民話 語り手と聞き手が紡ぎあげる世界

語り手のわたしと聞き手のあなたが
一緒の時間、空間を過ごす。まさに一期一会。

「エンマさまと落語家」 リメイク by akira

2011年12月29日 00時21分44秒 | 民話(リメイク by akira)
 むかし、じっちゃんから聞いたハナシだ。

 ある落語家がいたと。
この落語家、飲む、打つ、買うは ハンパなくやるし、
考え方が 人とちょっと ずれてるところがあってな、ずいぶん 人を泣かせたらしい。
だけど、人を笑わせることに関しては 天才的でな、その芸には みんな 一目おいていたと。

 さて、この落語家が死んでな、エンマさまのお裁きを受けている時だったと。
 エンマさま、帳面を見ながら、
「おめぇーは どこのだれべぇ、・・・おいおい、おめぇー、ずいぶん悪いことをしてきたな。
こりゃ、どうみても地獄行きだな。・・・
うん?なになに、・・・職業は落語家とな。・・・落語家ってのはどんなことをするんだ?」

「はっ、落語家ってのは、人を笑わせる商売でして・・・。」

 それを聞いたエンマさま、何を思ったか、手下に 赤鬼を連れて来るように 言ったと。
そして 赤鬼がやって来ると、落語家に、
「この赤鬼は、もう千年も 笑ったことがないという 可哀そうな鬼だ。
おめぇー、この赤鬼を笑わせることができるか? もし できたら、ほうびに 極楽に行かせてやるぞ。」

 それを聞いて、落語家は、
「人を笑わせるのは 商売だからわけねえけど、鬼は・・・笑わしたことねえからなぁー。」
って、ブツブツ言ってたんだけど、そのうち なんか ひらめいたらしい。

「はっ、エンマさま、なんとか やってみましょう。」
そう言って、赤鬼のそばに行くと、耳元で こそこそと なんかハナシをしたと。
するとな、それまで苦虫つぶしていた赤鬼が、ワッハッハッと、笑い出したんだと。

 エンマさま、驚いてな、落語家に、
「おめぇー、赤鬼にどんな話をしたんだ?」
すると、落語家が、
「はっ、来年の話をしてみました。」

 来年のことを言うと鬼が笑うってね。 

 おしまい

「ちく」 (ちくらっぽ) リメイク by akira

2011年12月25日 00時25分56秒 | 民話(リメイク by akira)
むかし じぃちゃんから聞いた話だ。

 みんなで ひなたぼっこしながら、お茶のみしている時にな。
「こん中で 一番 ちく言うのうめぇーの 誰だんべなぁ?」って、誰かが言ったと。
そしたら「ちく なら オレにまかせろ。」とか、
「いやぁ、ちく なら オレにかなうヤツは いなかんべ。」とか、
みんな「オレが一番だんべ。」「いや、オレだ。」「オレだ。」って言うんだと。
ちっとも自慢できることじゃねえのにな。

「そんじゃ、一人ずつ、ちくの言いっこ すんべ。
そんで 誰が一番 ちく言うのうめぇーか 決めんべ。」ってことになってな。
みんなで ちくの言いっこ したんだと。

 ところが、どいつのちくも たいしたことねえんだと。
 すると、すみっこで じーっとしていた男が、
「どうも オラのちくが一番みてえだな。」って言ったと。
 みんな「なにを!」って顔で そいつをにらんで、
「じゃ、おめぇーのちくは どんなんだ、言ってみろ。」

 んで、みんな そいつのちくを 待っていると、
「あれっ、しまったなぁ、おいてきちまった。」
「何を?」
「オラ、うまい ちくを思いつくと、ネタ帳につけとくんだけどな。
そのネタ帳をおいてきちまった、・・・ちょっくら行って取ってくっから 待っててくれや。」
って、出て行ったと。

