民話 語り手と聞き手が紡ぎあげる世界

語り手のわたしと聞き手のあなたが
一緒の時間、空間を過ごす。まさに一期一会。

「くそ坊主」 リメイク by akira

2012年06月30日 00時15分46秒 | 民話(リメイク by akira)
 風にまかせない僧   「醒睡笑」巻一 上方  日本の小咄 三百題 稲田浩二・前田東雄 編著

 京にて、口脇白き男(こなまいきな男)、ちと 出家をなぶり、
理につめて遊びたやと(理屈づめにして楽しんでやろうと)思いつつ、賢(さか)しき人に向かい問う。
「やすき事なり。教えん。なんじ沙門(出家した僧侶)に会うた時、「お僧はいずくへ」と言うべし。
さだめて「風にまかせて」と言わんずる。      (注)「行雲流水」が僧の覚悟である。
その時「風なき時はいかん」と言え。やがて 閉口すべし」
 
 この教えを得、ある朝、東寺(とうじ)の門前にて 出家に行き会う。
「お僧はいずくへ」と、問う。
僧の返事に、
「立売りの勘介が所へ 斉(とき)に行く(法要に行く)。何ぞ 用ありや」
 男、とってにはぐれ(文句のつぎ穂を失って)、
「あら、お僧は風にはまかせないの」と。

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 「くそ坊主」 リメイク by akira

 むかし、あるところに、お坊さん嫌いの 男が いたと。
ある日、男は 隠居じいさんに 聞いてみたと。
「おら、どうも 坊主ってヤツが 好きになれねぇ。
いつも 偉そうにしてやがってよ。
なんか、ぎゃふん と言わせる方法は ねぇもんかねぇ?」

 すると 隠居じいさん、ちょっと考えて、言ったと。
「そんなの簡単さ、今度、坊さんに会ったら こう言うがよい。
『ご苦労さんで、・・・どちらに 行きなさるんで?』
すると お坊さん、きっと、『風の 吹くままじゃ』って、答えるからな、
そしたら、『風のない時は どうするんで?』って、聞くがよい。
お坊さん、きっと 開いた口が ふさがんなく なるだろうよ」

 それから しばらくして、男は 道っぱたで お坊さんに 行き会ったと。
さっそく「ご苦労さんで、・・・どちらに 行きなさるんで?」って、聞いてみっと、
お坊さん「葬式ができてな、念仏をあげに 行くとこじゃ」って、答えたと。

 男は 舌打ちして、
「なんでぇ、風にまかせねぇのかい、この くそ坊主!」って、言ったとさ。

 おしまい

「昔話の伝播・昔話の語る日と語る場」 水沢 謙一

2012年06月24日 01時03分26秒 | 民話(語り)について
 「雪国の炉ばた語り」越後・栃尾郷の昔話  水沢 謙一

(3)昔話の伝播

○北魚の広瀬から、箕(み)売りじさがきて、泊まった夜にムカシカタリをした(西中野俣)
○見附からくる反物屋のおかかは、丸まげ結って、キリキリしたあねさで、泊まって炉ばたで、ムカシを語った(北荷頃)
○二十村のカタリジサが、三晩もムカシを語った(吹谷)
○二十村の種苧原(たねすはら)から、ヤネヒキ(屋根葺き)ジサと箕売りジサがきて、泊まった晩にムカシカタリをした(西中野俣)
○栃尾郷の親類のカタリジサが、泊まって、ムカシを語った(一之貝)
○今町のトギヤ(研ぎ屋)のじさが、秋のすがれにきて何日も泊まり、夜になると、村の子供に、ムカシを語った(西中野俣)
○チョンガレ語り(大道芸)のザトウが、ムカシを語った(入塩川)
○ゴゼが、ムカシを語った(本所、下塩谷、吹谷、栗山沢)
○町からくるイモジヤ(鍋、釜、やかんなどを修理する)が、ムカシを語った(森上)

