偶然この映画「モリコーネ」(2022年、伊、ジュゼッペ・トルナトーレ監督)を見つけた、近くのTOHOシネマで上映中なので観に行った。シニア料金で1,200円、今日はプレミアムシートの部屋だった。このプレミアムシートは普通の部屋よりシートが大きくゆったりと座れる座席で、部屋はそれほど大きくなく人数もせいぜい50人から60人くらいか。7割方埋まっていて、大部分が女性客。開演時間ギリギリに入っていったらおばさま方からジロジロ見られて驚いた。やはり女性はモリコーネの甘い切ない音楽が好きな人が多いのか。
映画は大部分がモリコーネ(1928生れ、91)が問わず語りに話す生い立ちから晩年までの映画音楽への取組みや曲の説明などを写すもので途中で何人もの俳優、監督などの話が挿入される。全部で179分、ずっとそのスタイルで驚いた。モリコーネをあまり知らないでいきなり観たら長く感じるであろう。
私はなんと言っても「ニューシネマパラダイス」の音楽を作曲したのがモリコーネと知って「良い映画だモリコーネモリコーネの音楽もいいなー」と思うようになった。彼の音楽はしばらく聴いていなかったので忘れていたが、「荒野の用心棒」、「夕日のガンマン」などのイーストウッドの一連の西部劇の音楽も彼の作品だと聞いて改めて驚いた。その後、モリコーネの音楽を再認識させてくれたのは小泉純一郎元総理だ。小泉氏は大の音楽愛好家でクラシックだけでなく、ポップスやエルビスプレスリーファンでも有名だ。そしてモリコーネファンだという。小泉氏に私が感心したのは彼が総理時代にたまに仕事の後でオペラや歌舞伎などの文化芸術に接していることだ。今までにないタイプの総理だなと思った。その小泉氏が「音楽遍歴」(日経プレミアシリーズ)という本を書いたので早速買って読んだ。2008年のことだ。大変面白かった。本の中でモリコーネのことも熱く語っている。そして彼のお気に入りのモリコーネの曲だけを集めたCD「私の大好きなモリコーネ・ミュージック 小泉純一郎選曲チャリティーアルバム」を出したのだ。以前はこのCDをBGMで流してよく聞いた。
さて、映画「モリコーネ」であるが、いろいろ感動させられたが、その中の一つで私が「その通りだ」と思ったところがある。それは確か彼が映画ワンス・アポン・ア・タイムかミッションのために作曲した曲をクラシック音楽と同じオーケストラを使って指揮して演奏したが、その曲を聴いてクラシック音楽家から「モリコーネがクラシック音楽のまねごとをするなんて笑止だ」というような趣旨の批判を浴びるが(メモを取れないので表現は正確ではない)、後になってそれは間違えだったと謝罪するところだ。クラシック音楽に限らず、その道の専門外の人が勉強して専門家顔負けの成果を残す場合、その分野の専門家からは見下されるか無視されるか、寄ってたかって叩かれることが多いのは残念だ。映画の中でモリコーネはクラシック音楽の専門家ではないが彼の音楽を聴くと100年後はモーツアルトやベートーベンに並ぶ存在になる可能性があると言っている。
モリコーネ好きの人にはたまらない映画だろう。個人的には映画の中でもっと私の大好きなニューシネマパラダイスのことに時間を割いてほしかった。