民話 語り手と聞き手が紡ぎあげる世界

語り手のわたしと聞き手のあなたが
一緒の時間、空間を過ごす。まさに一期一会。

「よい語り手になるために」 松岡 享子

2012年05月29日 09時29分44秒 | 民話(語り)について
 よい語り手になるために   「お話を子供に」 松岡 享子

 わたしは、これまで、いくつものグループの人たちと お話の勉強をしてきました。
そして、いろんな人が、いろんな道筋を経て、語り手になっていくのをみてきました。
そして、つくづく思うことは、お話というのは、語る人の人柄だなぁ ということです。
なるほど、お話をはじめて しばらくの間は、人前であがるとか、お話がよくおぼえられないとか、
いわば 技術的困難とでもいうようなものにぶつかって、悪戦苦闘される方が目立ちます。
けれども、それは最初のうちだけで、時がたてば、ほとんどの人が、そういう困難は乗りこえてしまいます。
そして、ほぼ二年くらいすると、だれもが、一応 その人らしさを出して お話をなさるようになります。

 問題は、その「人らしさ」です。
初歩的な、技術的な困難を克服したあと、その人のお話が どれだけおもしろくなるかは、
結局、その人全体にかかわることなのです。
その人が、どういうことをおもしろいと感じ、どういうことに心を動かされるか。
どういうことに敏感で、どういうものに興味をもっているか。
これまでどんなことを経験してきたか。どんな性格か。
そんなことが、ひとつになって、その人のお話をつくっていくのです。
さきに、お話は、物語に語り手の個性が加わって 化学変化を起こしたものだといいましたが、
まったく その通りだということを、同じ話が違った語り手によって 語られるのを聞くと、
しみじみ思わせられます。

 わたしたちは、しょせん、自分である以上に、余分に 語り手であることはできないのです。
ですから、いい語り手になるためには、
あらゆる方法で、せっせと 自分をこやすしかない ということになります。

「くせのガマン比べ」 リメイク by akira

2012年05月20日 02時29分33秒 | 民話(リメイク by akira)
 元ネタ 「三人のくせ」 「日本の昔ばなし Ⅱ」 関 敬吾編 岩波書店

 今日は「クセのガマン比べ」やっかんな。

 オレが小さい頃、ばあちゃんから 聞いたハナシだ。
(いや、このハナシは じいちゃんからだったかな)
いつものように ほんとかうそか わかんねぇハナシだけど、
(じいちゃんのハナシは 特にな)
ほんとのことだと思って 聞かなきゃなんねぇ。

 むかしのことだそうだ。

 ある村に、しらみったかり と めンただれ  と はなったれ の三人が おったど。
しらみったかりは 体中に しらみが うじょうじょ たかっていてな、
そんで いっつも 体を ごそごそ 引っかいていたど。
めンただれは 目やにが 一杯 たまっていてな、
そんで いっつも ごしごし こすっていたど。
はなったれは あおっちろい ごんぞっぱなを たらしていてな、
そんで いっつも ふんっ って 手鼻(てばな)を 切っていたど。

 あるとき 三人で 山ん中を 歩いている時に、三人のうちの一人が 言い出したど。
「おーい、オレたちよ。」
「ん?」
「なんか いっつも 体 引っかいたり、目 こすったり、はな すすったり、してねぇけ。」
「んだな。」
「クセなんだべな。」
「あんまり みてくれのいいもんじゃ ねぇよな。」
「んだな。」
「んでよ、オレ かんがえたんだっけど、誰が 一番 そのクセを ガマンできっか やってみねぇけ?」
「おもしれぇ。・・・やってみっぺ。」
「じゃ、今っから だぞ。」

 ってんで、クセの ガマン比べを 始めたど。

 ところが はじめて すぐに 三人とも 様子がおかしく なったど。 
しらみったかりは からだを もぞもぞ。
めンただれは 目を ぱちぱち。
はなったれは しきりに 鼻(はな)を すすってる。

 できない って、なると よけい やりたくなるのが 人間ってもんだ。

 とうとう しらみったかりが、
「おい、向こうの山 見てみろ。イノシシがいるぞ。」って、言って、
山の方を(右)手で指差しながら、ヒジを動かして(右の)よこっぱらを ごそごそ。