 だけど、なかなか 帰って来ねぇーんだと。
「こんだけ待たしといて、たいしたちくじゃなかったら ただじゃおかねぇ。」
「んだ。」「まったくだ。」なんて、言いながら 辛抱強く 待ってたんだけどな。
いつまでたっても戻ってこねぇ。
さすがに みんな だまされたことに気がついた。

「あのヤロー、ちく ぶっこきやがったな。」

 みんなして 二本棒にされたって話だ。

 おしめぇ

「黄鮒」 (きぶな) リメイク by akira

2011年12月22日 01時12分21秒 | 民話(リメイク by akira)
 むかーし むかしのことだ。

 宇都宮の町に、天然痘がはやったことがあった。
天然痘っていうのは、高い熱が出て、顔一杯にブツブツができて、
この病気にかかると、たいがい死んでしまうという、おっかない病気だった。
 町のモンは、なんとかして、この病気を食い止めようとしたけど、
広がるばっかりで、どうにも手がつけられなかった。

 町のはずれに、魚を捕って暮らしている 漁師が住んでいた。
その漁師は、信心深い男で、
朝、出かける時は「今日も無事でありますように」
夕方、帰った時は「今日も無事でありがとうございました」
毎日、神さまに手を合わせて、拝んでいた。

 その漁師の息子が天然痘にかかってしまった。
漁師は、神さまに、一生懸命、お祈りした。
 「息子の病気がよくなりますように」
すると、神さまのお告げがあった。
 「黄色いフナを食べさせてあげなさい、そうすれば、きっと病気はよくなりますよ」

 さっそく、漁師は、田川に釣りにに行った。
釣竿を投げると、すぐ、当たりがあって、上げてみると、でっけえ、黄色いフナが釣れた。
 「こりゃ、珍しい、お告げの通りじゃ、早く息子に食わせてやんべ」

 急いで帰って、息子に食べさせてあげた。
すると、息子の熱が、みるみる下がっていって、
顔のブツブツもとれて、すっかり、元気になった。
 「よかった、よかった、みんなにも分けてあげんべ」
漁師は病気にかかってる、他のもんにも分けてあげて、みんなの病気を治してあげた。

 そうして、宇都宮の町から、天然痘が消えていった。

 それから、町のモンは、病気の守り神にと、
黄色い、張り子のフナを、神棚に飾るようになった、っていう話だ。

 おしまい

「鬼のおなか」 リメイク by akira

2011年12月18日 00時21分47秒 | 民話(リメイク by akira)
 じゃ、今日は「鬼のおなか」やっかんな。  

 むかぁーしのことだ。

 ある山のふもとに 小さな村があったと。
山ん中には 鬼が住んでいてな、
時々 村に来ては 悪さをするんで、村のモンは 困っていたと。

 ある日のこと、威勢のいい男が 村にやって来て、その話を聞くとな、
 「よーし、オレがやっつけてきてやる。」そう言って、山ん中に入っていったと。

 「おーい、オニー!」男が叫ぶと、
 「オラのこと 呼んだのは お前(めぇー)か?」
大入道みてぇな でっけぇー鬼が 出てきたと。
男はちっともひるまず、鬼を見上げて、
 「おめぇーが村の人間に悪さをするという鬼か。オレがやっつけにきた。」
 「なにを、生意気な!」
鬼は ひょいと 男の首根っこをつかむと、ゴックン って、呑みこんじったと。
だけど、男はちっともあわてねぇで、じっと 呑みこまれるままにしてるとな、
やがて ストーンと 広いとこに 落っこったと。

 (ここが 鬼のおなかん中か、意外と広いとこだな。)

