月の晩にひらく「アンデルの手帖」

writer みつながかずみ が綴る、今日をもう一度愉しむショートショート!「きょうという奇蹟で一年はできている」

1月の東京遊覧日記

2021-03-08 23:27:00 | コロナ禍日記 2021

 

 




1月24日(土)雨

 

一ヶ月ぶりの東京だった。減便、減便とは聞いていたものの搭乗者は約3割。

大阪からの便も3割という。2時から渋谷で予定があったが、街に出かける気になれなくて、空港内をぷらぷらと。1階にてブルーシールのアイスを買い、エスカレーターの近くに座って、冷たい紫芋を口に運びながら人の流れをみている。少ない。空港内を歩いている人を指差すことができるほど。

 

 

 

 

制服姿のスタッフが暇そうに手荷物のところに待機していた。

 

仕方ないので、3階へ上がり、雨空に飛行機が飛び上がっていくのをみる。廊下のへりに腰掛けて、きょうのテキストを読む。昼食には天ぷらにしようと思った。

 

 

入口で消毒液の霧の中をとおりぬけて、カウンターへ。わたし一人だ。特製天丼も気になったが、奮発して7品の梅コース。大将が1品ずつ、揚げてくれた。お客さんもいないので、つい取材のくせで大将に話しかけてしまう。ここは、綿実油とごま油を混ぜてつかっているらしい。

 

まず、甘みののったさいまき海老から。 白身のキスへとうつる。

次がズッキーニ。かぶりつくと熱い汁がぴゅーつと口の中で飛ぶ、この勢い。

ヤングコーンは塩麹で。いまが旬の白魚と続く。舞茸。あなご。

最後に、追加の別料理で海苔をまいた牡蠣をいただいた。豪華ーー! 一人だからできることだ。

 

 













 


ビールをぐっと我慢。この感激を伝えるのは大将になる。

 

 最初は、目の前の天ぷらについてだったのに途中、大将の口が止まらなくなった。東京コロナの感染状況にはじまり、六本木の本店で安部総理の賓客をもてなしたこと。中国へ数週間、日本の天ぷらの揚げ方を教えに行った話から。海外では荷物チェックが厳重で、空港内でみつかったら最後、地元の雑誌をたったの1冊見つかったくらいで、日本からのスパイと勘違いされて、2日ほど取り調べを受けて返してくれなかった話まで、旅のサバイバルをあれこれ教えてくれた。楽しい!

 

つい、こちらも質問形式の相づち(プロの)を打つものだから、のせてしまったのは、わたしのほうだ。はっと気づいて大将の口元をみれば、唇よりやや大きいマスクシールド。ん? これはまずいか。大丈夫でしょ。ただ、これほど近距離なら、ちょっと用心をしたほうがいいかな、と気付いた。わたしはすぐ調子に乗るのだ。

 

最後の天茶をかきこんで、丁寧にお礼をいって退散。しかし、1時間以上たっぷりごちそうになって、上機嫌にさせてもらったのだ。

 

午後から講義。夜は、今回はホテルではなくNの部屋にお世話になった。

最寄り駅の東急ストアで、ほうれん草や豚肉を調達し、担々鍋をつくる。

シメは麺。お酒は、ジントニック。Nとひとしきり笑いころげてテレビをみた。

 

11時40分。「その女、ジルバ」をみて、泣く。『OLD JACK&ROSE』の看板から店内が映り込むところでもう涙腺がゆるむ。たまらない。原作とオーバーラップする。今回は、エリーさん(中田喜子)が結婚詐欺師の男に、NO!を言い渡す回だった。エリーさんのぽってりとした可愛い赤の口紅に今回も釘付けになる。この人はなんて色っぽくて可愛いらしい顔で笑うのだろう。(配役がすばらしい。くじらママはもちろん、ひなぎくさんも好き)

 

原作者(漫画)が学生時代の友人だから、かなり贔屓めにみているし、主観たっぷりなのは仕方ないが、そこをさしひいてもおつりがくるほど、よいドラマ。ストーリーがぐぐーっ!と奥深いのだ。ごく普通の人の人生を描いているのだ。