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宮城県気仙沼市、太田地区にある王将飲食店街。誰が呼んだのか、ここを太田租界というらしい。港から陸に上がった海の男たちの特区、そんな位置付けの町だった。もちろん正確にいえば、ここには治外法権も行政自治権も存在しない。だから租界ではない。彼らの主戦場である大海原では板一枚下は深い海で、地獄に直結していた。その日常から解き放たれるという意味で、租界的な意味を持っていたのかもしれない。
下記リンクを参照頂ければ幸いだが、ここに初めて来たのは2017年のことだった。その時点で廃墟同然の佇まいだった。それでも営業を続けている店が2軒ほど存在していたし、実際にその店主と話をすることも出来た。それが数年前には営業を継続する店舗は消滅し、王将飲食店街の歴史は幕を閉じた。当時の写真を改めて見ると、営業していた店が存在していたことに驚きを覚える。もう解体されてしまったのか気になって、今回訪問したわけである。建物はまだ残っていた。それを幸いといえるのかは疑問だ。これ以上朽ちた姿を見るのは忍びない。もう記憶の中の租界ではなく、そこは単なる廃墟になってしまった。タイミングといい、状態といい、青森の第三振興街と同じような状況となっている。今回の訪問で最後にしようと思った。次回、記録も兼ねて撮ったカラー写真で幕を閉じようと思う。
LEICA M10 MONOCHROME / Summicron M35mm ASPH
もう坂道の段階で誰かと一緒に歩いている気がして、嗚呼期待に胸を膨らませてこの坂を登ったんだなと・・・。
息遣いの記憶は建物から消えつつあります。