 すると すかさず 目ンただれが
「どれ、どこだ。(きょろきょろして)見えねぇな。」って、言って、
望遠鏡をのぞくような格好(かっこう)をして 目のふちを ごしごし。

  今度は 間髪入れずに はなったれが
「おっ、いた、いた。・・・よーし、鉄砲で撃(う)ってやれ。」って、言って、
鉄砲を撃(う)つまねをして ごんぞっぱなを 手鼻(てばな)でふんっ。

 しらみたっかりも 目ンただれも はなったれも よっぽど ガマンしていたんだな、
三人が 動いたのは ほとんど 同時だっとさ。

 おしまい

 今日は これで おしまいに すっつぉー。
ちいせぇ子供は 早く寝ねぇと、やまんばに (頭っから)塩かけられて 食われっちまうぞ。

 おやすみ、また あしたなぁ。

「恵比寿さま」 リメイク by akira

2012年05月17日 00時50分39秒 | 民話(リメイク by akira)
 恵比寿さま

 じゃ、今日は 「恵比寿さま」やっかんな。

 おれが ちっちゃい頃、ばあちゃんから聞いたハナシだ。
ほんとかうそか わかんねぇハナシだけど、ほんとのことだと思って 聞かなきゃなんねぇ。

 むかーしの ことだそうだ。
 

 ある村のはずれに ばさまと 孫の優太が 二人っきりで 暮らしていたと。
優太は 不幸にも おとぅとおかぁに 先立たれて ひとりぼっちに なっちまってな、
たったひとりの身内の ばさまが 引き取って 育てていたと。
 わずかばかりの 畑をたがやして、その日食うのが やっとの 貧しい暮らしだったと。

 年を取ってから 子供を育てるってことは 大変なことだ。
「年寄りっ子は 三文安い。」なんて 言われねぇように、
「やーい、あまえっこ。」なんて バカにされないように、
ばさまは 心を鬼にして きびしく 育てていたと。
 それに「暮らしは 貧しくても、心まで 貧しくあっては なんねぇ。」と、
「いいか、優太。・・・心の貧しい人間ってのは 人を見かけで判断する人間のことを 言うんだぞ。
おめぇは 人を見かけで 判断しちゃいけねぇ。
誰にでも どんな人にでも 優しく してあげるんだぞ。」
「困った時は 相見互い。」
 ばさまは くり返し くり返し 言って聞かせたと。

 ばさまは 小さい時から 恵比寿さまを 大事にしていてな、
朝に夕に 恵比寿さまに 手を合わせて 拝んでいたと。
それに、なんかちょっとでも いいことがあると、恵比寿さまに感謝して 手を合わせて 拝んでいたと。
 優太は そんな ばさまの後姿を見て、感謝の心を 学んでいったと。

 ある日のことだ、ばさまが 優太に なにか食べさせようと、畑に行く途中、
道に迷ってる様子の お坊さんに 行き会ったと。
「ごくろーさんで・・・なにか お困りですか?」ばさまが 声をかけると、
「この お寺に行こうと してるんだが、・・・どうも 道をまちがえたようじゃ。」
「どれ どれ。・・・あっ、ここは やっかいなとこじゃ。どれ、おらが一緒に 行ってあげんべ。」
ばさまは 家で 腹をすかして待っている 優太のことも忘れて、
お坊さんを お寺まで 連れていって あげたと。

 お寺に 着くと、
「おおー、ここじゃ、ここじゃ。・・・ばあさんや、世話になったの。・・・これは お礼じゃ。」
そう言って、紙に包んだものを 差し出したと。
「と、とんでもねぇー、おら、そんなつもりじゃ・・・」
「それは わかる。・・・ほんの気持ちじゃ。」
そんなやりとりが 何度かあって、
「ほんじゃ、ありがたく いただきますだ。」
ばさまは 申し訳なさそうに 受け取ったど。

 うちへ帰って あけてみっと、銭っこが 入っていたと。
さっそく 優太を呼んで、
「これで なんかうまいもの 買ってきて 食うか。・・・おめぇー、なにか 食いてぇものあっか?」
「おいら、・・・ぼたもちが食いてぇな。」
「ほうか、ほうか、じゃ、これで 買っておいで。」

