民主党は、野党時代に後期高齢者医療制度を廃止することを公約に掲げていました。これが2009年の総選挙での民主党の勝利と民主党中心の政権発足へと繋がっていきました。野田首相は、野党議員だった2009年には後期高齢者医療制度を国民の間に「非人間的分断をもたらす」と指摘していました。
保険という技術は、相互扶助とリスク分散にあります。なお、民間の保険会社の保険商品と公的保険との違いは、公的保険にはたんに相互扶助という自己責任論に解消するのではなく日本国憲法第25条に基づく国民の権利とこれに対応する国家と地方自治体の責任が背景にあります。保険技術ということに着目すれば長年の月日を生きてきて病気がちの高齢者だけを一般の社会保険や国民健康保険と切り離して別個の保険制度を制定するのは、まるで成り立たないことです。この成り立ち得ないことを民主党政権成立から現在に至るまで政権党が自ら掲げた公約に反して続けているために、支給年金額は下がり続けているのに保険料だけは上がり続けていく、保険料は年金から天引きで支払いができなければ非常なまでに保険証を取り上げるという事態が発生しています。保険料が払えなくて保険証を取り上げられてしまうのは、多くが低所得者です。しかも、高齢者は若い人に比べて病気がちであったり慢性疾患を抱えていることが一般論としては多いだけに保険証取り上げは命に関わることです。
野田首相は、日本共産党の山下芳生議員の追求に対して(首相が野党時代と)状況が変わった云々と誤魔化していますが、自公政権時代から後期高齢者医療制度の本質的な枠組みは全く変わっておらず、野田首相が変節し自らが掲げた公約を反故にしているのです。後期高齢者医療制度が存続する限り、高齢者の苦しみは続くばかりです。
あえて言えば、民主党政権が強行しようとしている「税と社会保障の一体改革」は、自民党と談合して消費税増税と社会保障を悪く、貧しくすることと一体であり、極めて悪質です。このような悪質な策動と後期高齢者医療制度の存続は、国民の間に非人間的分断をもたらし続け、さらには社会保障制度荒廃を招くだけです。
後期高齢者医療制度がもたらす歪みをなくす方法は後期高齢者医療制度を廃止することです。代案はありません。
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