたたたたたっと猫背で走るエイリアンの全身が遠目に露出するにいたって、ボルテージ急落しちまいました。牙だけ・脚だけ・触手だけって、いつもいつも全身見せてくれんたぁケチんぼだなあと耐えまくってたところへいきなりあのヘタレな全身ですから。しかも複数回。勘弁してほしいよ。怪我人混じりの生身グループですら脱出できたあそこをアバウトな爆撃で一見落着気取りはないんじゃないのと。だいたいすぐ後ろを一匹追ってきてたはずなのにいつのまにどこいっちゃったのと。そもそもパラサイトやりかけたくせに中途半端もいいとこ、誰がエイリアンなんだ?式お定まりのサスペンス設定すら皆無で終わっちゃうとはどういうことだと。まあツッコミどころ無際限の駄作ですが、エンドロールの最中に再びデンパ男がテレビ画面でインタビュー受けてて、ああいうアホの言うことが案外正しいのかもよ、ってロクデモ教訓で締めくくってる厚かましさ加減にちょびっと好感持ちました。
■悪魔の受胎■ しかし土偶型エイリアンかよ。やるねえ。目の付け所がいいんだか悪いんだか。ていうかこの映画、ムードだけ採点すれば堂々A級映画だと思うんですよね。中途半端な人格変容というのが同僚たちもついほだされたりして却って怖かったり。ところがいかんせん脚本がダメすぎ、セット安すぎ。パラサイトされた女が大暴れしてあっちゃこっちゃひっくり返してるのも、重機器がいかにも軽すぎ、学芸会の大道具丸出しよ。てなシーンからもわかる雑な演出が洞窟や何やらの暗い画面で誤魔化され続けてなんとかかんとかつながってって、『エイリアン』の廉価版と考えればなかなかイケるB級チョイ手前ふうなのだが、黒人隊員が最初のほうで惨殺されちゃってからは誰もが同じに見えて困りました。女隊員は何人いたんだか覚えてないけどほんと区別つきがたし。ギャーギャー悲鳴あげてはつけ込まれてるし、武器一つ使えず同士討ちやっとるしとにかく計画性ゼロ、全員行き当たりばったりに戦ってるから案の定せわしいほどバタバタ死んでいく。弾薬庫が開きっぱなしのまま小出しに中途半端な投げっこにゃ苛々しちまうし。終盤は完璧に展開読めた超ベタベタの模範演技というか、しかしいくらなんでもあんだけ腕力強かったスーパーマザーがああも初歩的な最期はないでしょうよ、重傷追わせたての男と正面対決にてコードで首締められてあっさりお陀仏だなんてさ(出産したら途端にパワー落ちた?)。とはいえ私、この作品けっこう楽しませていただきまして。あまりにお約束のストーリーすらちゃんとこなせてないドン底シナリオでも、まあまあ俳優の演技が真面目ならなんとかなっちゃうという見本ですかねえ。肝心の土偶レイプシーンをもうちょいわかりやすくやってくれたらというのと、人食いゾンビ味は余計だったかなーてのと、赤ちゃんエイリアンの出番もうちょい多くてもナーてのと、まあいろいろ言いたいこと残ってますが、惑星上の孤立基地でのパニックなんて案外こんなもんかも、的な納得感も一抹漂って、まあまあ安手モンスター映画としてギリギリ合格点……いかないな、やっぱり。