 銭っこを あとがつくほど しっかと 握って、お店に行くと、ぼたもちが 二つ 買えたと。
「こっちは ばあの分、こっちは おいらの分。」
嬉しそうに ぼたもちを ながめながら 帰る途中、
ぼろぼろの服を着た じいさんが 道っぱたに 倒れていたと。
「おじさん、どうしたの?」優太が 声をかけると、
「腹がへって 動けねえだ。・・・おら、もう 三日も なんにも 食ってねえだ。」
優太は じいさんの顔と ぼたもちを かわりばんこに 見て、
「どうしようかな?」って、迷っていると、
ばさまの 顔が 浮んできて、・・・ばさまの 声が 聞こえてきたと。
「困った時は 相見互い」・・・だぞ。
「おじさん、・・・これ、食ってくんろ。」
優太は ぼたもちをひとつ つかむと そのじいさんに あげたと。

「ただいま。」
優太が 差し出した ひとつしか入ってねぇ ぼたもちを見て、ばさまは、
「なんだ、一つっきり 買えなかったんか?」
「ううん、ふたっつ 買えたんだけど、おいら 途中で 我慢できなくなって 食っちまったんだ。」
ばさまは それを聞いて「あっ、優太に なんかあったんだな。」って、すぐに 気がついたと。
「おらは 年だから ひとつも食えねぇ。・・・二人で 半分こして 食うべな。」
 ばさまと優太は ひとつのぼたもちを わけあって 食べたと。
「ぼたもちは うんめぇな。」
「うんめぇな。」
二人は 顔を見合わせて にっこ にっこ 笑ったと。

 その夜は しんしんと 冷え込む 寒の戻りがあってな、
わずかに残った マキをくべて、二人は いろりのそばで 身を寄せ合って 寝たと。
「ぶるっ、ぶるっ」
ばさまが 寒さで 目を覚まして、マキをくべようとした時だったと。

「チンチンカラリン チンカラリン。・・・チンチンカラリン チンカラリン。」

 大勢の にぎやかな声が 近づいてきたかと思うと、
家の前で 止まって、・・・軒の下で「どっさ」と、ものをおく 音が 聞こえたと。
「あれー、なんだんべ?」ばさまが 起き上がって 戸をあけてみっと、
なんと、恵比寿さまを 真ん中に 七福神の みんなが 勢ぞろいして 立っていたと。
その前には 米やら、味噌やら、着物やら、いろんなものが どっさと 山のように 積んであったと。
その山の てっぺんには 二人じゃ 食いきんねぇほどの ぼたもちも のっかって いたと。

 ばさまが 優太を起こして、二人で 手を合わせて 拝んでいると、
「ばさまや、・・・お寺までの道案内 ありがたかったぞ。
優太や、・・・ぼたもちは うんまかったぞ。
これは お礼じゃ。」
 そう言うと、すーっと、消えていったと。

「情けは 人のためならず」

 それから、ばさまと優太は 幸せに 暮らしたとさ。

 おしまい

「蟹(さる)のかたき討ち」 リメイク 2 by akira

2012年05月02日 21時19分08秒 | 民話(リメイク by akira)
 オレがちっちゃい頃 ばあちゃんから 聞いたハナシだ。
ほんとかうそか わかんねぇハナシだけど ほんとのことだと思って 聞かなきゃなんねぇ。

 むかしの ことだそうだ。

 波が打ち寄せる海岸に 一匹の蟹(かに)さんが住んでいたと。
毎日、海の水をくんできては (鉄の)ナベにあけ、また 海の水をくんできてはあけてを くり返し、
一杯になると、それを煮つめては ちっとばかしの塩をとって 暮らしていたと。
 そんなことしたって、たいした金になるわけじゃねえけどな、
なんにもしなけりゃ、一銭にもなりゃしねえ、
蟹(かに)さんは 毎日 もくもくと 海の水を運んでいたと。

 蟹(かに)さんは 貧しいけれど 一生懸命 生きていたんだ。

 そんな ある日のこと 蟹(かに)さんが(浜辺を)歩いていると おにぎりを見つけたと。
「これはいいものを見つけた。うちで ゆっくり 食べよっと。」って、運んでいると、
山から 猿(さる)のヤツがやってきて、
「おっ、うまそうなの持ってんじゃねぇか、オレに寄こせ。」って、そのおにぎりを 取ってしまったと。
「猿(さる)さん、ひどい!」(って、言うと)
「その代わり、これをやるわい。」って、柿のタネを投げつけてな、
「それを蒔(ま)けば、毎年 柿(の実)が食えるわい。」って、行ってしまったと。

