のんのん太陽の下で

初めての一人暮らしが「住民がいるんだ・・・」と思ったラスベガス。
初めての会社勤めが「夢を売る」ショービジネス。

出来ない

2012-02-16 | KA
 私はいつも六時から音を掛けて通し練習をするのですが、今日はその時間に何かがありそうな気がしました。ホワイトボードに確認しに行きましたが、何も書いていないので、大丈夫と思い、六時の通し練習に向けて練習をしていました。ところが六時になると、放送が入り、京劇のみなさんの練習があることが分かりました。みなさん、一回の通しだけするつもりだったようですが、上手くいかず、終わりそうにありませんでした。私は隅で曲なしで通すことにしました。エイドリアンでしたら、私に一言伝えて下さるだろう、また、以前なら腹を立てる自分であったろうと思いながら、今日は、私がコーチだったらこうはしないだろうな、と落ち着いて考えていました。昨日も何かありましたが、腹を立てずに処理できたことを思い出し、感情の起伏が少ない日なのかと思っておりましたが、どうやら年を取ったのかもしれません。
 湿度がある日で、フルートがいつもより滑らない状態ではありました。でも、気にならないほどでしたので、そのまま使うことにしました。しかし、ケイジに置いたもう一本のフルートを手にすると、本当に滑らない状態になっていました。
 二回目の最後が上手く行かずに終わることになりました。もう何週間も手ごたえ無く、出来るか出来ないか分からない状態でやっています。時々やってくることで、考え過ぎなのかとあえて練習をしないこともあるのですが、今回は練習をしてこの状態を乗り切ろうとしています。でも、抜け出せないのです。楽屋に戻ると
「出来ない…。」
 と呟きながら泣いてしまいました。久しぶりに泣きました。ゲイルの問題は一人では解決できないことですが、私の問題は私だけのことなのです。彼女に比べたら簡単なことなのではないかと考えました。二回目のショーが終わると、ゲイルに話しました。すると彼女は、
「見たわよ。」
 と言ってから、
「あなたが手で弾いた時に丁度曲が変わったでしょ。そこで、ああこれは双子の男の子ではなくてただの棒になったんだと思ったわ。とてもドラマチックだったわよ。」
 お客様がみなさんゲイルの様に想像豊かであれば良いのですが…。然して難しことをしているわけではないのに出来ないこのもどかしさ。この状態に陥ると、いつも何か違う終わり方にしようかと思うのですが、それは自分に負けた気がして、どうにか解決するまで闘います。でも、それが本当に良いことなのか、分からなくなってきました。派手なことに変えるのは簡単ですが、静かに終わるのにふさわしいものが何かないのか、ショーが終わってから考えてみました。友人との約束がありましたが、お願いして、練習することにしました。辞めて欲しいと言われるまで闘うことは良いことなのか、諦めてと言う訳ではなく、ショーの為に自ら辞めた方が良いのか、考えます。