録画してあったNHKクラシック音楽館を観た。今週はN響の第1970回演奏会(2022年11月23日、サントリーホール)だ。指揮者はレナード・スラットキン(4は尾形忠明)、は演目は、
- 「富める人とラザロ」の5つのヴァリアント(ヴォーン・ウィリアムズ作曲)
- バイオリン協奏曲 作品64(メンデルスゾーン)独奏:レイ・チェン
- 交響曲 第5番(ヴォーン・ウィリアムズ作曲)
- テューバ協奏曲(ヴォーン・ウィリアムズ) 独奏:池田幸広(2013年5月11日NHKホール)
ヴォーン・ウイリアムス(1872-1958)は全然知らない作曲家だが、番組の説明では、2022年に生誕150年を迎えたイギリス音楽を代表する作曲家だ。
交響曲5番は世界大戦のさなか1938年から1943年に作曲された。番組で指揮者のレナード・スラットキン(78)はヴォーン・ウイリアムスは戦争を見て人々が求めているのは高揚する音楽ではなく、内省し穏やかな気持ちになる音楽だ、破戒と死ではなく、平和を追求し穏やかな生活を取り戻そうというメッセージだ、特に第3楽章は素晴らしい、そして最終楽章は緩徐楽章のように穏やかに、静かに終わる、従って、聴衆から盛大な拍手は期待できない、一方、多くの指揮者は派手なエンディングを好むし聴衆も期待するが、この曲は作曲家が聴衆全体にではなく一人一人に語りかけているような感じだ、と語っている。
これは先日見たベートーベンの音楽と対極をなす発想だ。こういう音楽も必要だろうし戦時中にこういう音楽を作るというのは相当な覚悟もあったのではないか。実際に45分にわたる演奏を聴いてみて説明の通りの音楽だと思った。
さて、メンコンのソロバイオリンを務めたレイ・チェン(33)は台湾生まれ、4歳でオーストラリアに移住し、バイオリンを弾き始め、15歳でアメリカのハーディス音楽院に入学、2008年にメニューイン国際コンクールで優勝、2009年エリザベス王妃国際音楽コンクールで優勝し注目を集める若手バイオリニストだ。番組のインタビューで彼は、自分は幼い頃、バイオリンとピアノの両方を学んだが、バイオリンを選んだ、その理由は「バイオリンはピアノに比べ小さく、幼い子どもでもそれ用のバイオリンがあるがピアノは常に子どもにとって大きく怪物みたいだった、バイオリンは子どもの成長に合わせて大きさも段々大きくできるので一緒に成長している」と語っている。そして今の使用バイオリンは1714年製ストラディヴァリウスのドルフィンでこれは非常に大胆で強い性格のヴァオオリンでこれまでであった中で一番強い楽器かもしれない、自分が働きかけたことに対して全て受けて立つ、そんな感じだ、と述べている。他のバイオリンは自分がコントロールしていたがこのヴァイオリンは音に誘惑されるような感じになるので、そうならないようにしないといけない、ステージでは音楽に込められたすべの感情を聴衆に伝え共有することがバイオリニストとして大事とも述べている。
彼のヴァイオリンの演奏を見ていると一生懸命さが伝わってくる、顔に汗がにじんでいる、感情がこもっている。これからどんどん成長して行くであろう。応援したい。また、彼が台湾出身と聞いて更に応援したくなった。隣国の軍事的脅威に常にさらされている国家だからだ。東日本大震災では一番支援してくれたのは台湾だ。