三浦俊彦@goo@anthropicworld

・・・・・・・・・
オトイアワセ:
ttmiurattアットマークgmail.com

ウルトラQ:メルヘン系

2005-01-15 22:49:08 | ウルトラQ
■第12話 鳥を見た■ これ私、意外と評価低いんですよ。どうもリアリティがなくて。まあ子どもに罪はないとしても、だからそうだな、鳥が夜ごと巨大化するって設定にリアリティがないわけですな。幽霊船はまあ十分不気味だったにしても、鳥との関連が必然性感じられないし、一の谷博士が航海日誌を解読する場面など、レギュラー陣が無理して深刻ぶってる気配濃厚で。ただラルゲリュウスの巨大化場面は迫力ありましたね(『空の大怪獣ラドン』の破壊シーン流用を差し引いても)。本格怪獣映画っぽい破壊シーンから一転、ただ悠然と去ってゆくメルヘンタッチに変化する流れは、絶妙といえば絶妙かも。個人的には好きな作品じゃないけど、世評どおりホントは傑作なのかなぁ。
■第18話 虹の卵■ なんつっても野原で「金色の虹」を子どもが見上げるシーン。ウルトラQ随一のファンタジー風味を集約している。それでいてパゴスって全28話中最も怪獣らしい怪獣なんですよね。この本格怪獣メルヘンというべき異色作、ピー子の熱演+ブン太のトッピングフリークぶり(声が出ないわ鶏に変な術を使うわ)+未来都市風原発+没個性な科学者などなどが絡まる中をウランカプセルだのサザメダケの花だの小物が飛び交って内容やたら濃いですよ、この話。ミサイル運搬トラックの運転席が空なのが痛かったですけど。ところで私、最後の場面がすごく気になるんです。おばあちゃんが立って、歩いて、子どもたちの歓声、「これ、やっぱり虹の卵だったのよ」と由利子が笑顔で言ってる背後、万城目の表情がミョーに苦々しいんですね。あれ、何なんでしょうか。放射能を気にしてるんでしょうか。放射能より表情のほうが私ずっと気になってるんです。

ウルトラQ:コメディ系

2005-01-13 23:37:26 | ウルトラQ
■第6話 育てよ!カメ■ 「99センチ」という数値の根拠がどこにあるか、てのがまず、子ども的ファンタジーの恣意性を的確に表わしているような。浦島太郎役の少年はピカ一でしたね、『カネゴンの繭』のガキんちょたちの誰よりもナチュラルな存在感がある。それとあの乙姫こそ、なんつってもここのメインモンスターでしょう。笑いっぷり、地ですよね? あの乙姫けっこう見た目可愛いと思うのだが、太郎サイドはどんな乙姫を期待していたんだろう。オチがまた素晴らしい。太郎がカメ育てをやめてしまったところに子ども的実利主義が見える反面、クラスじゅうの子らがこぞってカメを育てはじめてるところに子ども的軽信主義(?)が重なる。どっちがほんとの子どもらしさなんだよと。むろんどっちでもないわけだが、太郎が幻滅しきって苦々しく話す竜宮体験談が級友たちの夢想を掻き立てているところに、妙なアンバランスゾーン式リアリティが揺れている。最後も締めてくれたあの遠い合唱、タイトル何ていったっけか、小学校唱歌のノスタルジーもたまりませんよね!
■第7話 SOS富士山■ ウルトラQ:パニック/山地系参照。
■第10話 地底超特急西へ■ これは大傑作ですよ。何でみんなもっと褒めないんだろう。コメディとして隙がない。労働少年、生物学者、鞄を間違えた一平、図々しいカメラマン、確認を怠った運転士と乗務員、いい加減な司令室主任などなど、多くの筋の不注意が重なり絡まって事故が拡大するストーリーラインは、もちろん安全工学の危機管理術として本気で見る人はいないだろうけど、個別の細かいギャグを束ねる構造が文芸学的には申し分なし。これはもっと高く評価されるべき作品だ。いなずま号の音楽最高。それにしても、駅構内で靴磨きする子どもなんて、制作時つまり1965年当時に実在しちゃいませんよね? 「当時の世相が偲ばれる」的なしたり顔のコメントしてる人がいたけど。終戦直後はいざ知らずねえ。うまくできたフィクションだってことですよ。
■第14話 東京氷河期■ ウルトラQ:パニック/都会系参照。
■第15話 カネゴンの繭■ 本作の真打ちモンスターは、金男の母親と巫女さんではないだろうかね。母親の口のひん曲げかたがきれーに斜めになってるところが見せ場。せっかくそうであるならば、きゃーって悲鳴あげる銀行員のおねえさんもドギツイ怪物系を起用してほしかったような。とにかく全体のんびりした雰囲気があったかいですねえ、造成地の遊び場には土管もあるし。「おたくの息子さんじゃないですかー」と警官が駆け込んでくる場面で、金男の両親は息子のカネゴン化を警察に届けていたらしいことはわかるのだけど、それにしてはみんなに振り返られながらカネゴンが普通に道を歩いてたりしたわけで、結局何がなんだか一目「うひゃー」と驚く人あり「おじさんサンドイッチマンだろー」と突っつく子どもあり、周囲の反応が二重三重にずれまくってるところがハイパーシュールでなんとも。
■第19話 2020年の挑戦■ ウルトラQ:ホラー系参照。

