三浦俊彦@goo@anthropicworld

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オトイアワセ:
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2006/4/10

2000-01-31 02:38:37 | 映示作品データ
 本番前の試写として、
 1966年放映の『ウルトラQ』全28話のNo.28「あけてくれ!」を上映してみました。
 基本的に子ども向けの1話完結シリーズで、カネゴン、ガラモン、ペギラ、ケムール人といった古典的怪獣の初登場の舞台です(『ウルトラQ』の後番組が『ウルトラマン』シリーズとなる)。高度経済成長期の日本の風景を見るのにちょうどよいテレビドラマです。
 『ウルトラQ』には『ウルトラマン』のような正義のヒーローは登場せず、この「あけてくれ!」のように明らかにターゲットを大人に絞っているエピソードもいくつか含まれています。その「手加減のない」作りが、当時小学校1年生だった私たちには奇妙な魅力を感じさせました。
 ただし、この「あけてくれ!」はとくに難解とされ、本放送時には放送されずに、翌年の再放送時に初オンエアされました。私も、小学校2年生のときに初めて観た「あけてくれ!」に「なんじゃこれ?」とびっくりしながら、怪獣の出てくる他のエピソードよりも強烈な印象が残りました。子どもにはわからないだろうというくらいの作品が、子どもに最も強いインパクトを与えるもののようです。
 「あけてくれ!」のテーマは人間蒸発。高度経済成長真っ最中の資本主義日本の、社会レベルでの急成長とは裏腹に個人レベルでの行き詰まりが露わになった頃の、社会風刺作品といえます。東京オリンピックと東海道新幹線開通の直後の日本の風景を見直すのに絶好の教材として、機会があれば『ウルトラQ』の他のエピソードも観てほしいと思います。怪獣らしい怪獣の出てこないNo.6「育てよ!カメ」No.17「1/8計画」No.25「悪魔ッ子」などがおすすめ。作品としては、No.19「2020年の挑戦」が最高かもしれません。

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2005/1/24

2000-01-30 00:26:29 | 映示作品データ
『鬼が来た!』は、明らかにコメディタッチで始まりながら、終盤は一種のホラー&シリアスドラマで幕を閉じます。このように、途中でジャンルが変わることは、ハリウッドでは、A級映画はもちろんのこと、B級映画でも歓迎されません(ノスタルジック友情サイコ映画がエイリアン侵略モノになってしまった『ドリームキャッチャー』や、都市伝説ホラーがモンスターパニックになってしまった『ジーパーズ・クリーパーズ』が不評だったのはそのためですね)。しかし、芸術的表現は必然的にジャンルの枠を踏み越えるものだということを、この『鬼が来た!』は示しているようです。マーと花屋は一時は心を通い合わせた仲であるにもかかわらず、ラストの処刑場面では、ありきたりな命乞いなど友情シーンには陥らず、淡々と刀が振り下ろされる。
 ラストだけが天然色になるのは、明らかに、「美的否定」の手法。全編カラーを使えるのにわざとモノクロとはもったいない、という気もするが、使える資源をあえて拒むのは芸術特有の逆説的戦略である。

 なお、ハリウッド映画でも、ミュージカル(とくに昔の)などには「ジャンル変更もの」でありながら評価の高い作品が見うけられます。1958年の『南太平洋』は、日本兵の動きがコミカルで、この路線で行くのかと思ったら、主人公の一人は戦死するし、意外とシリアスなドラマになってゆく。戦争を絡めた非戦争映画は、ジャンル越境的な複雑な構造を自ずと持つことになるようです。

2005/1/17

2000-01-29 03:12:40 | 映示作品データ

■THE WORLD AT WAR  ヒストリー・チャンネル 1973年:イギリス
 第22話(全26話中):JAPAN   一億玉砕・日本銃後の記録

 第二次世界大戦の主要参戦国5ヵ国(アメリカ、イギリス、ドイツ、日本、ソ連)の関係者へのインタビューと、ドキュメンタリーフィルムを組み合わせた傑作。
 10/18に観たアメリカの『汝の敵、日本を知れ』(1945)と比べると興味深い。

