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帯とけの枕草子〔百四十〕をそろしげなる物
言の戯れを知らず「言の心」を心得ないで読んでいたのは、枕草子の文の「清げな姿」のみ。「心におかしきところ」を紐解きましょう。帯はおのずから解ける。
清少納言枕草子〔百四十〕をそろしげなる物
文の清げな姿
恐ろしく感じるもの、どんぐりのいが。焼けたやま芋。水蕗のとげ。菱の葉と実の鋭さ。髪の多い男が洗って干している間。
原文
おそろしげなる物、つるばみのかさ。やけたる所。水ふゞき。ひし。かみおほかるをとこのあらひてほすほど。
心におかしきところ
おそろしく感じるもの、つる端身のかさいばり。焼かれた所。女の吹きふぶき。干死。おんな多くある男が洗って干すほと。
言の戯れと言の心
「おそろしげ…恐ろしい感じ…怖い感じ…居丈高な感じ」「つるばみのかさ…どんぐりのとげ…つる端身で威張っている…むちで嵩にかかって威圧する」「つる…蔓…弦…むち」「かさ…実…嵩…嵩に掛ったさま…威圧する勢い」「やけたる…焼けている…火事で焼かれた」「所…ところ…おにところ…山芋…ひげ根…所…地位…お方」「水…をみな…女」「ふぶき…蕗…吹ぶき…噴きに噴く…憤懣などをうそぶく…女の吹聴」「ひし…菱…葉は菱形で先端鋭く縁辺は歯型状…実は鋭い形…干死…干からび逝く」「かみ…髪…上…女」「おほかる…多くある…多情にかる」「かる…有る…狩る…猟…むさぼる」「あらひて…洗って…荒らひて」「ほす…干す…干からびる」「ほど…程…間…ほと…陰…陰部」。
恐ろしい物の名を羅列しただけの一義な文章ではない。ほんとうにおそろしい者については、そらとぼけている、「うそぶき」と聞く耳をもつ人に聞こえればよし。
「言わで思う」お人に成り代わって、ささやかな風刺、鬱憤晴らし。
伝授 清原のおうな
聞書 かき人知らず (2015・9月、改定しました)
原文は「枕草子 新 日本古典文学大系 岩波書店」による