ウルトラQ:ホラー系

2005-01-13 01:47:37 | ウルトラQ
 ■第5話 ペギラが来た!■ 閉鎖空間の極限状況を描いた正統ホラー。イトー隊員帰還の瞬間とか、久原隊員を襲うとことか、野村隊員の遺体発見のとことかホラー的見せ場満載。窓から見えた雪上車舞い上がりの現場が、実際は基地からかなり離れていたりと、距離的に辻褄の合いがたい部分も散見されて副隊長(?)の蜃気楼説を部分的に支持したりしているものの、いやあ、氷壁のむこうにペギラがゆっくり現われる合成画像は全28話中屈指中の屈指の名場面だ。ペギラ本格来襲のシーン、各建物が順番に吹っ飛んでゆく緊迫感もただごとではない。久原羊子隊員の行動がミステリー色を添えて、ドラマ的に完璧に近いレベルが実現した。久原羊子役の田村奈己って人、聞くところでは江戸川由利子役候補だったらしいですな。この回ではクールな言動が当たったけど、レギュラーとしてはちょっと場違いか。もうひとりの候補、『変身』のあや子役・中真千子だと逆にウェット過ぎちゃうし、全編見直すにつけ、ドライだけどクールでなく必要に応じコミカル味も出せる桜井浩子こそぴったりだったと改めて実感されるというか。かくして『ペギラが来た!』は、レギュラーの2/3が早々に臨時封印されつつ一の谷博士も名のみ言及されるという、キャラクターセッティングを逆説的に強調した巧みな作り、かつ放送順配置と言えるでしょう。
 ■第9話 クモ男爵■ 桜井浩子と若林映子の怖がり方の対照が面白すぎ。前者逆説的に反発、後者虚勢張る余裕もナシ。ただしホラーは雰囲気だけで、筋がシンプル過ぎたのがどうも。洋館にたどり着いて、大蜘蛛に襲われて逃げてきた、ってだけだもの。その大蜘蛛からして2体ともきわめて弱く、ナイフ一発、車一撃で呆気なく死んじまうし。だからこのドラマの真のオチはこうなんですよ、最後、燃え落ちる洋館を眺めながら一同ほっと息をついているところ、竹原の顔がバカーッと割れて、子蜘蛛がワシャワシャワシャーーーッ、万城目はじめみんなうわあああアっ!!! だってほら、沼に落ちて熱出してうんうん唸っていた竹原くんですよ、クモに咬まれて発熱したに違いない瀕死の竹原くんがですよ、逃げ出すときみんなと一緒に走ってちゃんと丸太を渡ってくのって、変だったでしょ? あれはクモパワーが体内で発酵していたからです。だから最後のオチは、竹原、タランチュラの群れを放出、惨死。ウルトラQは少なくとも半分は子ども向けだから自粛したんでしょうね。
 ■第19話 2020年の挑戦■ 「2020年という、未来の時間を持つ星へと送られて……」…って、意味わかりませんよね。そこがいい。あまりにテンポいいのですぃーっとかっさらわれてっちゃうのだけど、ディテールをよく考えてみるとナンセンスだらけ。こういう騙されかたこそ、アンバランスゾーンに落ちた醍醐味ってものです。私、学生にもこれ観せて強調してるんだけど、由利子が飛行場で言う「この不景気に気前のよすぎる忘れ物だわ」。このセリフ、使えるんです。何に使えるって、バブルどころじゃない、考えうるかぎり最も景気よかったはずの高度経済成長真っ只中にこういう台詞がお茶の間に自然に受け入れられていたと。むろん東京オリンピック直後は一時的な不景気もどきの揺り戻しがあったかもしれんが、「不景気だ、不景気だ」ってボヤキはいつの時代にも紋切り型に繰り返されていた、って証拠になってるんです。