(4)昔話の語る日と語る場

 「秋餅ムカシの正月バナシ」のコトワザがあるように、昔話は、農の民俗と深くかかわっていた。
昔話は、秋餅(とりいれ祝、収穫祭)の晩か、小正月の予祝祭の作祝いに、昔話を語った。
 たまたま、栃尾郷の山郷にも、北魚の山郷にも、「イロリのハダカマワリ」という行事が、小正月の晩におこなわれました。夫は、褌をとって「アワボ、ブラブラ、ヒエボ、ブラブラ」と言いながら、
赤々と燃えるイロリを三度まわり、妻も腰巻をとって、「このかますに、ななかます」などと言って、
だいじなところを、シャモジでたたきながら、三度、イロリをまわったという。
カンノ(焼畑)の作祝いでした。
 そういうように、炉ばたは、ときにはハレの日の聖なる祭場となり、昔話もまた、年夜に語られ、
また小正月の農耕儀式の予祝祭の夜にも、アキモチ(収穫祝い)の晩にも、語られてきました。

「アサガオと朝寝坊」 リメイク by akira

2012年06月22日 00時07分02秒 | 民話(リメイク by akira)
 「アサガオと朝寝坊」  元ネタ「こんにちは、昔話です」 小沢 俊夫

 今日は「アサガオと朝寝坊」ってハナシ すっかんな。
 オレがちっちゃい頃、じいちゃんから よく 聞いたハナシだ。

 むかし、朝早く 起きんのが 苦手な男が おったと。
アサガオの花が きれいだって 話を聞いて、一度 咲いてるとこ 見てぇもんだ と 思っていたと。
ところが その男 朝 起きるのが おせぇーもんだから、
起きた時には アサガオの花は しぼんでいて、咲いてるとこは 見れなかったと。

 ある朝のこと、今日こそは と 決心して、早起きして、
早く咲かないかなって アサガオの前で 待っていると、
まもなく つぼんでいた花びらが ゆっくり 開いていったと。

「おぉー、これがアサガオの花か。なるほど きれいな花だなぁ」って、喜んで 見ていると、
アサガオの花 開き終わると すぐに、なんだか あわてたように しゅるしゅると しぼみはじめたと。
男が 思わず、「おい、おい、開いたばっかりなのに もう しぼんじゃうんかよ」って、文句を言うと、
アサガオは、「おめぇがいるんで、もう 昼かと思った」って、答えたとさ。

 おしまい

「さんすけ」 水沢 謙一

2012年06月21日 22時44分56秒 | 民話(語り)について
 おわりに(解説) 「おばばの夜語り」 安藤 マス 語り 新潟の昔話 水沢謙一

 昔話のことを、里方の村々では、<むかし>と言いました。
古くは、「むかし、あったてんがな」と語りだす昔話だから、そう言ったのです。
そして「むかし」を略して、たんに、「あったてんがな(あったとさ)」と語りだすようになりました。
 語り手が、「あったてんがな」と語りだすと、聞き手は、「さんすけ(そうか、そうか)」と言って、
合いの手を入れるのが、古い聞き方でした。
語りのところどころに、「さんすけ」を入れて聞く。
語り手は、聞き手が、「さんすけ」を言わないと、語りにくいと言います。
「さんすけ」は、聞き手が聞いていることを示すとともに、話を先へと進ませるのです。
つまり、昔話は、語り手と聞き手が、一体になって、語られ聞くことによって、話が展開していきます。

 語り手の、おわりの語りおさめには、「いきがポーンとさけた」と言います。
「いき」は「一期」のなまり、ポーンは、なくともよいのです。
「さけた」は「栄えた」のなまり。
つまり、「一期栄えた」で、一生安楽に暮らしたという意味なのです。
 もともと、しあわせな物語の語りおさめだったのですが、もとの意味がわからなくなって、
話の終わりに、「いきがポーンとさけた」と言うようになりました。
今でも、遠い山村では、昔話の語りおさめを「いちごさかえた」と言います。

 ところで、「いちごさかえた」とは、具体的には、どういう生き方を言うのでしょうか。
越後の古いことわざに、

 いつも花咲く 三月のころ、
 かか十八の、おれが二十、(はたち)
 死なぬ子の 三人 みな親孝行
 減らぬ 金の 百両

 一年のうち、気候的には、いつも花咲く三月のころであればよい。
 かかは十八、おれは二十で年若く、
 死なない子供が三人いて、みな親孝行で、
 いつも手元に百両の金があればよい。