 蟹(かに)さんは 柿のタネを持って帰ると 庭のすみっこに蒔(ま)いたと。
そして 毎日 水をやり、肥やしをやりながら、
「早く、芽を出せ、柿のタネ。(可愛い声で、歌うように)
出さねぇと ハサミでほじくんぞ。(脅かす声で)」って、声をかけていたと。
柿のタネは ほじくられちゃ かなわんって 思ったのかな、ちっこい芽を出したと。

 「よぉし、いい子だ。」って、言いながら、また 水をやり、肥やしをやりながら、今度は、
「早く、木になれ、柿の芽や。(可愛い声で、歌うように)
ならねぇと ハサミでちょん切るぞ。(脅かす声で)」って、声をかけていたと。
柿の芽は ちょん切られては かなわんって 思ったのかな、大きな木になったと。

 「よぉし、その調子、調子。」って、言いながら、また水をやり、肥やしをやりながら、今度は、
「早く、実がなれ、柿の木や。(可愛い声で、歌うように)
ならねぇと ハサミでぶっ切るぞ。(脅かす声で)」って、声をかけていたと。
柿の木は ぶっ切られては かなわんって 思ったのかな、(一杯の)柿の実を ならせたと。
 
 「わぁーい、わぁーい。」蟹(かに)さんは うまそうな 柿(の実)を見上げて 嬉しくなったと。
そして さぁ、食おうと思って、はい登ったけど、
蟹(かに)さんの横ばいでは なかなか登れるもんじゃねぇ。
しゃがしゃが、登っちゃ落ち、しゃがしゃが、登っちゃ落ちを 何度もくり返していたと。

 すると 山(の上)から それを見ていた 猿(さる)のヤツが 山を下りてきて、
蟹(かに)さんに言ったと。
「ほうら、うまそうな柿(の実)がなったじゃねぇか。オレの言った通りだべ。」
そして するっするっと 木にかけ登ると、むしゃむしゃ 柿(の実)を食い始めたと。
「こりゃー、うめぇ。・・・ちょうど 食べごろじゃわい。」
自分ひとりで 食ってばっかりで、ちっとも 蟹(かに)さんに くれようとしないんだと。

 「オイラにもおくれよぅー。」蟹(かに)さんが たまらず言うと、
猿(さる)のヤツ、食い意地がはってるもんだから、全部 自分で食いたくなっちまった。
そんで、蟹(かに)さんにやるのが惜しくなって、まだ 青くてかたい柿(の実)を、
「これでも くらえっ!」って、蟹(かに)さんに投げつけたと。
それが 蟹(かに)さんの背中に当たって、蟹(かに)さんは、ぶくぶく泡ふいて 死んでしまったと。

 「ああ、食った、食った。うまかった(うしまけた)。」って、猿(さる)のヤツ、山へ帰って行ったと。
すると 死んだ蟹(かに)さんの甲羅(こうら)の下から、
ずっく ずっくと たくさんの子蟹(こがに)が 生まれてきたと。

 「悲しんでなんかいられない、生きていかなきゃ。」
 
 子蟹(こがに)たちは 力をあわせて、畑をこしらえ、キビのタネを蒔(ま)いて 育てたと。
キビが実ると 子蟹(こがに)たちも立派な大人になった。
そして キビの実で きびだんごを作って、それを腰にぶらさげて、
「さあ、みんなで 親のかたき討ちに行こう。」
蟹(かに)の大将を先頭に 猿(さる)のいる山、猿の番場(ばんば)に向かったと。

 すると(向こうから)熊ん蜂(くまんばち)が ブーン ブーンと やってきた。
槍(やり)をかまえて 勇ましい。
「やあ、やあ、蟹(かに)さんたち、みんなそろって どこ行くの?」
「これから 猿(さる)のヤツを やっつけに。」
「そうか、(猿のヤツには)ひどい目にあったからね。
ところで 腰につけているものは なんだい?」
「きびで作った きびだんご。ひとつ食べれば 百人力。」
「オイラにも ひとつおくれ。仲間になろう。」