小泉純一郎が企業代表者らとの会合かなんかで「不況不況っていうけど、ホントなの?」ってとぼけてたらしいけど、こればかりは私も小泉さんに同感だぞ。今現在ホントに暮らしづらいと思ってるやつどんだけいるんだと。ええと話それましたが、それやこれやでこのお話、全28話中最高傑作の最有力候補たること疑いありません。万城目がはやばやと消されちゃったことによる緊迫感が最後まで持続。コミカルなスパイスも散りばめられてるし、由利子失神場面が公園噴水の銅像にかぶさるなどビジュアル処理のうまさも光るし、一平の異例の活躍もよし、シリーズ唯一の不定形液状モンスターよし、巨大化するだけしてみましたといったケムール人の脱力系の暴れっぷりもよし。まあだいたいみんな、ケムール人初登場場面で笑います。ギャグ無しなのに笑いとってる場面って、全28話中そこだけでは。だいたいホラーとコメディが融合してるって時点で最高傑作の名はほしいままですよね。
 ■第20話 海底原人ラゴン■ ウルトラQ:パニック/海・島系参照
 ■第22話 変身■ この作品、『宇宙指令M774』を下回る失敗作かも。ウルトラQマニアとしてはこういう作品の混入はツライものがある。何がダメなのだろう。うまく言えないのだがたぶん、第一にはテンポの悪さ。行ったり来たり。そのへんは『マンモスフラワー』にも共通するので、制作順初期作品はそうしたスタイル上の未調整を抱えていたということか。第二は、「熱原子X線」なる兵器(?)の意味不明さ、必然性の無さ。第三は、ただ人間が巨大化されても……『フランケンシュタイン対地底怪獣』なみの布石が打ってあればまだしも単に巨大化されてもちょっと……。第四、「愛」がテーマになっているかのようなスタンス。これ、愛がテーマなんかなってねえですよ。男があんな何十メートルにもなっちゃっちゃ、言葉も通じないときたし、愛どころか自衛隊の問題でしょと。「お願い、山へ帰って」じゃないでしょと。帰って済まないのは見ればわかるでしょと。愛なんかにかこつけないで、モルフォ蝶の不気味さで真っ向勝負してほしかったですね。痩せても枯れてもウルトラQ、沼周辺の霧だか霞だかのミステリアスな効果なんか尋常じゃなかったんだから。てわけで分類はサイコじゃなくホラー。いや、当事者がこれを「愛」の問題と勘違いしている時点でサイコっぽいとも言えるか。
 ■第25話 悪魔ッ子■ こ、これは……、全28話中最高傑作の有力候補だ、間違いなく。波止場にリリーの幽体が立ち上がり、遠い大型船の灯を背景に歩き回るシーンは、恐怖の宮内音楽最高曲も漂って、我が原体験ぶっちぎりベストワン。たまりません。これってまことにおぞましい児童虐待を描いてるんですよね。表面上の溺愛と真実の酷使との矛盾が怖ろしいわけです。幼すぎるリリーではなく魔術師のとっつァんに着目した場合のみサイコ系に分類。小杉義男演じる魔術師は全28話中最高レベルの怪人ですな。『カネゴンの繭』の巫女さんと張り合うか。オルゴールが自動的に鳴りはじめたり、トラック内で猿のおもちゃがシンバル叩いたり、細部が行き届きすぎててホントもぅ泣けるし。エンディングナーションの2バージョンでは「子どもが犯罪を犯すものでしょうか……」の方が神妙で私好きです。
 ■第28(?)話 あけてくれ!■ ウルトラQ:サイコ系参照