があって、庶民の生活理想をうたいあげていますが、これこそ、「いちごさかえた」の中身でした。

「打出の小槌」 リメイク by akira

2012年06月14日 00時20分44秒 | 民話(リメイク by akira)
 打ち出の小槌(こづち) 元ネタ 松谷みよ子 「読んであげたいおはなし 下巻」

 今日は「打ち出の小槌(こづち)」ってハナシ やっかんな。
いつものように オレが ちっちゃい頃 ばあちゃんから 聞いた ハナシだ。
ほんとかうそか わかんねぇけど ほんとのことだと思って 聞かなきゃなんねぇ。

 むかしの ことだそうだ。

 ある 山すその 村に ばぁさまと せがれが 二人で 暮らしていたと。
せがれは もう 嫁をもらってもいい年だったが、なんせ 貧乏で ばぁさまっていう おまけつきだ、
なかなか 嫁のきてが なかったと。
そんでも 縁っていうもんは あるもんだ。・・・やっと 嫁をもらうことが できたと。
 ところが、その嫁っていうのが、最初のうちこそ ばあさま、ばあさま と、
甘い声を 出していたんだけど、
そのうちに(やれ、朝が早すぎる、おら 朝は もっと ゆっくり 寝ていてぇ とか、
やれ、きったねえ、これだから 年寄りは いやだ とか)
せがれに 文句ばっかり 言うように なってきたと。

 ある夜のことだ。
ばぁさまが 虱を取っては 噛み潰していると、その音を聞いて、嫁が せがれに 言ったと。
「あにぃ、おらんちのばっさまは どこで見っけてくんだか 米 食ってるだ。
おらなんぞ、年に一度、正月にしか 口にできねえのによ。
まったく あのばっさまときたら、(ああだ、こうだ、ばっさまの悪口を 並べ立てる)
あんな ばっさまは いらねぇ。・・・山にでも 捨ててきてくれ。」
 せがれは あまりのことに、「そんなこと 言うもんじゃねえ」って、たしなめると、
さあ 嫁は ヘソを曲げ ヒステリーをおこして 手がつけらんねぇ。
せがれは やむなく(ばあさま 捨ててくれば いいんだんべ)って、言っちまったと。

 さて その日になると、嫁は せがれの そでをつかんで 小さい声で、
「あにぃ、山に 捨ててくるだけじゃ ダメだぞ。・・・そんくらいじゃ 戻ってくっかもしんねえ。
いいか、カヤで 小屋 作って、そん中に ばっさまを入れて、火をつけてこい。」
せがれは また ヒステリーおこされちゃ かなわない ってんで、
嫁の言うことなら なんでも 聞くように なっちまって いたと。

 せがれが ばぁさまを連れて 山の奥に行くと、カヤを集めて 小屋を作って、
「ばぁさま、嫁の機嫌がなおったら 迎えにくっかんな。それまで この中に 入ってて くれな。」
ばぁさまを 中へ入れると、外から 火をつけて うしろも振り向かねぇで、帰ってきたと。

 ばぁさまは(おらぁ、まだ 死にたくねえ)と言って、小屋から はい出して、
(さて、これから どうすんべぇ)って、小屋の焼けた 残り火にあたりながら 考えていたと。

 途方にくれたまま 夜になると、わいわいと 誰か やってくる声が 聞こえてきたと。
(あれっ、こんなとこに 人がいるのか)って、見ていると、
小さい子供が 五、六人、やってくるのが 見えたと。
火のあかりで やっと見えるようになって びっくり、なんと 頭っから ツノが生えていたと。
(うん?・・・鬼?・・・鬼の 子供か?)
ばぁさまの 腰っくれぇの ちっこい 鬼で、
人なつっこいのか ちっとも ばぁさまのことをこわがらねぇ。
 
「こんな時間に 火遊びしちゃ ダメだっぺ?」
「夜になったら 火遊びしちゃ いけねぇって いっつも 言われてるよなぁ。」
「んだ、んだ。」
なんて、かわいいこと 言うんで、ばぁさんも 気を許して ニコッって 笑うと、
 鬼の子供は ばぁさまの近くにやってきて、まるで はじめて見る 生きものみてぇに、
じろじろと ばぁさんのことを 見始めたと。
飛び上がって ばぁさんの 顔を見たり、手を引っ張ったり、足を 叩いたり、股の下をくぐったり、
まるで おもちゃで 遊んでるように はしゃいでいたと。

