■阿修羅城の瞳■ アカラサマCGバリバリ映像がせっかくいい味出してるってのに、音楽が盛り上げすぎて空回りムード作り出しちゃってる。だけど傑作。CGは露骨に徹して正解。アクションもレベル高くないわりには雰囲気たっぷり。ただチャンバラに終始してるのはいただけないというか、もっと超能力バトルを見せてほしかったっつのよ。当然でしょ。鬼たちが目立たなかったのも痛いな、人間が軽く扮装してる以外に見えなかった鬼たちにはトホホでしたよ。ちゃんとモンスターっぽいのが一体でも出てきてくれてたらなあ。鬼殺しのメンバーも約二人しか前景に出なかったんで、せめて鬼サイドで頑張ってくれないことには。ただのデカイ三面顔が阿修羅でございってのじゃ納得できんぞ。しかも動き回るときには巨大阿修羅もただの宮沢りえに戻るなんてさ。とかいろいろあるけど、でも傑作なんですってばよ、これ。最大要因は色彩が抜群ってこと。色彩がよければ9割方許しちゃう私は、正直言って、この映画ずっと画面から目離せませんでした。まばたきも惜しかったくらいで。見た目モンスター度の低さにイライラしラブストーリー仕立てへ流れそうになるたび落胆しかけながら、鬼火や桜花や月光の描写のなんと美しいこと。ベタな江戸情緒も嬉しい。色彩に関しちゃ満点でした。あと内容的に褒めるとすると鶴屋南北。オッサンいい味出してました。文芸の妄執はいかなるあやかしの恐怖にもまさる、ってモチーフですかね、ただし異界風バトル現場に南北師匠がいきなりまろび出てきたり、なんか勘違いしてる場面があって、「舞台じゃないんだから映画なんだから」的ズッコケも何度か痛感させていただきましたけどね。でもまあ、そうした欠点に全部目ツブって、色彩勝ちで、大筋傑作と認めたいッてのが本音です。文句ないよね。
■マリアの胃袋■ 分類しようがねえんで、ま、幽霊ってことらしいから、異形の幽霊イコール妖怪ってことでここに。えーとそこそこ面白い映画ではあったんです。ただなんというか、幽霊サイドと心中志願サイドと並行進行はいいのだけど絡みが弱すぎというか、無理というかどうもな。一年前にすっぽかされた課長を追い回すOLったらとてつもなくリアリティ薄。大竹まことはどうせマリア飼育者のポジションを継ぐんでしょって感じで見てたんだけど、それを上回るいい加減な最期だったな。マリアは従順にガン細胞食って爆発かよ。脱力してたのね、ほとほと2人ともいや3人ともあの時点では。はあ~。感情移入のフリもできない腑抜け系だわい。そいでマリアの胃袋がなんであの子に受け継がれたっぽいオチなのかね。放り出しちゃってるな、いかんよ、ナンセンス劇でもないのにこういう終わらせかたは。あと、全般、「日本人の女」にこだわってるところが妙に恥かしかったんだけど、サイパンが日本人観光客に占拠されてるっぽいとこ皮肉ってるつもりだとしても、もっと別の表現があるんでないかい。せっかく海外ロケなんだからもっと太平洋人っぽいいろんな民族出しや。とにもかくにもラストのニッポン、チャチャチャはなんのつもりでしたか? コメディにもなってなかった本編のシメとしちゃ全然意味不明なんですが。
■地獄堂霊界通信■ 水晶やら経典やら方位磁石やら数珠やら小道具そろえてだね、いい感じの森もロケ地に選んでだね、地獄堂の軒先の突風もあんだけいい感じ出しててだね、SFXもそこそこのレベルクリアしててだね、それよりなにより小学生にあんだけ体張った演技させてやね、ガラスに突っ込んだりカンフーさせたり跳んだり跳ねたり、とにかく子どもにあんだけやらせるからには全くもう、脚本きちんと作っとけっつの。とりあえず最低の脚本でしょ。クソシナリオの見本でしょ。生霊に犬神に死神に……?とりとめなく話が飛んで学芸会レベルをはるかに下回ってるでしょうが。こんな収拾つかないチンタラドラマ、ほんと熱演の子どもらが気の毒ったら。