ウルトラQ:SF系

2005-01-12 02:11:46 | ウルトラQ
 ■第3話 宇宙からの贈りもの■ 一の谷博士の性格がこの上なく暗示された作品。最後、研究所室内で宇宙文明論のくだり。由利子が着けてるペンダントがいよいよ膨張しはじめるまで、なぜに博士は「火星怪獣の卵だ」と気づかないですか? 宇宙開発局であれほど子細にこの金玉を調べていたでしょうに。というわけで、女性の服飾なんぞにゃ全く関心ない超俗的キャラを暴露した一の谷博士でした(ちなみに『206便消滅す』では博士、会うなり由利子に「おめかしして。いい人でもお出迎えかな?」。今回の無関心ぶりをあとで由利子に責められた反省からのリップサービスと思われる。行き過ぎてセクハラへ振れた、てこたないよね)。さて肝心の火星怪獣ですが、造形は全28話中トップであるにもかかわらず、ゴジラ系の咆哮はバツ。大きさは公式設定では30mとなっているが体高は見た目7~8メートル程度か。ちょうどいい大きさで、全28話中本格モンスター映画というに最も適した傑作。謎が残ったままという展開も異例。
 ■第11話 バルンガ■ ウルトラQ:パニック/都会系参照
 ■第13話 ガラダマ■ ウルトラQ:パニック/山地系参照
 ■第16話 ガラモンの逆襲■ ウルトラQ:パニック/都会系参照
 ■第17話 1/8計画■ 第16話じゃ淳や一平らと遊星人との格闘現場にも立ち合ってたし、このあたりで由利子が過労で倒れても仕方あるまい。ちょうどよい配置の第17話。渋谷駅構内からハチ公前の映像は幻想的です。S13地区の民生委員の表情がまた幻想じゃすまない妄想的憑依すら思わせ。あと星川航空から風船に乗ってS13地区に戻るなんて素晴らしすぎる飛躍。それやこれや全体なんとも朦朧とした、ナンセンス劇寸前のふわふわした雰囲気は――夢オチをたしかに予感させつつ、かたや人口問題が切実に感じられた頃のこういうリアル&シュールな作品って、少子化時代の今となってみると二重にシュールな感じが。エンディング、全28話中最もぶっ飛んだメッセージとは裏腹の神妙話法こそ『バルンガ』と並ぶ名ナレーションと認めるべきでしょう。
 ■第19話 2020年の挑戦■ ウルトラQ:ホラー系参照
 ■第21話 宇宙指令M774■ ウルトラQ:パニック/海・島系参照
 ■第27話 206便消滅す■ 『燃えろ栄光』と並んで怪獣がただのトッピングでしかない奥床し路線。しかしだいぶ落ちるかな。超音速旅客機が異次元空間に吸い込まれる、とくればわくわくものの展開を待ち望むものだが、なんとものっぺり平板に過ぎちゃった。ゼロ戦やグラマンのミイラ操縦士あたりをもっと活用できなかったのかな。というかあの空間を歩く5人の影が背後の壁に映っていて、狭い室内で撮影してるってもろバレてるのが致命的。地上で一の谷博士が「見当がつかん」と唸り由利子が号泣して心配しているほどの異次元空間ですもの、もっとちゃんと神秘的に作ってほしかったですよ。怪獣登場時のもわもわをまとっているあたりは『ペギラが来た!』の奥行きに一瞬迫りかけたんですけどねえ。そうそうこれ、改善策はいくらでもあって、中城健が放映当時に描いた脱出時のメカとか、http://members.jcom.home.ne.jp/miurat/long-s3.htmにも私書きましたが裏ではいろいろいい設定が飛び交っていたらしいんだな。どうして採用しなかったんだろう。
 ■第28(?)話 あけてくれ!■ ウルトラQ:サイコ系参照

