陽だまりのねごと

♪~思いつきひらめき直感~ただのねこのねごとでございますにゃごにゃご~♪

出口のない海

2006-09-18 17:03:09 | 映画(DVD)

佐々部清監督の映画は4日間の奇蹟、半落ち等外れがなかったから
期待して封切を待っていた。

出口のない海』とはいったん乗り込んだら、
自分からは出てこれない回天の中から見た海だろう。

ちょうど夏の甲子園が終って、
今年のヒーローはハンカチ王子とか。

回天は大津島の記念館で本物を見たことがある。
窓もなく、
細くて長い鉄の弾丸の様。まさに鉄の棺桶。
誰がこんな残虐な兵器を考えたんだろう。
まっすぐに発進して敵にぶつかり爆破する機能以外に何も付いていない。

やたらに故障が出てきたし、
操縦も素人の寄せ集めの隊員には無理があったのは
事実の忠実な再現なのだろう。
実際に敵に到達して亡くなった人は少なかったと聞いた。

9.11の自爆テロは自分の意思であったろうか?
洗脳だろうか?
大空よりも暗くて冷たい海の底で
発射したらまっすぐにしか進まない、
中から外へ出るハッチもない
乗っただけで発狂しそうな人間魚雷は
空の特攻隊よりさらに悲惨で残酷に感じられた。

少し市川海老蔵さんがキレイすぎて
会話がリベラル過ぎて
そこに野球が介入する必然性もよく分からなかった。
原作ではどうなんだろう?

実際にあの時代に
回天に乗る事を拒否できたり
周りに人が居るのに「戦争に負ける」などと
口にできたのだろうか?

残念ながら
ところどころで作り物の感じがしてしまって
映画に酔えなかった。

実際に記念館に展示されていた
死んでいった人たちの手紙を読んだ時の方が衝撃が大きかった。

今週金曜日が夫の命日になる。
映画の後で墓参りにいった。
弔いの形は残された者の気持の置き所として必要なのかもしれない。

回天を風化させない事もまたしかりか・・・

 


新日曜美術館『画家石田徹也』

2006-09-18 08:34:32 | Weblog
台風が近づいていた。
雨戸を締め切って外の雨風の様子は見えないが、
ゴーゴーと音がして、
吹き飛ばされないように家が胴振い中。
安い建売住宅。骨組み等作りに信用が置けていない。

同じ事ばかりくりかえす台風情報をずっとつけていた。
息子が見たい番組があると言う。
最近、合気道の練習時間帯で、見られなくなっているが
『新日曜美術館』は息子の好きな番組のひとつだ。
台風接近で合気道の練習は休み連絡があったところ。

 石田徹也

何かで見てからずっと気になっていたそうだ。

じっと一緒に見てやればいいものを
私の悪い癖がある。

テレビの画面に集中する前に、
家の片付け物をまず済ませてしまいたくなる。
しなければと思いつつ放置していた
洗い物を再開してしまった私。

自分の好きなモノには共感してもらわないと
息子はすごく不安になるらしい。
自信のなさの現われかもしれない。

いつもの様に
 
 見たくないの?

 うんにゃ。

と言う会話をして洗い物途中でテレビの前に陣取る。
石井徹也を私は知らなかった。

31歳の若さで踏み切り事故死。
武蔵野美大時代から絵に没頭。
卒業後はバイトで凌ぎながら画家生活を続ける。
バイト代はほとんど絵の具に消えて、
カップ麺ばかりの食生活だったらしい。
死の前のは肝臓を壊している。

友人が『絵に命を削った』と語っていた。

好きなことへあまりにもストイックな人を息子は好む。
絵には丸坊主の自画像のような人物が
決して明るい表情でない、
暗いほとんど無表情で描かれている。

社会の歪みに非人間的扱いを受けていることを
鋭敏に捕えて絵に表されている。

 石田語

いみじくも番組ゲストが語った。
絵が雄弁に語り見る者に伝えてくる。

感想も言わず一緒に見ている息子の
坊主頭や表情と
石田徹也の絵の人物と
雰囲気がどこか似ている。

息子の触れてはいけないモノに触れるようで
そこのところは口に出せなかった。

台風は予想ほどの被害をもたらさずに去ったようだ。
我が家の被害は
外しわすれた簾が吹き飛ばされただけだった。

時折の風水害は
人の営みは自然には勝てないよと
忘れさせないために仕組みだろうか?

石田徹也の絵は
人の営みのグロテスクさをえぐり出しているようで
初めて知ってショックだった。
原画を観たいなぁ~