花咲く丘の高校生

平成時代の高校の授業風景を紹介したり、演歌の歌詞などを英語にしてみたり。

たかすえドータの歌-10 たたくとも

2025-03-10 | 英訳更級日記の和歌
たたくとも 誰かくひなの 暮ぬるに 山路を深く たづねては来む
たたくとも たれかくいなの くれぬるに やまじをふかく たずねてはこん
『更科日記』の歌を英訳しています。『更級日記』は、ロマンチックな夢見る少女がやがて成人して子供を産み、年老いてゆくまでの「女の一生」を和歌と共に淡々と描いている菅原孝標女(すがわらのたかすえのむすめ)の自伝物語です。
 『たかすえドータの歌 1~10』では、13歳から18歳までの少女期の和歌を英訳しました。4月からも継続してブログにしていきますので、よろしくお願いいたします。
 同じ年(1025年)、私が18歳の4月の末ごろ、事情があって、また引っ越すことになった。こんどの住まいは東山である。もの淋しい夕暮れともなると、クイナがしきりになき声をたてる。なるほど、この水鳥みずとりの鳴き声は、人がこつこつと戸をたたく音に似ている。そこで一首。
  たたくとも 誰かくひなの 暮ぬるに 山路を深く たづねては来む 
 Even though a water rail is heard pecking, no one comes knocking 
on the door all the way deep into the woods at  dusk like this. 
 water railクイナ  peck(嘴で)つつく  all the wayわざわざ  dusk 黄昏時 

Even though a water rail  くいなが
Is heard pecking 嘴で叩く音が聞こえているけど
No one comes knocking on the door 誰も戸を叩いて訪ねてこないわ
At dusk like this こんな夕暮れどきに
All the way deep into the woods わざわざこんな山奥まで
    
新潟県妙高高原の「いもり池」から望む池の平カヤバ(茅場)スキー場です。            (その左隣りに細長く並んでいるのがアルペンブリックスキー場)
 どちらのスキー場もゴンドラの終点は霧雲の下にあり、林に隠れている裾野は広々としていますよ。(ゆ~)
 

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たかすえドータの歌-9 にほいくる

2025-03-06 | 英訳更級日記の和歌
にほひくる となりの風を 身にしめて ありし軒端の 梅ぞこひしき
においくる となりのかぜを みにしめて ありしのきばの うめぞこいしき
 その翌年(1023年)私が十六歳の4月真夜中に出火して、家は焼け落ちてしまった。火事のあと、私たち一家は別の家に移り住んだ。お向かいの家には、白梅や紅梅がいくつも植わっていて、つぎの年も早春には、風にのって花の香りがこちらにまで漂ってきた。するとまた、梅の老木のあった焼け落ちた家のことが、無性に思いだ出されるのだった。
にほいくる となりの風を 身にしめて ありし軒端の 梅ぞこひしき
The scent of the breeze permeating my heart from the garden next door reminds me of the dear plum blossoms that used to bloom by the eaves of my old home.
 scentント 香り   breezeリーズ そよ風  permeate~ミエイト 沁み透る   remindインド思い出させる  dearイア 愛しい 懐かしい 
 plum blossom 梅の花  bloomブルーム咲く eavesイーヴズ軒  

The scent of the breeze  そよ風の香りが    a
Pearmeating my heart from the garden next door隣家の庭から心に沁みてくる  b
Reminds me of the dear plum blossoms懐かしい梅の花を想い出させてくれる c
That used to bloom by the eaves of my old homeもとの家の軒端に咲いていた
               (和訳は、b→a→d→cの順にお読みください)
                    
  ↑積もる年月の雪に押されて枝がなびいてしまった軒端の白梅です↑
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たかすえドータのうた-8 ふえのねの

