

この学校に赴任した6月
校舎は紫陽花に彩られていた
紫陽花色の教室で
わたしは蝶のように飛び回っていた
やわらかい花びらに柔らかな雨

花びらたちはきらきらと輝いて
太陽を吸い込んではオーケストラのように呼吸した
わたしも息を弾ませて人生を語った
七月の花園のように花粉にむせ返る未来があると
そこに向かって力強く歩んでくれると信じていたから

あの新聞記事を読むまでは私には信念があった
梅雨の中でさえ紫陽花を美しく咲かせ得ると

三階の窓から眺める紫陽花はまだみずみずしくて
降り注ぐ幸せを海綿のように吸い込んでいるのに
心を閉ざしたまま散っていった あのひとひらの花弁を思って
わたしは今日も茫然と窓辺に佇んでいる

写真はシャクナゲです