(大人バージョン)
 そのうち、一匹の鬼が ばぁさまの 着物のすそを まくったと。
「うわぁー!・・・ばぁさま、そ、それは なんだ?!」後ずさりして 聞いたと。
(むかしのことだ、ばぁさま パンツなんて はいてねぇ)
ばぁさまは おかしくて おかしくて たまらない。
だけど、笑いたいのを 必死でこらえて、
「あー、これか、・・・これはなぁ、・・・鬼の子供を とって食う 口だ。」
って、言うと、「がばっ」って、おおまたを 広げて(な)、
「ちょうど 腹がへってきたとこじゃ、・・・さぁー、ガキども、とって食うぞー。」
鬼の子供たちは おったまげて、・・・腰をぬかしたり、逃げようとして つんのめって 転んだり、
「待って、待って、食わねぇでくれ、・・・その代わり、この「打ち出の小槌」を あげっから。
これを振れば なんでも 願いが かなうんだ。」
そう言って、(鬼の子供たちは)「打ち出の小槌」を放り投げて、山奥へ 逃げて行ったと。

(子供バージョン)
ばぁさまも 孫と遊んでいるような 楽しい時間を 過ごしていたと。
「もう 帰んないと ママに怒られるね。」
「あっ、こんな時間か もう帰らなきゃね。」
「楽しかったね、また遊んでね、バイバイ。」
「これ、お礼にあげるよ。「打ち出の小槌」といってね、これを振ると なんでも 願いがかなうんだ。」
って、「打ち出の小槌」をもらったと。


 夜が明けるのを待って ばぁさまが 山を下りていくと 広々としたとこに 出たと。
「よぅし、気に入った。ここに町をつくるべ。
おらには「打ち出の小槌」がある。なんでも 思うがままだ。」
ばぁさまは まず 水を湧き出し 池をつくり、そのまわりに 家を建て、
さらに その外側には 田んぼをつくって、
 それから 人間を打ち出し、馬を打ち出し、その他 いろんなものを打ち出し、町をつくっていったと。
そうして 町のもの みんなが しあわせに 生きていける 町が できあがっていって、
 そんな町の うわさは あっという間に 広がっていったと。

 そんな ある日のこと ばぁさまが 町を歩いていると、
「たき木は いらんかいね、・・・たき木は いらんかいね。」と、たき木売りが やってきたと。
 ばぁさまは 遠くから見ても、それが せがれと嫁だって わかったと。
二人して たき木を 背中にしょい 両手には 肩が沈むほどの たき木の束を 持っていたと。
(こんな遠くまで 歩いて来なきゃ なんねぇほどの 貧乏なのか)
すれちがっても せがれと嫁は ばぁさまに 気がつかない。
ばぁさまは 振り返って 声をかけたと。
「そのたき木、おらが 全部 買ってやる。・・・あるだけ おいてけ。」
「ありがとう ございます。」って 言って、顔を あげてみると なんと ばぁさまではないか。
「あれ、まぁ、ばっさま、・・・どうして ここに。・・・」
「なぁに、・・・カヤで作った 小屋に入って 火に焼かれたおかげよ。」

 さぁ、家に帰って 嫁のくやしがること、くやしがること。
「なんで 生きてんだ、あのばっさま・・・火 つけてきたんじゃねぇのか。」
って、ヒステリックに叫ぶと、せがれに、わめき続けたと。 
「おらもなりてぇ、・・・ばあさまのようになりてぇ。
あんな いい着物 着てぇ・・・うんまいもの 食いてぇ・・・あんな いい家(うち)に 住みてぇ。」
 
 せがれは うんざりしちまって、
「そんだら ばぁさまと 同(おんな)じように してやんべ。」って 言って、
嫁を連れて 山へ 行ったと。
そして、ばぁさまの時と 同じように、カヤを集めて 小屋を作って、
嫁を 中へ入れると、外から 火をつけて 帰ってきたと。

 嫁は 焼け 死んじまったと。

 おしまい