ウルトラQ:サイコ系

2005-01-10 22:54:08 | ウルトラQ
 ■第2話 五郎とゴロー■ 台詞を遠隔呼応させるなど、ショットの切り替えテクニックが素晴らしい。テンポもすこぶる良い。地味な作品だが制作論の観点からいうと全28話中1、2を争う出来かも。全体通して意外にも、ゴロー昏睡時に遠い山並みも同時に映ったラストシーンが最高だったりします。それよりなにより大ザルという、子ども的に最もわかりやすいクリーチャーの一方、「恋しいのは、ネオンの海を泳ぐ人魚のほうだろ」(土屋嘉男!)などという子どもには意味不明の台詞との超アンバランス。難解な一目瞭然といった、変則怪獣映画としてのウルトラQ色を最も濃厚に出してくれた一作と言えるか。しかし「オシ」なんて言葉、すっかり死語になったなあと改めて。差別語狩りってのも一定の成果を出してるってことですね。
 ■第8話 甘い蜜の恐怖■ 私らが大学院生時代くらいまではこの『甘い蜜の恐怖』は放送順第10話とされておりましてね。最近の資料で第8話と修正された模様ですな。確かでしょうな。こういうの、長年のウルトラQフリークとしてはツライものがあります。すっかり馴染んで暗記して骨肉化してた順序を変えろってんだから。新宿の次は代々木ではなく、実は新宿、原宿、渋谷、代々木、恵比寿というのが正しい順番です、なんていきなり宣告されたら山手線マニアはうろたえちゃうでしょ? 的なことはともかくこのお話もやたら地味な扱いを受けとりますが、東宝怪獣映画のオーラをまとっている点では(『空の大怪獣ラドン』の自衛隊猛攻シーン流用してるってだけじゃなく)かなり正統派ですよ。しかしなあ。ミサイルばかすか撃ち込むとこなんか過剰防衛もいいところだしなあ。福岡壊滅させたラドンやっつけるならわかるけどせいぜい牛や馬を喰っただけの大モグラ退治するのに、火山地層にぶっつけて大地震起こして熔岩流出させるなんて本末転倒というか、どう見ても大モグラより被害甚大なんですよね。家々がどんどん地中へ陥没してっちゃってるし(熔岩の映像は『日本誕生』も流用してる?)。てわけできわめてバランス感覚を欠いたこの作品(だから「アンバランスゾーンはあなたの心の中に」じゃないけど)、黒部進のウルトラQ全ゲスト中最も拙い演技も相まってこの作品の評価を下げているのかもしれん。ミステリータッチの出だしなんか良かったのにねえ。
 ■第22話 変身■ ウルトラQ:ホラー系参照
 ■第25話 悪魔ッ子■ ウルトラQ:ホラー系参照
 ■第26話 燃えろ栄光■ 終わり近くなってこんな変化球で「あれ?」と驚かすあたりがまたウルトラQのニクイところ。長いだけで露出度ゼロのダンスであるとか楽屋でのジョー×ビル大山のやりとりだとか、怪獣少年的にはほとんど興味を引かれない退屈な場面が延々と続くのだが、おとな的には大変興味深かったりする。スポ根なんだか青春ドラマなんだかサイコミステリーなんだか、ベタな口笛BGMも嬉しいし、ピーターがやっと巨大化したと思いきやジョーに誘導されて数十歩あるいてドラム缶蹴飛ばしただけという、このストイックな作りがいいんですなあ。そういえばこの作品、破れたポスターにジョーの笑顔に、終わり方のあいまいさが評価高いようだが、私も同感です。
 ■第28(?)話 あけてくれ!■ 超俗代表・友野健二と通俗代表・沢村。対照的な主人公2人のパラレルな展開が名ドラマを生んだ。それにもちろんレギュラー陣はしっかり絡む。万城目淳と江戸川由利子の関係がやたら気になる本作の出だしであるが、「きょうは帰らないわよ」ってきわどいアプローチかと思いきや「締切のないところ、借金取りのいないところ」云々と社会批判的な会話へなぜかズレてっちゃったのは――まだふたりが本格向きあうのに照れてる段階ってことですね。それにしても空飛ぶロマンスカーとは、電車好きでもあった私のウルトラ原体験でして。慄然です。ただそこよりも今見ると、会社で上司が「これでも飲んで帰りたまえ」と沢村に渡したアンプルのほうが気になってしまう。どこの何というドリンク剤だろう。やはり武田製薬? 当然もうとっくに売ってないだろうけど、あの時代だからメチルテストステロン入りだろう。高度経済成長を支えたホルモン剤。あのシーンで上司の背後に見えてる俗っぽい町並みが徐々に好きになりつつあったり。ああぁ60年代!