「図書館ドラゴンは火を吹かない」東雲佑著
物語師を目指して旅に出た少年ユカが出逢ったのは、森の中で孤独に過ごす火竜のリエッキでした。
心を通わせたふたりは一緒に旅をすることになります。
旅の中で、ユカは魔法使いとして目覚め、リエッキは魔法の力で人間の姿を得たのです。
しかし魔法使いは世間から偏見の目で見られていました。
その差別を払拭するため、ユカは物語を人々に聴かせるのです。
現在と過去を結び、喪失と再生を紡ぐ、感動のファンタジー。
呪師は呪いの力を高めるため様々に修練を重ね、
呪師としての階級を高めていく。
しかし生まれながらの魔術師の力には敵わない。
その力に憧れ、その力を持つものを嫉み妬む。
そして排除しようとする。
若い呪師「左手」はそれを苦々しく思っていて、
ある場面でそれが言葉に出てしまう。
「なぜその無様から目を逸らす!
なぜその醜悪に気付かない!
老人どもは導くことを忘れて己の席を守ることに必死で、若年はただ従うことに必死だ!
誰も、誰も省みない!
このままでは到底、我々の行き着く先には未来などあろうはずも………」
面白かった。
ユカとリエッキの絶対の愛も
ユカを育てた骨の魔法使いの愛情も
清々しく感じた一冊です。