■グエムル 漢江の怪物■ こっ、こりゃあいいや! 絶対イイ。何がいいってそりゃもちろんあなた……、とまずはベタ褒めモードでスタートしつつ、しかし何だなあ、軍も警察も何で全然活躍せんかったかなあ。メインの家族にがんばらせたかったのはわかるけど、いくら何でもなあ。ラストあんだけ軍人ぽい人たちが警戒態勢敷いてる反米デモ(だっけか?)現場でありながら民間人4人だけで怪物退治って、そりゃないでしょうよ。ていうか全編にわたってあの怪物、なぜか徹底的に無視されてるんだよね、軍にも政府にも警察にも。ひたすらウイルス騒ぎで処理されて、怪物はあんだけ暴れてるのに空回りというか、マジメに戦ってるのはメインの家族だけ(笑。いや実際、ウイルスと怪物だったらやっぱ現実的に脅威としてはウイルスが断然上だろうけど、しかし映画としては怪物優先してくんないと……、ていうか学術的興味ってもんがないのかあんたらは!)。意図されたナンセンス味なのかただ結果的にバカ映画だっただけなのか、いまいちわからないところが微妙にイくて。しかしオヤジさんてば(最初お兄さんかと思いまひた)、あの質量で走ってきた怪物を鉄棒一本で刺し止めるってのはいくら何でもナ。(あそこは一応跳ね飛ばされとくべきだったなぁ)。それ以前にホレ、そんな復讐心に燃えて無理して追っかけまわさんでもいいでしょう、早く避難せいよ、娘も戻ってきたんだから……と思いつつ、えっと、もしかしてあの子死んだ? あ、死んだの、じゃ父親親戚一同挙げて仇討ちも当然か、と私ぁ見終えてしばらく経って気づいたんでした。すんません。リアルタイムでは、あの女の子気絶してるだけで最後てっきり生還したものとばかり。けどどうやら死んだらしいですね。といっても死を確かめてるシーンってなかったけどな、泣いてる暇あったらダメモトで応急処置しときなよって。それがなかったんで傍目にもしっかり生きてるものとばっかり。っていずれにせよ「仇討ちも当然か」じゃなくて相手はしょせん魚の突然変異体かなんかハッキリせん下等動物なんだから(といっても結構知能あるっぽかった?)そんなムキになりなさんなって。たぶんやっぱコメディだからいいってことかね。怪物大暴れから葬式場面に至る序盤からしてさかんにコメディのシグナル発してはいたものな。それにしちゃ音楽がシリアスだったけどね、ラストは。いや、ほんとのラストはあの売店の中か。いい感じだよね、「テレビつまんない」っての。あんだけの目に遭って、娘殺されて、しかし事件のことはもう考えたくない、てこともなく、いちおう銃構えてたし。最後まで中途半端なしんみり調コメディ色つくづく良いですわ。ま、あの娘が死んだならこの映画、そのぶん評価上げときましょう、だってあそこまでがんばった以上当然生き延びそうだったあの子を殺すってのはよほどの覚悟で作ってる証拠でしょ? 「葬式やった→実は生きてた→信じてもらえない→自力で脱出努力→失敗→救出」とくれば助かりますよ普通ハリウッド的には。それをあっさり殺して、代わりにあの小さい男の子が助かったあたりで効果倍増って寸法なんですな。韓国魂見せました。というわけで、最初に「こりゃあいいや。絶対イイ」て絶賛したのはなにゆえか。もちろんほら、怪物の造形ですよ! 徹底的にいいでしょうがよ、抜群っしょ! 日本製の何かのモンスターのパクリではといった非難を小耳に挟んだことがあるがそんなことどうでもよし。コウモリみたいに橋に逆さにぶら下がりイモリばりに泳ぎ、ウナギっぽくよじれ、口周辺のむわーっドロドロ牙ズラリって形もさることながら、翻って後ろ向きにカエルジャンプしたり、至近距離で撃たれて一旦気絶してはまた走り出したり、うん、冒頭の土手、大凶暴ぶりお披露目シーンにて斜面ですっ転んでたお茶目な時点でもう「こりゃあ上物モンスターだ!」恍惚レベルでしたっけがあれ以後さらにいろいろ変化してくれるとはなあ! 大口からドバドバドバーって人骨破片吐き散らしてくれた仰角アングルなんて私ゃシビレましたってば。最後まで飽きさせませんでした、怪物の動きに関するかぎり。(下水溝に人間を吐き出しては溜まったところでまた口に入れてどこぞに運び出してたらしいあれって、結局何をやってたのか、一切不明なところも五重丸でしたね)。ただ返す返すも家族がねえ。単細胞の馬鹿家族、喜劇とシリアスごたまぜの展開が……、まあこんだけ楽しませてもらったからいっか。冒頭のろくでもない薬品廃棄シーンも遡ってマル。いい加減な管理社会のいい加減な突然変異怪物対いい加減な家族のひとりよがりバトルが行き当たりばったり的に大団円突入でしたとさの巻。怪物があんだけ素晴らしいと俺もう何でも許しちゃう。劇中では怪物食ってた架空のウイルスなんかどうでもいい劇外怪物の仕上がりでした。でも韓国人ってそんなにアメリカが気になる?