 ナレーションに述べられていたように、太平洋戦争は、日本が、それまで10年間も続いていた日中戦争の泥沼を打開するための賭けだったと言える。ちょうどヨーロッパで、対イギリス戦に難航していたドイツが対ソ戦争を始めたのに似ている。
 日中戦争は、第二次世界大戦の開始前から漫然と続いていたので、真珠湾攻撃後に第二次大戦に組み込まれたあとも、往々にして無視されやすい。THE WORLD AT WARでは、日中戦争と太平洋戦争の接点であるビルマ戦線(中国軍・イギリス軍・インド軍・アメリカ軍が日本軍と戦った)について第14話まるまる1回を費やして報道しており、貴重である。その他にも、緒戦の日本軍によるオーストラリア爆撃や、戦後の東南アジアで、連合軍の命令により日本軍戦車が警察代わりに治安維持を行っている光景など、珍しい映像を見ることができる。

 日中戦争については、中国の映画やドラマは概して、芸術表現よりも反日的な定型表現による政治的制作を続けてきたと言えるが、近年、かなり様子が変わってきている。
 ■『鬼が来た!』は、日中戦争を題材としながらも実質はナンセンス映画と言える作品で、政治性よりも芸術性が濃い。しかしコメディタッチがいつのまにかシリアスな惨劇へ落ち込んでゆく流れは紛れもなく戦争映画。日本軍降伏後のラストシーン(中国軍司令官の演説シーン)には、戦争の不条理を社会風刺まじえて描写したかなり戦略的な手法が使われている。

2005/1/10

2000-01-28 03:09:30 | 映示作品データ
■『鬼が来た!』   2000年 中国
           監督:姜文
           2000年カンヌ国際映画祭グランプリ受賞

 ★この映画については、主演の香川照之著のこの本がおすすめ。

香川照之『中国魅録――「鬼が来た!」撮影日記』キネマ旬報社


 ★日中戦争についての基礎知識を得るには、次の2冊がおすすめです。

森山康平『ふくろうの本 図説 日中戦争』河出書房新社
三野正洋『わかりやすい日中戦争――祖父や父たちが戦った隣国との戦争』光人社

 ★周辺事情(満州、日ソ関係を含む日中関係)については以下の3冊がおすすめ。

太平洋戦争研究会『ふくろうの本 図説 満州帝国』河出書房新社
ボリス・スラヴィンスキー『日ソ戦争への道――ノモンハンから千島占領まで』共同通信社
徐焔『一九四五年 満州進軍――日ソ戦と毛沢東の戦略』三五館


なお、この映画のプチレビューは、(ふざけた文体のように見えたら申し訳ないが)すでにここに書いておきました↓。
http://green.ap.teacup.com/miurat/536.html

2005/12/20

2000-01-27 22:48:30 | 映示作品データ

 ■ローザス ファーズ・ザ・フィルム
     ROSAS FASE THE FILM

ベルギーのダンス集団、ローザスによる「アート・ドキュメンタリー」フィルム。

2002年 ベルギー
監督:ティエリー・ドゥ・メイ Thierry De Mey
振付、ダンス:アンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケル
ダンス:ミシェル・アンヌ・ドゥ・メイ Michele Anee De Mey(監督の妹)
音楽:スティーブ・ライヒ Steve Reich

Piano Phase (1967)
Come Out (1966)
Violin Phase (1967)
Clapping Music  (1972)

 音楽の構造をそのまま形に表わした、肉体と影のシンクロに注意。ズレと反復。
 舞台公演では不可能な、視点(カメラ位置)の絶妙な移動。

 Piano Phaseは、ミニマル・ミュージック史上最初期に位置する、しかも最も有名な曲ですが、馴染みのない人のために、まずはじめに、マリンバでのスローテンポ・アレンジ版を聴いてもらい、続いて、アップテンポのオリジナル版で映像を観ていただきましょう。

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