 熊ん蜂を仲間に 向かっていると(今度は)いが栗(ぐり)が ころっ ころっと やってきた。
針の山が 鎧(よろい)みたいで 凛々(りり)しそう。
「やあ、やあ、蟹(かに)さんたち、みんなそろって どこ行くの?」
「これから 猿(さる)のヤツを やっつけに。」
「そうか、(猿のヤツには)ひどい目にあったからね。
ところで 腰につけているものは なんだい?」
「きびで作った きびだんご。ひとつ食べれば 百人力。」
「オイラにも ひとつおくれ。仲間になろう。」

 熊ん蜂、いが栗を仲間に、向かっていると 石臼(うす)が どすん どすんと やってきた。
がっしりした体つきが 頼(たの)もしい。
「やあ、やあ、蟹(かに)さんたち、みんなそろって どこ行くの?」
「これから 猿のヤツをやっつけに。」
「そうか、(猿のヤツには)ひどい目にあったからね。
ところで 腰につけているものは なんだい?」
「きびで作った きびだんご。ひとつ食べれば 百人力。」
「オイラにも ひとつおくれ。仲間になろう。」

 熊ん蜂、いが栗、石臼を仲間に加え、
蟹(かに)さんたちは 意気揚々と 山へ向かった。
猿(さる)の番場(ばんば)が見えてきた。

 「ちょっと ここで待ってて。様子を見てくる。」熊ん蜂どんが 飛んで行った。
やがて 戻ってくると
「今はいないけど、すぐに帰ってくるだろう。いろりに鍋(なべ)がかかってた。」

 「どうやって やっつけようか。」蟹(かに)の大将が言った。
「オイラにいい考えがある。みんな こっちにおいで。」石臼どんが みんなを集めて言った。

 いが栗どんは いろりの灰の中に隠れていて、そうして・・・(ごそごそと 耳打ちしたと)
「そっか、わかった、まかせときっ!・・・オイラ 火の中 大好きだい。」

 熊ん蜂どんは 味噌(みそ)がめのフタに隠れていて、そうして・・・(ごそごそと・・・)
「そっか、わかった、まかせときっ!・・・オイラ 小さいから 見つかるまい。」

 オイラは 屋根の上にのっかってて、そうして・・・(みんなに ごそごそと・・・)

 蟹(かに)どんは 外にある 水がめの中に隠れていて、そうして・・・(また ごそごそと・・・)
「そっか、わかった、まかせときっ!・・・水の中なら こっちのもんだい。」

「さぁー、みんな きびだんごを食べておくれ。・・・元気を出して出陣じゃ。」
蟹(かに)の大将の掛け声で、
「エイ! エイ! オー!」

 猿(さる)の番場に着くと、(打ち合わせしたように)みんな それぞれの持ち場に 散って行った。

 やがて 猿(さる)のヤツが ばたっばたっと 駆け込んできた。
「おおー、さむっ、さむっ!」いろりのふちにしゃがんで 火箸(ひばし)で 火種をほじくった。

 すると いが栗どんが パーンって はじけて(勢いよく)猿(さる)のヤツのおでこにすっとんだ。
「アチチチ!」猿(さる)ヤツ、おでこを手で押さえながら、
やけどにゃ味噌(みそ)だと、味噌がめのフタをあけた。

 すると フタに隠れていた 熊ん蜂どんが 「待ってました」と、
猿(さる)のヤツのおしりに 「ブスッ!」と 槍を突き刺した。
「ギャー!こりゃ、たまらん。」猿(さる)のヤツ、おしりを両手で押さえて 外へ 飛び出した。
 ところが あわてていたから 敷居につまづいて、「バタッ!」って、すっ転んだ。

 そこに 屋根の上にいた 石臼(うす)どんが 「ドッスンコ!」って 飛び降りた。
猿(さる)のヤツ、石臼(うす)どんに のっかかられて ぺっしゃんこ。

 そこを 水がめに隠れていた 蟹(かに)さんたちが いっせいに飛び出して、
猿(さる)のヤツのおしりを ハサミでチョッキン、チョッキン、まる裸。

 猿(さる)の(ヤツの)おしりが 真っ赤っか なのは このせいだとさ。

 おしまい(めでたし めでたし)