 まわりを見ると、上の方に 青いヒモ、赤いヒモ、黄色いヒモ、
三本のヒモがぶら下がっていたと。
 (うん?このヒモは、なんだんべ?)
 青いヒモを引っ張ってみると、いきなり 鬼が、「ワッハッハッ。」って、笑い出したと。
 (青いヒモを引っ張ると笑い出すのか。)
 どれ、どれ、この赤いヒモはなんだんべ、って、赤いヒモを引っ張ると、
今度は鬼が、「ウェーーン。」って、泣き出したと。
 (なるほど、なるほど、じゃ、この黄色いヒモは)って、黄色いヒモを引っ張ると、
鬼は、「ハックション!」って、くしゃみをしたと。

 (こりゃ、おもしれぇや。)
 (どれ、どれ、三本一緒に引っ張ってみっか。それっ、えいやっと。)
って、力任(まか)せに引っ張っるとな、

 「ワッハッハッ。」「ウェーーン。」「ハックション!」

 「ワッハッハッ。」「ウェーーン。」「ハックション!」

 「ワッハッハッ。」「ウェーーン。」「ハックション!」

 鬼は転げまわって 苦しがったと。

 (どーれ、遊びはこれくらいにしといてやるか。)
男は 最後に くしゃみのヒモを 思いっきり引っ張ってな、

 「ハッ、ハッ、ハクション!」

大きなくしゃみと一緒に、鬼のおなかから飛び出したと。

 「おいっ、どうだ。もういっぺんオレを食ってみっか。」
 「もう、たくさんだ。」
 鬼はあわてて逃げてったと。・・・それっきり、村には出てこなくなったってハナシだ。

  どっとはらい(おしまい)

「プロポーズ」 リメイク by akira

2011年12月15日 01時57分29秒 | 民話(リメイク by akira)
 むかぁーしな、人里離れたところに 大きな森があったと。
人が来ることもなく、動物は みんな仲良く 暮らしていたんだと。

 森の中に 小さな沼があってな、そこにツルさんとカメさんが住んでいたと。
二人は 幼なじみでな いつも一緒に 遊んでいたんだと。

ツルさんは スタイルがよくて 美人さんだから、みんなのあこがれの的でな、
(クマさん キツネさん リスさん そのほか)
いろんな動物が ツルさんにプロポーズしたんだけど、みんな断られていたんだと。

 「どうしてかな?ツルさん、他に 誰か好きな人でも いるんかな?」
みんな 不思議がっていたと。

 実はな、ツルさんは ずっと前から カメさんが好きだったと。
うん?・・・カメさんのどんなところがだって?
それはな カメさんの 無口だけど ウソをつかない(ウソのない)とこさ。
なんたって、男はこれが一番だもんな。

そんで、結婚するんなら カメさん って (心に)決めていたんだと。
だけど いつまでたっても カメさんが言ってくれないもんだから、
ツルさん とうとう しびれを切らして カメさんに言ったんだと。

 「カメさん、わたしたち、もう そろそろ 結婚しても いいんじゃない?」

 カメさんは それを聞いて、一瞬 嬉しそうな顔をしたんだけど、すぐに 下を向いちまったんだと。
その様子を見て、ツルさん、不安そうに カメさんに言ったんだと。

 「わたしのどこが気に入らないの?・・・首の長いとこ?」
 「ううん。」
 かめさん、首をふるんだと。
 「足の長いとこ?」
 「ううん。」
 「口がとんがってるとこ?」
 「ううん。」

 「じゃ、わたしの どこが気に入らないの?」
カメさん、下を向いたきり、口を開かないんだと。

 「ねぇ、教えて、・・・わたしの どこが気に入らないの?」

 ・・・・・かめさん、やっと 重い口を開いて、
 
 「オラもツルさんのこと 好きだよ・・・・・だけど・・・おいら 結婚したって、
ツルさんは 千年しか 生きらんねぇだろ。オラは 万年も生きられるんだよ。
男やもめに ウジがわくって 言うだろ。
オラ 九千年も 男やもめで過ごすのは イヤだよぉー!」

 って、言ったんだと。

 (これで いちがさきは おえもうした、しゃみしゃっきり、ねこすけぽっきり)おしまい