■■■■■
帯とけの枕草子〔百四十九〕えせものの所うるをり
言の戯れを知らず「言の心」を心得ないで読んでいたのは、枕草子の文の「清げな姿」のみ。「心におかしきところ」を紐解きましょう。帯はおのずから解ける。
清少納言枕草子〔百四十九〕えせものの所うるおり
文の清げな姿
見かけだけのもが、所を得て活き活きするとき、正月の大根(年齢固めのお祝い用品)。行幸のときの姫大夫(騎乗の女官)。
御即位の御門司(三種の神器を預かる役所)。六月、十二月の末の、よおりの女蔵人(天皇のご身長など測る人)。季の御読経の威儀師、赤袈裟を着て多くの僧の名を読み上げている、袈裟も・たいそうきらきらしている。季の御読経や御仏名の御装束役の所の衆(蔵人所の六位の人々)。春日祭の近衛舎人たち(勅使のお供で春日大社へ向かう舎人達)。元三の薬子(三が日の御毒味役の童子)。卯杖の帽子(正月卯の日の贈物の飾り紙)。御前の舞の試しの夜の舞姫の御髪上する人。節会の御賄いの采女。
原文
えせものゝ所うるおり、正月のおほね。行幸のおりのひめまうち君。
御そく位のみかどつかさ。六月十二月のつごもりのよおりのくら人。きのみど経のいぎし、あかげさきてそうの名どもよみあげたる、いときらきらし。きのみど経、み仏名などの、御さうぞく所のしう。かすがまつりのこのゑとねりども。元三のくすりこ。うづえのほうし。御前のこころみの夜のみくしあげ。せちえの御まかなひのうねべ。
心におかしきところ
見かけだけのものが所を得て活気づくとき、睦ましき月人壮士のおほ根。身逝きの折りの騎乗の姫君。
御即位の御門司。六月、十二月のつごもりのよおりの女蔵人。季の御読経の威儀師、赤袈裟着て多くの僧の名を読み上げている、とっても輝いている。季の御読経、御仏名などの御装束の所の衆。春日祭の近衛舎人たち。三が日の薬子。正月卯の日の卯杖の紙帽子。御前の舞楽の試しの夜の舞姫の御髪上役の女。節会の御賄いの采女。
言の戯れと言の心
「えせもの…見かけだけのもの…普通でつまらないもの…取るに足りないもの」「正月…むつき…睦月」「月…月人壮士…男」「ね…根…おとこ」「みゆき…行幸…見逝き…身逝き」「見…覯…媾」「卯杖のほうし…卯杖の帽子…卯杖の頭つゝみたる小さき紙と〔八十三〕にあるもの」。
話の初めに「心におかしきところ」が添えてある、おとなの女のための文芸。
伝授 清原のおうな
聞書 かき人知らず (2015・9月、改定しました)
原文は、岩波書店 新 日本古典文学大系 枕草子による。