2月23日(天皇誕生日で祝・火曜日)晴
大阪城公園に散歩へ来た。今週は提出がつまっているのに、よい根性である。面のカワがあつくなったものだ。家人は、五分付きの米を買いに篠山農協へ出かけて行った。
緑の屋根瓦を泰平におろす、大阪城天守閣の凛々しさよ。祝日散歩の平穏よ。一人っきりの外出だ。
梅林へ行く途中、おもしろきものをみた。30代前半くらいの髪の毛を後ろに束ねたお姉さんが、ぴょんぴょん、と地面を蹴って飛んでいる。なに? 近寄ってみる。すると、ポップコーンほどの豆菓子をジャンプし、高々とほうりなげている。そこへ結構大きめの野鳥が、喰らいついくのだ。野鳥はお行儀よく自分の順番がくるのを金網や地面で待機しているのだ。
ぽーんと白い豆粒をほうりなげるや、野鳥たちがくちばしでナイスキャッチ! お姉さん、またジャンプをする。野鳥たちも1羽ずつ、トライ。おー、下から急旋回してナイス、キャッチ。
ぽーんとやわらかく白豆が風を切って弧をえがくと、一羽の鳥が踊り出て、キャッチ! 鳥はいま飛んでくるのか、いまか、と鋭い眼つきで待ちかまえて準備している。人と野鳥が共生している。というか、遊んでいるのだが、その真剣具合が面白い。
お姉さんの後ろには、60代の母らしき人。母も野鳥の交信を注意深く監視している。野鳥たちは、手から離れる白豆が空(くう)にある間に、キャッチしないと、地面に落ちてしまう。地に落ちたものを拾って食べようとする鳥など一匹もいないのは、それはプライドだろうか。足をとめる、周囲の観衆は驚いて目を細めて空をみあげる。二月の終わりの小春日和だった。
なぜ? こんな遊びを思いつかれたのですか。あなたがそうやって地面から足をはなして飛ぶことで、鳥と会話し、鳥の気持ちと一体になっている、そんなところですか」と問うてはいないが、実践してみたらおもしろいインタビューになったのだと思う。
大阪城梅林は、いまが見頃だった。
白梅の花びらのやわらかさとみずみしさ。幹や木の黒々しく身をよじる妖艶で由緒ある、美しさ。京都の北野天満宮や中山寺の梅林、神戸岡本の梅林と。その年によって思いついたところを訪ねてみる。このところは大阪城梅林が多い。
ここのよさは天守閣を背に梅がめでられることと、なんといっても種類の豊かさだ。マスクをしていたので、鼻から梅独特の香りをかんじられなかったのが無念だった。
ホテルニューオータニの道路沿いに面したラウンジで一服。いちごケーキと、グレープフルーツベリーベリーのジュースで。
今週末に提出する原稿の校正をした。もうすぐ6時。ちらちら針葉樹林の緑が揺れ出し、夕方から夜になる時間だった。
日常の壁をつたって、高い塀を跳び越えて外界へ出ること。マスクはしていても、外で息を潜めてみることは大事。人の多いコロナ渦では時と場所を選ばないといけないけれど。外へ出て、見て歩いて、人を眺めて、はじめていまを客観点にとらえられる。