2025-03-02 | 英訳更級日記の和歌
笛の音の ただ秋風と 聞こゆるに など荻の葉の そよとこたへぬ
ふえのねの ただあきかぜと きこゆるに などおぎのはの そよとこたえぬ
7月13日(1022年、私15歳)の夜は、さやかな月夜だった。となりの家の門前に先払さきばらいのお供の声がして、牛車ぎっしゃの止まる音が聞こえた。つづいて牛車のなかから男の声で、「荻の葉・・・荻の葉・・・」と、隣の家の女の人の名を呼んだ。くりかえし呼んだが、内からは返事がない。たぶん隣の人たちは、ぐっすり眠ってるのだろう。牛車のなかの男はあきらめやものか、美しい音色の笛を吹きながら、去っていってしまった。私は、さっそく一首。

笛の音のただ秋風と聞こゆるになど荻の葉のそよとこたへぬ
Though the sound of the flute comes blowing gently like an autumn bleeze, why doesn't the leaf of silver-grass respond to it? 
soundウンド音 blow 吹く  bleezeーズそよ風  leafーフ葉  
silver-grass  respondンド応える

The sound of the flute 笛の音が
Comes blowing gently 優しく吹いてくる 
Like an autumn breeze. 秋風のように。  
Why doesn't the leaf of silver-grass どうして荻の葉は
Respond to it?  応えてあげないの?
 
寒波降雪が続いた長い2月が終わって、
ここ妙高高原にも春が来てくれそうです(ゆ~)
コメント (6)
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たかすえドータの歌-7 いづこにも

2025-02-25 | 英訳更級日記の和歌
いづこにも 劣らじものを わが宿の 世を秋はつる けしきばかりは
いづこのも おとらじものを わがやどの  よにあきはつる けしきばかりは(続千載集)
(1021年、私14歳)十月ごろになると、庭の木々がいっせいに色づいてくる。まるで輝くわたる錦のようで、その美しさはちょっと類がないくらい。それなのに、家へ訪ねてきたある人が、
「いま、ここへ来る途中、紅葉もみじの素晴らしいお屋敷がありましたよ」などと、わが庭の紅葉が目に入らないのか無視しているようなことを言うではないか。私はとっさに言い返したくなり、抗議の歌を一首。
いづこにも 劣らじものを わが宿の 世を秋はつる けしきばかりは
Though autumn leaves in my garden are more beautiful than anywhere, it is a pity you praise only those of elsewhere garden.
   praiseイズ 賞賛する  elsewhere ルスエアどこか他の場所

Though in my garden   我が家の庭では
Autumn leaves  are more beautiful 紅葉が美しいのに
Than anywhere else  どこよりも
It is a pity you praise  あなたが褒めるとは残念です
Only those of elsewhere garden 他の家の紅葉ばかりを

         ↑我が家の紅葉です↑  訪問ありました😀 
コメント (2)
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たかすえドータの歌-6 ときならず

2025-02-17 | 英訳更級日記の和歌
 時ならず 降る雪かとぞ ながめまし 花橘の香らざりせば
ときならず ふるゆきかとぞ ながめまし はなたちばなの かおらざりせば
  ー私は14歳(1021年)いまのところは、それほどキレイじゃないわよね。でも、花ざかりの年ごろになれば、顔だちももっとよくなるだろうし、髪だってずっと長くなって、チャーミングな女になるにちがいない。そう、光君ひかるぎみに愛された夕顔ゆうがおや薫大将かおるだいしょうに愛された浮舟うきふねのような女になれるってもんだわ。きっとー
わが家の軒近いところに、たちばなの木が一本ある。5月はじめのある日、庭を眺めているとたちばなの花がちょうど盛りで、その白い花びらがほろほろと散っている。そこで一首。
 時ならず 降る雪かとぞ ながめまし 花橘の 香らざりせば
I might have taken it for unseasonal snowflakes if it were not for the sweet smell from the blossoms of Hana-tachibana.
  unseasonal季節外れの  snowflake 雪片 雪のひとひら 
  take for B   ABだと思い込む if it were not for~ ~がなかったなら 

I might have taken it   私は思ったでしょう
For unseasonal snowflakes 季節外れの雪かと
If it were not for     なかったなら
The sweet smell from the blossoms  花の甘い香りが
Of Hana-tachibana    花橘の

    ↑これは雪花?↑                ご訪問ありがとうございました。
 

コメント (9)
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