帯とけの古典文芸

和歌を中心とした日本の古典文芸の清よげな姿と心におかしきところを紐解く。深い心があれば自ずからとける。

帯とけの枕草子〔百四十九〕えせものの所うるをり

2011-08-21 06:03:16 | 古典

  



                                  帯とけの枕草子〔百四十九〕えせものの所うるをり



 言の戯れを知らず「言の心」を心得ないで読んでいたのは、枕草子の文の「清げな姿」のみ。「心におかしきところ」を紐解きましょう。帯はおのずから解ける。



 清少納言枕草子〔百四十九〕えせものの所うるおり


 文の清げな姿

 見かけだけのもが、所を得て活き活きするとき、正月の大根(年齢固めのお祝い用品)。行幸のときの姫大夫(騎乗の女官)。
 御即位の御門司(三種の神器を預かる役所)。六月、十二月の末の、よおりの女蔵人(天皇のご身長など測る人)。季の御読経の威儀師、赤袈裟を着て多くの僧の名を読み上げている、袈裟も・たいそうきらきらしている。季の御読経や御仏名の御装束役の所の衆(蔵人所の六位の人々)。春日祭の近衛舎人たち(勅使のお供で春日大社へ向かう舎人達)。元三の薬子(三が日の御毒味役の童子)。卯杖の帽子(正月卯の日の贈物の飾り紙)。御前の舞の試しの夜の舞姫の御髪上する人。節会の御賄いの采女。


 原文

 えせものゝ所うるおり、正月のおほね。行幸のおりのひめまうち君。
 御そく位のみかどつかさ。六月十二月のつごもりのよおりのくら人。きのみど経のいぎし、あかげさきてそうの名どもよみあげたる、いときらきらし。きのみど経、み仏名などの、御さうぞく所のしう。かすがまつりのこのゑとねりども。元三のくすりこ。うづえのほうし。御前のこころみの夜のみくしあげ。せちえの御まかなひのうねべ。


 心におかしきところ

見かけだけのものが所を得て活気づくとき、睦ましき月人壮士のおほ根。身逝きの折りの騎乗の姫君。

御即位の御門司。六月、十二月のつごもりのよおりの女蔵人。季の御読経の威儀師、赤袈裟着て多くの僧の名を読み上げている、とっても輝いている。季の御読経、御仏名などの御装束の所の衆。春日祭の近衛舎人たち。三が日の薬子。正月卯の日の卯杖の紙帽子。御前の舞楽の試しの夜の舞姫の御髪上役の女。節会の御賄いの采女。


 言の戯れと言の心

「えせもの…見かけだけのもの…普通でつまらないもの…取るに足りないもの」「正月…むつき…睦月」「月…月人壮士…男」「ね…根…おとこ」「みゆき…行幸…見逝き…身逝き」「見…覯…媾」「卯杖のほうし…卯杖の帽子…卯杖の頭つゝみたる小さき紙と〔八十三〕にあるもの」。



 話の初めに「心におかしきところ」が添えてある、おとなの女のための文芸。


 
 伝授 清原のおうな

聞書 かき人知らず   (2015・9月、改定しました)

 
 原文は、岩波書店 新 日本古典文学大系 枕草子による。