月の晩にひらく「アンデルの手帖」

writer みつながかずみ が綴る、今日をもう一度愉しむショートショート!「きょうという奇蹟で一年はできている」

携帯電話は忘れたけれど…大阪→徳島出張の旅

2018-06-09 00:41:02 | writer希望を胸に執筆日記







6月5日(火曜日)晴のち曇、夜半には大雨

この日は朝から徳島に出張。
ぎりぎりの時間まで昨晩の原稿を見直していて、慌てて外出したら携帯電話を忘れた。 

玄関を出て2分で気づいたが、再び取りに戻ると必ず電車に1本遅れる。
地方にでるのだから撮影したい風景やおいしいものも必ずある、それに行き往復の乗り物でみたいSNSもあるのに、と口惜しい気持ちを抱えながら、待ち合わせの梅田へと急いだ。
 
途中ハービス大阪のイタリアンカフェ「アンティコカフェ アルアビス」でサンドイッチとカプチーノを買って高速バスに乗り込む。

明石海峡大橋と鳴門大橋の、2本も大きな橋をわたった。
瀬戸内の海は、この日も穏やかな凪で、水面はキラキラとしたスケートリンクみたいに眩しく優しい色だった。おもちゃみたいな貨物船が細い煙を吹きながら流れていく。
隣はいつものディレクターのおじさんで、次男坊のお見合い話で気持ちよく盛り上がった。


  
「この前、Hさんに紹介してもろた息子の相手のお嬢さんな、そりゃあきれいでなー。背もスラーっと高いし、顔もまぁべっぴんさんやねん。僕なら、こっち向いて笑ってもろただけでドキドキっとするようなタイプや。ほんで11回もデートをしとるんやで」。

「11回ってすごいですね。それで?」

「そやろ。そやろ。ほんで、この前仲人さん入れて、両家の親同士でも合わせてもろたとこやねん」

「すごーー!もうそんなところまでいっているんですか、今度こそ決まるんちゃいますかねー。もう15回目(約6年間のうち)くらいでしたっけお見合い…」

「それがやな。なかな難しいよな最近のお嬢さんというのは。デートに誘ったら毎回来てくれはるんはええねんけど、お勘定は割り勘らしいねん。昨日うちの女房に聞いたんや」

「もしかしたら夫婦になろうかという女の人でしょ。それあきませんわHさん。無理にでも、息子さん男気だしたほうがいいですよ」

「そやねん、わしらやったらそう思うやろ?相手さんとりはらへんねんて。なーー、ほんで、その娘さん。息子と飯食ったりお茶は飲んでくれはるんやど、肝心なことを切りだそうとしたら、またその話はおいおいに、と言いはるんやて」

「えええーーーー。11回も見合い後にデートしてるのに?それって。まだ私は色々な男性の中から選んでる、選別中です、いうことですよ!!」

「ほんでな。聞いてや。むこうのご両親はそれはご立派でな。相手方のお父さんは海外勤務が多く、お嬢さんも小さい頃はアメリカやらヨーロッパやらで暮らしていた方やねんて。まぁうちとは家同士は釣り合わんけど。それでもむこうのお父さんは僕のことえらい、若う見えるし素敵なお父様やと、こう言ってくれはったらしいわ。ありがたいもんやで、ほんまに」

「まぁ、一般的にはそう見えると思いますよ。もちろんですよ」(ここはニッコリ
&苦笑)

「なのにやで、うちの息子ったらな、お嬢さんのこと、みつながちゃんみたいにな「ほんまは僕もう少し目のぱっちりした子が好みやねん』と、昨日電話でぬかしやがんねん。もうどう思うよ。あいつ41才で、お相手35才。本当に最高の相手やねんで。ほんまあいつは…」(と悔しがっているH氏)

「(絶句)! … 」




というような下りを延々と話し、バスは徳島着。2時間の取材を終了、3人のインタビューをとり、駅前で郷土料理の居酒屋で軽くを食べて、再び高速バスに。帰りは、ディレクター氏とは別々のバスに乗った。行きと同様、梅田経由のバスでも良かったのだが読書もしたかったので、三宮行きに乗車する。

神戸の夜景はすばらしい。 真珠色にライトアップした明石大橋を瞳の中に映しこんだまま、神戸の夜景の泉にだいぶするときのワクワク感は、やはり何度味わっても楽しい。醍醐味だ。

あのものすごい煌めきの小さな一点の中に、自分たちの日々の営みがあるのだ。