三浦俊彦@goo@anthropicworld

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オトイアワセ:
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虚実ダブルスタンダード

2007-09-07 01:27:18 | アドホック日記
前回(5/3)以降に気づいた『のぞき学原論』レビュー等

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  ★プレス
『サイゾー』9月号 「特集 日本のタブー スカトロ座談会」(井口昇、藤田紘一郎、三浦俊彦)pp.77-9(書籍紹介p.79)
  ★ウェブ
http://blog.livedoor.jp/planet_knsd/archives/50909362.html
http://blog.livedoor.jp/usamiyasuyuki/archives/51607251.html
http://gendai-bunka.cocolog-nifty.com/blog/2007/06/post_c0cf.html
http://www.orcaland.gr.jp/~morris/nikki/tnikki.htm
http://www.dnp.co.jp/artscape/booknavi/070815-02.html
http://d.hatena.ne.jp/gaunozook/comment?date=20070828#c
http://minicarbank.blog53.fc2.com/blog-entry-559.html
  ★自己言及
 『現代思想』9月号「人間原理のパラドクス⑪」
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 ↑『サイゾー』の対談では、「ウンコの社会的地位向上」を唱える藤田先生も、井口スカトロぐちゅぐちゅAVを鑑賞したあとはメシがのどを通らなくなったとのこと、そのあたり確認させていただけたのは収穫でした(ただしその部分は活字化されていません)。

 さて、
 『のぞき学原論』では、代表的なトイレ盗撮ビデオについて、本物盗撮かラセ(ヤラセ)かを逐一判定したわけですが、あとがきで私は、次のようにフォローしておきました。

 (前略)私が「本物盗撮」と決めつけた作品も、実はよく出来たフェイクだという可能性は残っており、(中略)かりに私の目が節穴で、すべてがヤラセ映像だったとして(中略)、マジメな合法的芸術に私が犯罪盗撮のレッテルを貼ったばかりに当局の手入れを誘発した、などということが万一あれば、不本意と言わねばなりません。
 ビデオメーカーに累が及びそうになったら、「本書はドキュメント風の文芸です、フィクションみたいなもんですから」と掩護させていただきましょう。私のにわか鑑定なんぞを真に受けんでくださいと。(後略)


 これを記した背景は、次のようなことでした。本書の第4章、第5章に盗撮ビデオパッケージの写真を計80個ほど掲載しましたが、法律的にいえばこれらは「引用の必然性」が一応あるので、とくに著作権その他の問題は生じないはずでした。それでも念のため、担当編集者に、各ビデオメーカーに許可を求める手紙を送付してもらったのでした(文面等は編集者におまかせ)。
 大半のメーカーからは「許可」の返事が来たのですが(この分野の業者はどうせこのたぐいの連絡は無視するのだろう、と思っていたら、電話、書面ともに意外と丁寧な応対だったといいます)、2社(どちらも大手です)のみ、「不許可」という返事が。
 そのうちA社は、複数作品のパッケージ写真掲載を願い出ていたところ、「○○と◇◇はよいが、△△はダメ」という返事。妙に思って編集者が再度問い合わせると、著作権云々の問題ではなく、どうやら本物盗撮作品については論じられること自体がイヤだということ。「ヤラセだと書いてください」と。しかし論評については言論の自由があるので、そんなダメ出しに応じてはいられない。というわけで、A社作品については、パッケージ写真は争点になっていないと判断させていただき、すべて掲載することにしました。
 B社のほうは、A社のように率直な回答ではなく、とにかくダメだの一点張り。なので残念ながら、B社作品(本物盗撮、一作品)についてはパッケージ掲載は諦めました。ゲラには載っていたのを途中で削除するのはチョイ淋しかったですよ。(第4章でけっこう重要作品として詳論しています。さて、どの作品でしょう?)
 ともあれ、購入者に対しては「ホンモノ盗撮」をウリにしながら、司法当局を意識した世間様に対しては「ヤラセ」を装うという、本書の用語では(第5章冒頭)「虚実ダブルスタンダード」戦略がとられているのは案の定でした。『のぞき学原論』の主張が一つ確証されたというわけですね。
 さまざまな芸術的手法に違法-合法のリアルな価値座標が重なる盗撮ビデオ業界、まだ目が離せません。(『環境音楽入悶』や『サプリメント戦争』など、カタログ文芸を完成させた直後はコレクション熱が一時冷めるものなのですが、トイレ盗撮ビデオに関しては冷めている暇がない……?)

 前回予告しました『のぞき学原論』正誤表については、またまた先送りで申し訳ありませんが、次回とさせていただきます。(どのみち単なるケアレスミスの誤植だけなので)